きのこを継続的に食べることで免疫機能が向上する腸内のメカニズムを、臨床試験により更に深く解明

ホクト株式会社のプレスリリース

ホクト株式会社(本社:長野県長野市、代表取締役社長 水野雅義、以下「当社」)は、株式会社メタジェン(本社:山形県鶴岡市、代表取締役社長CEO 福田真嗣)と共同研究を行い、きのこの継続摂取が腸内の短鎖脂肪酸の増加と免疫機能の増強に関わることを見出しました。その成果が科学雑誌「Frontiers in Nutrition」に2023年1月9日付で掲載されました。

  • 研究の背景

 社会全体が感染症のリスクと隣り合わせで生活する日々がここ数年続いている中、多くの消費者が免疫機能の向上を期待して食品を選択しています。腸には免疫機能に関わる細胞の約70%が存在すると見積もられていることから、腸内環境と免疫機能は密接に関係していることが知られています。そのため、腸内環境を良好に保つことが免疫機能の向上にも役立つと考えられます。また、腸内細菌が作り出す代表的な代謝物質である短鎖脂肪酸は、病原菌やウイルスなどからの感染予防に重要な役割を担うとされている免疫グロブリンA(IgA)(※1)の産生制御に関わることが知られています。

きのこはβグルカンをはじめとする食物繊維が豊富な食品で、これまでにも腸内環境を改善することによる抗肥満効果などの健康効果が報告されてきました。そこで、きのこ摂取が腸内環境および感染予防に及ぼす影響を臨床試験によって評価するために、共同研究を実施しました。

※1 免疫グロブリンA(IgA)
全身の粘膜で作用して細菌やウイルスの侵入を防ぐ抗体。抗原特異性が低く様々な病原体に結合することから、感染防御に役立つことが知られています。
 

  • 研究成果の概要

 本共同研究では、成人80名を対象に、4週間に渡って当社が生産するきのこ3種類(エリンギ・マイタケ・ブナシメジ)を等量混ぜ合わせたきのこ粉末錠剤(以下「きのこ」とする)またはプラセボ錠剤を摂取してもらい、株式会社メタジェン独自の腸内環境評価手法「メタボロゲノミクス®︎」を用いて腸内細菌叢および腸内代謝物質の統合的な解析を実施しました。さらに、被験者の便中IgAを測定し、腸内環境データと合わせて統合解析を行いました。 (メタボロゲノミクス®:https://metagen.co.jp/technology/)

主な結果は大きく以下の3つです。

 酪酸やプロピオン酸は短鎖脂肪酸の一種であり、腸内細菌により産生されます。短鎖脂肪酸には抗炎症作用や肥満抑制効果をはじめ様々な健康効果が報告されており、腸内環境のみならず全身の健康維持に寄与していると考えられます。
 また、短鎖脂肪酸は、免疫細胞に働きかけ病原体やウイルスの侵入に対する防御作用を示すIgAの産生を増強することも報告されており、本研究でも、短鎖脂肪酸が増加したことでIgAの産生が促された可能性があります。
 他にも、きのこ摂取によって便中の酪酸およびプロピオン酸が増えたことと、きのこ摂取前にこれらの短鎖脂肪酸が多い人において便中IgAの増加量が大きかったことから、きのこを長期的に摂取することでより多くの人で便中のIgAが増加する可能性が考えられます。

 


きのこは私も大好きな食材の1つですが、今回の共同研究できのこの継続摂取がもたらす人の腸内環境への影響の一端を明らかにすることができました。
特に感染症予防に重要な便中IgA量が増加する傾向が認められ、あわせて腸内細菌からの短鎖脂肪酸産生量も増加したことから、きのこを継続摂取することで腸内環境改善や感染症予防効果が期待されます。厚生労働省の調べによると男女共に日本人の食物繊維摂取量は不足していることから、きのこを食材として積極的に取り入れて良い腸内環境を作りましょう!

 

 

【福田真嗣氏 Profile】
株式会社メタジェン代表取締役社長CEO・CGDO/慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授。2006年明治大学大学院農学研究科博士課程を修了後、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て2012年より慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授、2019年より同特任教授。2015年、第1回バイオサイエンスグランプリにて、ビジネスプラン「便から生み出す健康社会」で最優秀賞を受賞し、株式会社メタジェンを設立。著書に「もっとよくわかる!腸内細菌叢“もう1つの臓器”を知り、健康・疾患を制御する!」(羊土社)。

今後も当社および株式会社メタジェンは、食材摂取による「健康効果」を追求し、食に対する科学的根拠のある付加価値により、消費者一人ひとりが自分自身の健康維持や疾患予防に役立てられる社会の実現に貢献していきます。
 

  • 文献情報
[論文タイトル]:
Dietary supplement of mushrooms promotes SCFA production and moderately associates with IgA production: a pilot clinical study
(キノコの日常的な摂取が短鎖脂肪酸の産生を促し、IgA産生に適度に関連する:パイロット臨床試験) [著者]:
Yuichiro Nishimoto[1], Jyunya Kawai[2], Koichiro Mori[2], Tenagy Hartanto[1], Kaori Komatsu[1], Toru Kudo[1], Shinji Fukuda[1, 3-6] [所属]:
(1) 株式会社メタジェン
(2) ホクト株式会社
(3) 慶應義塾大学 先端生命科学研究所
(4) 神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)
(5) 筑波大学 トランスボーダー医学研究センター
(6) 順天堂大学大学院 医学研究科 [掲載誌]:Frontiers in Nutrition
[掲載日]:2023年1月9日
[DOI]:10.3389/fnut.2022.1078060
[リンク先]:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnut.2022.1078060/full
 
  • 会社情報

<ホクト株式会社>
代表・・・・・・・・代表取締役社長  水野雅義
所在地・・・・・・長野県長野市南堀138-1
【公式サイトURL】https://www.hokto-kinoko.co.jp/

<株式会社メタジェン>
代表・・・・・・・・代表取締役社長CEO 福田真嗣
所在地・・・・・・山形県鶴岡市覚岸寺字水上246番地2 
【公式サイトURL】https://metagen.co.jp/

 

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