株式会社船橋屋のプレスリリース
その結果、くず餅製造工程で単離同定された乳酸菌20種類のうち、Lactobacillus属の1種であるF1805株(試験内識別名:C-7株)は免疫系サイトカイン(IL-12、IL-6)の産生量、免疫担当細胞(THP-1細胞)への取り込み率などから高い免疫賦活効果が示唆されました。
また本研究結果は医学・医薬専門サイト「診療と新薬web」に掲載されました。
https://www.shinryo-to-shinyaku.com/sin_0060_05.html?utm_source=pressrelease&utm_medium=20230626
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研究背景
近年、発酵食品を介して摂取した乳酸菌が生体に与える様々な健康効果が報告されています。
船橋屋でも「くず餅を食べるとおなかの調子が良くなる」というお客様からのお声をもとに研究を開始。くず餅の原料である小麦澱粉の発酵槽から乳酸菌を分離することに成功し、ラクトバチルス属パラカゼイ種であることが判明しました。発見したものを「くず餅乳酸菌®」と名づけて2016年に商標登録を行い、現在では乳酸菌を使用したスイーツや化粧水などの商品展開を行っています。
そして今回、218年の伝統を継承しながら更に人々の健康に寄与していきたいという想いから、くず餅のメカニズムの解明や乳酸菌の可能性を拡大すべく、本研究に着手いたしました。
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研究概要と結果
【免疫調整機能の高い乳酸菌の発見】
くず餅の原料である小麦澱粉から分離同定した20種類の乳酸菌株の中で最も免疫調整機能の高い乳酸菌をスクリーニングするため、IL-12、IL-10、IL-6の産生量指標に各乳酸菌の免疫調整機能について解析しました。その結果、乳酸菌株の違いにより免疫調整作用が大きく異なることが判明し、F1805株がIL-12、IL-6の高い産生量を示すことが明らかになりました。そのため、免疫調整機能の高い乳酸菌としてF1805株が見つかりました。(図1.図2)
図 1. 各乳酸菌のIL-12 産生量相対値(昇順) (n=3)
JCM1132株※1のIL-12産生量 (pg/mL) を100とした場合の相対値
図 2. 乳酸菌 10 菌株のIL-6 産生量 (pg/mL) 比較 (n=3)
※1 JCM1132株は高いIL-12活性を持つ菌株として知られている。
【THP-1細胞への取り込み率の評価】
また免疫調整機能の高い乳酸菌は、マクロファージ等の免疫担当細胞内に取り込まれることで刺激されるメカニズムがよく知られています。そこでIL-12、IL-6産生量の高かったF1805株を含めた複数の乳酸菌株において、免疫担当細胞内への取り込み率について差があるかフローサイトメトリー法によって評価しました。その結果、F1805株の約3割の菌体がTHP-1細胞内に取り込まれており、顕著に取り込み率が高いことが明らかになりました。またIL-12産生量とTHP-1細胞への取り込み率の相関解析を実施したところ、両者は非常に高い正の相関関係にあり、THP-1細胞内に取り込まれやすい乳酸菌はIL-12産生量が高くなる可能性が強く示唆されました。
図3.THP-1細胞内に取り込まれた乳酸菌の蛍光画像
図4.フローサイトメトリー法による乳酸菌取り込み率
図5.乳酸菌のIL-12産生量及び免疫担当細胞への取り込み率の相関解析
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今後について
本研究により、くず餅由来乳酸菌F1805株は免疫系サイトカイン(IL-12、IL-6)の産生量、免疫担当細胞(THP-1細胞)への取り込み率などから高い免疫賦活効果が示唆されました。Lactobacillus属乳酸菌は腸内細菌叢でも善玉菌として作用することから、プロバイオティクスとして腸内細菌叢のバランスを改善する効果が見込まれますが、免疫賦活効果が見込まれる乳酸菌は摂取することでバイオティクスとしての働きも期待できます。またIL-12、IL-6産生を促進することでTh1細胞を活性化させてTh2細胞を抑制し、Th1/Th2のバランスを改善することでアレルギーやアトピーの予防効果が期待できます。
船橋屋では今回発見したF1805株は、2023年中に粉末化や商品化を進めていく予定です。 また、pDC活性化に重要な「CD86」「HLA-DR」などの改善結果からF1805 株が持ってる免疫力の維持機能の研究を目指し、くず餅由来乳酸菌の新たな可能性の解明に向けて更なる研究を推進してまいります。
そしてこの先も、くず餅の持つ菌の力で人々の健康に寄り添い、江戸時代から受け継がれてきたくず餅を次世代に繋げてまいります。
本論文は以下URLより全文をご確認いただけます。