恵方巻にも「値上げの波」 平均価格約900円、1割値上げに のりや卵の価格高騰影響 海鮮恵方巻は値上げ顕著

TDBのプレスリリース

帝国データバンクは、2023年節分シーズンの「恵方巻」価格について、調査分析を行った。

<調査結果(要旨)>
  1. のり、たまご、サーモンも…恵方巻きに「値上げの波」 低価格品と高級志向品で傾向に違いも
  2. 食品ロス削減対策で広がる恵方巻の「予約制」、コスト削減メリットで定着するか注目

 

のり、たまご、サーモンも…恵方巻きに「値上げの波」 低価格品と高級志向品で傾向に違いも
クリスマス、おせち料理に続き、季節イベントとして節分に欠かせなくなった「恵方巻」にも値上げの波が押し寄せている。全国の大手コンビニエンスストアや外食チェーン、スーパー、百貨店、著名な日本料理店など計104社で販売される2023年節分シーズンの恵方巻価格を調査した結果、一般的な五目・七目の恵方巻(太巻・1本当たり)における平均価格は898円だった。比較可能な前年の825円に比べ、約8.8%・73円アップした。豪華で高級志向な品が多い海鮮恵方巻では平均1633円となり、前年(1475円)から約10.7%・158円の上昇となった。

恵方巻きもおせち料理と同様に、食材価格の上昇による影響を受けている。太巻きに用いられる玉子焼きは鶏卵価格が大幅に上昇しているほか、不作による供給減で品薄感が出始めた干しのり、国産・中国産ともに供給減が続く味付けかんぴょう、穴子など、主な原材料で価格の上昇がみられる。海鮮恵方巻でも、使用頻度の高い国産まぐろの価格が前年から40%超の上昇となっているほか、子供に人気の高いサーモンなど輸入さけ・ます類の価格も大幅な値上がりが続いている。こうした情勢を背景に、恵方巻でも価格転嫁に踏み切った場面が多いとみられる。

ただ、値上げ幅では低価格な恵方巻と、高価格帯の海鮮恵方巻とで傾向が分かれた。前年からの価格上昇幅をみると、恵方巻は「100円未満」が26社で最も多く、「据え置き」(22社)と合わせて全体の半数超を占めた。特に、季節商材として集客材料となりやすい食品スーパーでの恵方巻価格は10円単位での値上げに抑制する傾向がみられ、ファミリー層を中心に集客の目玉としたい戦略が聞かれた。

一方で、海鮮恵方巻は「150円以上」の値上げとなった企業が31社で最も多く、次いで「据え置き」(25社)、「150円未満」(12社)と続いた。100円以上の値上げを行った割合は、海鮮恵方巻(58%)が恵方巻(31%)に比べて20ポイント以上高く、海鮮素材をふんだんに使用した高価格帯の商品ほど値上げ幅が大きい傾向がみられた。季節商材やイベントなどでの出費を惜しまない「メリハリ消費」の台頭も背景に、「高額商品が比較的好調」といったケースがみられる。また、原材料高で値上げする中でも、使用する食材のランクアップなどを同時に行うことで消費者へのお得感を訴求するスーパーもあった。

食品ロス削減対策で広がる恵方巻の「予約制」、コスト削減メリットで定着するか注目
クリスマスケーキ、おせちに続き、恵方巻にも「値上げの波」が押し寄せ、1本当たり平均価格が前年から70~160円前後アップするなど値上げ傾向が鮮明となった。ただ、現時点では集客の目玉として、低価格の恵方巻では価格を据え置くなど戦略的な動きがみられるほか、値上げする場合も具材をランクアップするなど、値上げ感を和らげるといった工夫がみられた。足元では2023年正月シーズンのおせちに続き、自宅での贅沢「イエナカ需要」として高額商品については売れ行きが堅調といった動きもあり、値上げによる購買への影響はおせち同様、限定的となりそうだ。

一方で、調査対象となった企業の多くが店頭やWEBによる恵方巻の「予約制」を導入していた。数量限定の予約による受注生産では大幅な売り上げ増加が見込めない反面、需要に見合った販売により「廃棄コストの低減につながる」メリットもある。食品の価格高騰が続くなか、食材コストの抑制策として今後の季節商材に予約販売制が定着していくか注目される。

 

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