「焼き栗」調理を安全に楽しもう。 電気オーブン、電子レンジで調理する際の注意点を実験により検証

製品評価技術基盤機構(NITE)のプレスリリース

 独立行政法人 製品評価技術基盤機構(以下、NITE(ナイト))[理事長:長谷川史彦、本所:東京都渋谷区]と、クックパッド株式会社(以下、クックパッド)[代表執行役:岩田 林平、本社:神奈川県横浜市]は、協業プロジェクトにおける実証実験の第2弾として、「電気オーブン、電子レンジでの『皮を剥いていない栗』の加熱調理」について実験を行いました。
 
 
 今回の実証実験では、旬を迎えた栗をテーマに、「電気オーブンや電子レンジを使って焼き栗調理を行う」ことを想定し、栗に入れる切り込みの有無や長さにより、調理中にどのような危険性があるかを検証しました。
 
 その結果、「切り込み無し、または切り込みが不十分だと栗が破裂すること」、また「切り込みを栗の半周程度の長さ以上、渋皮まで達する深さで入れると破裂を防げること」などを確認しました。
そこで、秋の味覚をおいしく楽しんでいただけるよう、実証実験の結果を公表するとともに注意点をお知らせいたします。
 
 NITEとクックパッドは、毎日の料理を安心して楽しんでいただくために、2022年7月5日より協業を開始しました。本プロジェクトでは、料理中に発生しうる事故の未然・再発防止に向け、実証実験の結果に基づいた注意喚起を行っています。実証実験は今後も継続していく計画で、注意を要する結果が得られた際には、両者の公式SNSやクックパッドニュース等を通じて公表してまいります。
 
 

 
 
 実証実験の結果に基づき、皮を剥いていない栗の加熱調理をする上で気をつけるポイントについてご紹介いたします。
 
 

栗を加熱する際のポイント

 電気オーブンや電子レンジでの加熱により栗が破裂すると、やけどなどのおそれがあるうえ、可食部が飛散してしまうため栗を無駄にしてしまいます。また庫内全体に可食部が飛び散るため、清掃の手間がかかり、汚れが付着したまま機器の使用を続けると発火や火災につながる可能性もあります。
 
 以下のポイントを参考に、正しく、安全に調理して、旬の味覚「栗」を楽しみましょう。
 
・栗には半周程度の長さ以上の切り込みを渋皮まで達する深さで入れる
 実証実験では、切リ込みのない栗だけでなく、短い切り込み(鬼皮のみの切り込み、渋皮まで達する切り込み)を入れた栗でも破裂しましたが、“栗の半周程度以上の長さ”の切り込みを“渋皮まで達する深さ”で入れたものは破裂しませんでした。ご家庭で焼き栗調理をより安全に楽しむために、栗の半周程度の長さ以上の切り込みを入れて破裂を防止しましょう。
 
(参考)栗の鬼皮と渋皮について
 

(イラストの出典)農林水産省Webサイト「知って得する「栗」のこと」https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1910/spe2_02.html
 
・扉を開ける際、取り出した後も注意する
 加熱によって栗の内部は高圧になっていると推測されるため、電気オーブン等の扉を開けた瞬間や取り出した後にも破裂する可能性があります。非常に高温になった栗の可食部が飛散してやけどなどの危険性がありますので、調理を終えた直後にも注意が必要です。
 
・電子レンジでの調理も切り込みを入れる
 電子レンジでは栗の内部から急速に加熱されるため、数分で破裂する可能性があります。実証実験では、破裂の勢いで電子レンジの扉が開いてしまうほど強い衝撃が確認されました。電子レンジの取扱説明書にも、殻や膜のある食品の加熱については禁止しているか切れ目を入れるよう記載されています。安全に栗を調理するには、栗の渋皮に達するよう半周以上の切り込みを入れて様子を見ながら少しずつ加熱しましょう。
 
▼YouTube NITE official  せいあんちゃんねる▼
 

 
 
>>今回のプレスリリースはこちら
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2022fy/prs221012.html
 
 

実証実験および結果の詳細

今回の実証実験では、
【実験1】電気オーブン 200℃ 20分
【実験2】電気オーブン 250℃ 20分
【実験3】電気オーブン 200℃ 20分(栗の切り込みの長さを延長)
【実験4】電子レンジ 700w 3分
の4つの実験を行いました。
 
以下に、各実験の結果を示します。
 
 

【実験に使用した栗および機器】

横幅平均33mm、5分茹でて室温に戻したものを使用
電気オーブン 上2本、下2本のヒーターに加え、熱した空気を循環させる対流ファンを有する コンベクションオーブン
電子レンジ 出力は200W、500W、700W、ターンテーブル式

 
 

【実験1】電気オーブン200℃ 20分

切り込みなし、鬼皮のみ切り込み、鬼皮・渋皮切り込みの3パターン (切り込みの長さ 約14mm)
電気オーブンの設定 200℃(ヒーター上下ON、対流ファンON) 予熱5分以上、加熱時間20分
栗の置き方 メッシュワイヤー棚にまんべんなく配置(切り込み面が上)

 
■実験結果
 破裂した個数、割合および時間は以下のようになりました。
 

オーブン(200℃)  試験数 破裂数 割合
切り込みなし                       50個                      12個                     24%
鬼皮切り込み                       90個                      10個                     11%
鬼皮・渋皮切り込み                       50個                        6個                     12%

 
 
 

     図1 左から「切り込みなし」、「鬼皮のみ切り込み」、「鬼皮・渋皮とも切り込み」
 
 

 
・加熱時間9分以降で破裂が生じ、12~15分の破裂が多い傾向でした。深く切り込みを入れた「鬼皮・渋皮切り込み」でも破裂は確認されました。
・栗が破裂する割合は「切り込みなし」のほうが高く(切り込みを入れた栗の約2倍)、破裂までの時間も短い傾向が見られました。
・加熱中は、切り込みの有無、破裂発生の有無に関わらずほとんどの栗で、熱せられた可食部が泡立って噴き出ている様子が見られ、加熱後に機器から取り出すと噴き出した形状のまま焼き固まっていました。
 

【実験2】電気オーブン250℃ 20分

切り込みなしのみ
電気オーブンの設定 250℃(ヒーター上下ON、対流ファンON) 予熱5分以上、加熱時間20分
栗の置き方 メッシュワイヤー棚にまんべんなく配置(切り込み面が上)

 
■実験結果
 破裂した個数、割合は以下のようになりました。

オーブン(250℃) 試験数 破裂数 割合
切り込みなし                  54個                  18個                 33%

・200℃と比べて破裂までの時間は短い傾向が見られ、7分以降で破裂が生じました。
 
 

【実験3】電気オーブン200℃ 20分(栗の切り込みの長さを延長)

■実験概要
 実験1、2の結果から、可食部によって切り込みが塞がれていることが推測されたため、塞がりにくいよう切り込みの長さを約3倍に延長して再度実験を行いました。
 

鬼皮・渋皮切り込み (切り込みの長さ 栗の半周程度=約40mm(横幅約33mmの栗の場合))
電気オーブンの設定 200℃(ヒーター上下ON、対流ファンON) 予熱5分以上、加熱時間20分
栗の置き方 メッシュワイヤー棚にまんべんなく配置(切り込み面が上)

 
■実験結果
 破裂した個数、割合は以下のようになりました。

オーブン(200℃20分) 試験数 破裂数 割合
鬼皮・渋皮切り込み(長さ延長)                        50個                       0個                     0%

・栗の半周程度まで切り込みを入れたものでは、破裂は発生しませんでした。
 
 

【実験4】電子レンジ 700W 3分

■実験の概要

切り込みなし、鬼皮・渋皮切り込み、鬼皮・渋皮切り込み長さ延長の3パターン
電子レンジの設定 700W、3分
栗の置き方 陶器の皿の並べ、皿ごとターンテーブル上に設置

 
■実験結果
 破裂した個数、割合は以下のようになりました。

電子レンジ700w 3分 試験数 破裂数 割合
切り込みなし                   51個         ※(21)個                 ※(41)%
鬼皮・渋皮切り込み                   10個                   3個                           30%
鬼皮・渋皮切り込み(長さ延長)                   10個                   0個                           0%

※( )は参考値(破裂の勢いで電子レンジのドアが開き、加熱を終了したため)
 
・電子レンジの加熱では1分30秒以降に破裂が生じ、電気オーブンと比べて短時間で多くの栗が破裂しました。
・破裂が発生すると、電子レンジのドアを開けるほどの強い勢いでした。
・短い切り込みを入れた栗は破裂しましたが、栗の半周程度まで切り込みを入れた栗では破裂しませんでした。
・電気オーブンで見られたような噴き出した可食部が焼き固まった様子は見られませんでした。
 
 
電子レンジ加熱後の様子
 
 

考察

・電気オーブンでは、加熱中、栗内部で蒸気が発生しており、鬼皮で閉じ込められて内圧が高まったことで破裂していると考えられます。切り込みを入れたものでも、切り込みの長さが短い場合は、可食部により切り込みが塞がり、内圧が高まった可能性が考えられます。
 
・電子レンジでは、栗の内部が加熱され、電気オーブンと比べて内部の温度が急速に高くなり、生じた蒸気によって内圧も急速に高まったことで、より多くの破裂に至ったと考えられます。切り込みを入れたものでも切り込みの長さが短い場合は、電気オーブンと同様に、可食部によって切り込みが塞がり、急激な内圧上昇に対して圧が十分に抜けなかった可能性が考えられます。また実験では、破裂の衝撃でドアが開いた段階で加熱を終了していますが、ドアが開かないように固定した場合には、破裂する栗の割合は更に高くなったと考えられます。
 
・電気オーブン、電子レンジいずれの場合も、加熱によって内圧が高まった状態の栗は、調理終了後にも破裂する可能性があると考えられます。
 
・今回の実験では、栗の半周程度の長さ以上の切り込みを渋皮まで達する深さで入れた場合は破裂しなかったことから、十分な長さの切り込みを入れることで破裂を防げると考えられます。
 
 

関連情報

>>令和4年7月5日配信の「NITEとクックパッド協業開始」のプレスリリースはこちら
 https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2022fy/prs220705.html
 
>>令和4年9月5日配信の「NITEとクックパッドが協業、 揚げ物調理における「蓋の使用」の危険性検証 (実証実験 第1弾)」のプレスリリースはこちら
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2022fy/prs220901.html
 
 

今後の展開について

■実証実験
・第3回以降 実施内容および時期検討中
 実証実験により危険性が確認されたケースは、以下のNITEおよびクックパッドが運営する媒体により、周知を行います。
 
■発信媒体
【NITE】
・NITE 公式Twitter
 (@NITE_JP) https://twitter.com/NITE_JP   #料理の安心 #キケンを知らせナイト 等のタグで発信します
・YouTube NITE official https://www.youtube.com/c/nite_JAPAN
 
【クックパッド】
・クックパッド 公式Twitter
 (@cookpad_jp)https://twitter.com/cookpad_jp
   #料理の安心 #キケンを知らせナイト 等のタグで発信します
 
・クックパッド「料理の安心」
「料理の安心」は、毎日の料理を楽しみにするため、「安心・安全」にフォーカスした取り組みです。
みなさまの生活の中から生まれた料理の安心・安全にまつわる疑問に関して、行政機関や専門家等から情報収集し、得た情報を下記コンテンツやレシピに設置した「料理の安心リンク」などを通じてみなさまにお届けしています。料理をする全てのみなさまの毎日の料理をさらに楽しみにするため、安心づくりのお手伝いをしていきます。
 
・「料理の安心」コンテンツ https://cookpad.com/cooking_supports
  >「料理の安心」コンテンツ 栗の加熱調理の注意点 https://cookpad.com/cooking_supports/21032
 
・クックパッドニュース https://news.cookpad.com/articles/series/1242 
  >クックパッドニュース 栗の加熱調理の注意点 https://news.cookpad.com/articles/47956
 
 

独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センターの概要

 NITE 製品安全センターには、消費生活用製品安全法などの法律に基づき、一般消費者が購入する消費生活用製品(家庭用電気製品やガス・石油機器、身の回り品など)を対象に毎年1千件以上の事故情報が寄せられます。製品安全センターでは、収集した事故情報を公平かつ中立な立場で調査・分析して原因究明やリスク評価を行っています。
 
 また、原因究明調査の結果にもとづき、YouTubeから事故の再現動画を配信するほか、Twitter等からタイムリーに情報を国民の皆様に届けることで、製品による事故の再発・未然防止を目指しています。
 
製品の正しい使い方を伝えたい!だから、私たちはYouTuberになった。|ナイト(製品評価技術基盤機構) (note.jp)
 
 

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