日本生活習慣病予防協会のプレスリリース
一般社団法人日本生活習慣病予防協会は、コロナ禍を経て、生活環境の変化により生活習慣病リスクがどの程度変化したのかを探るため、消化器内科医331名を対象に調査を実施しました。
その結果、現代の日本人の多くが罹患していると思われる新・国民病のTOP3は、「機能性ディスペプシア」、「MASLD」、「うつ病」であることが判明いたしました。
バブル崩壊後の“失われた30年”、日本はストレス社会だと言われ続けてきましたが、ここ数年はコロナパンデミックや緊迫した国際情勢、それらに伴う経済状況の悪化などによって、人々のストレスがさらに一段階強くなったようです。このようなストレスは、日本人の疾病構造の変化も引き起こしている可能性があります。
今回、「新・国民病」に選ばれた「機能性ディスペプシア(FD)」は、原因がはっきりしない痛み・不快感のためにQOLが低下しやすいばかりでなく、最近では睡眠障害をきたしたり、労働生産性が低下してしまうことがわかっています。FDは、ストレスの影響を受けやすい病気だと考えられています。
近年の急速な社会環境の変化は、胃の不調に悩む人の増加などの変化をもたらしている可能性があります。また、本調査では約8割の医師が、今後も胃の不調は増加すると回答しました。胃の不調は、令和の日本人にとって深刻な問題といえるかもしれません。
331人の医師の回答から明らかになった主要ポイントを紹介します。
<調査結果のポイント>
● 今後、日本人の新たな国民病になる疾患TOP3は、1位「機能性ディスペプシア」、2位「MASLD」、
3位「うつ病」
● 機能性ディスペプシアの患者さんが増えていると感じる医師は、86.7%
● 現代人が胃の負担を感じる生活になっていると思う医師は、92.7%
● 医師が胃の負担の原因と思うものTOP3は、1位「社会的ストレス(仕事や家計など)」、2位「人間関係ストレス(コミュニケーショントラブルなど)」、3位「食生活の乱れ」
●医師が現代人のストレスの原因と思うものTOP3は、1位「職場での人間関係」、2位「金銭面での不安」、3位「将来に対する漠然とした不安」
● 胃の不調を感じる人が今後増えると回答した医師は、76.1%
●「胃の不調」のセルフケアで効果的な対処法について、「乳酸菌をとる」は、「食事・食材・栄養」対処法カテゴリーで2位(16.0%)。漢方薬よりも高い割合
【調査概要】
調査時期:2023年11月6日(月)~2023年11月9日(木)
調査対象者:全国の30代から60代の消化器内科医331名
調査委託先:マクロミル
調査手法:インターネット調査
【調査結果】
1. 今後、日本人の新たな国民病になる疾患トップ3は、1位 「機能性ディスペプシア(FD)」、2位「MASLD」、3位「うつ病」
今後、日本人の新たな国民病になる可能性のある疾患を、複数選択可で挙げてもらったところ(図1)、1位は「機能性ディスペプシア(FD)」で24.5%の医師が選択しました。2位は「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患※)」で23.9%が選択。3位は「うつ病」で22.4%でした。
2位のMASLDが多く選択された背景には、メタボリックシンドロームを中心とする代謝性疾患の増加があり、かつ、最近NAFLDから改称されたことが医学会で大きなニュースとして扱われたばかりであることも、関係しているかもしれません。3位のうつ病が挙げられたことに関しては、まさにストレス社会が映し出された結果と言えそうです。
それら2疾患を抑えて、機能性ディスペプシア(FD)が1位となったことから、医師の間でのFDへの関心の高さがうかがえます。
※MASLD:metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease
2. 機能性ディスペプシア(FD)の患者さんが増えていると感じる医師は、86.7%
次に、「機能性ディスペプシア(FD)を抱える患者さんが増えていると感じるか」との質問を投げかけたところ、「とても増えていると思う」が14.5%、「増えていると思う」が43.5%、「やや増えていると思う」が28.7%であり、合計86.7%と、大半の医師が機能性ディスペプシア(FD)患者さんの増加を実感しているようでした(図2)。
3. 現代人が胃の負担を感じる生活になっていると思う医師は、92.7%
機能性ディスペプシア(FD)の発症や悪化には、ストレスの負荷も含めた生活環境の変化の影響も少なくないと考えられています。そこで、「現代人は胃に負担がかかる生活になっていると思うか」という質問をしてみました。すると、92.7%と9割以上の医師が、「そう思う」という肯定的な回答を選択しました(図3)。
4. 医師が胃の負担の原因と思うもののトップ3は、1位「社会的ストレス(仕事や家計など)」、2位「人間関係ストレス(コミュニケーショントラブルなど)」、3位「食生活の乱れ」
では、より具体的に、生活の中のどのような事がらが胃の負担となっていると考えられるかを、複数選択可で挙げてもらいました。
最も多く選択されたのは、「社会的スト レス(仕事や家計など)」で72.8%の医師が選択。2位は「人間関係ストレス(コミュニケーショントラブルなど)」で71.3%、3位は「食生活の乱れ」68.6%という結果に。ストレスによる胃の負担は、食生活の乱れ以上に大きいと考える医師が多く存在すると言えそうです(図4)。
5. 医師が現代人のストレスの原因と思うもののトップ3は、1位「職場での人間関係」、2位「金銭面での不安」、3位「将来に対する漠然とした不安」
そこで、どのような種類のストレスが現代人を悩ましていると思うかを、複数選択可で質問。すると、1位は「職場での人間関係」で69.8%、2位は「金銭面での不安」で60.7%、3位は「将来に対する漠然とした不安」59.5%。2位や3位に挙げられた回答選択肢に、近年の混沌とした社会・経済環境が現れているとみることもできそうです(図5)。
6. 胃の不調を感じる人が今後増えると回答した医師は、76.1%
このような社会・経済的ストレスの高まりは、胃の不調に悩 む方をさらに増加させる可能性があります。今回のアンケートでも、「『胃の不調』を感じる人は今後増えると思うか」との質問に対して、10.3%が「とても増えると思う」を選択し、37.8%は「増えると思う」、28.1%は「やや増えると思う」を選択。約8割の医師は今後、胃の不調を訴える患者さんの増加を予測しているようです(図6)。
7. 「胃の不調」のセルフケアで効果的な対処法について、「乳酸菌をとる」は、自己対処法の「食事・食材・栄養」。カテゴリーで2位(16.0%)。漢方薬よりも高い割合
機能性ディスペプシア(FD)のような慢性の疾患では、患者さんのセルフケアも治療の重要な一部を占めます。そこで最後に、「胃の不調」のセルフケアについて医師に質問してみました。
複数回答可で挙げてもらった結果は図7に示すように、「乳酸菌をとる」が「食事・食材・栄養」による対処法のカテゴリーで2位(16.0%)に挙げられました。一般的には腸に効くというイメージのある乳酸菌ですが、胃にも良いと考えている医師が少なくないようです。なお、原因を特定できない慢性疾患や、長引く自覚症状のためにQOLが低下している状態に対しては漢方薬が用いられることも多く、この質問でも15.4%の医師が胃の不調のセルフケアとして選択し、「乳酸菌をとる」に次いで多いという結果でした。
■コロナ禍を経たストレス社会における日本人の新・国民病として「機能性ディスペプシア」が浮上。
生活習慣を見直しセルフケアを行うのも有効
今回、医師331名を対象に行ったアンケート調査から、コロナ禍を経た現代社会における新・国民病として「機能性ディスペプシア」が多くの医師の注目を集め、増加傾向にあると考えられていることがわかりました。
現代社会では、「社会的ストレス(仕事や家計など)」「人間関係ストレス(コミュニケーショントラブルなど)」「食生活の乱れ」などにより胃の負担が増加しており、ストレスの内容としてはとくに「職場での人間関係」「金銭面での不安」「将来に対する漠然とした不安」が挙げられていました。このような社会・経済的なストレスの高まりにより「胃の不調」を感じる人が今後増加すると回答した医師が全体の約3/4いる一方で、「胃の不調」に対してはセルフケアによる自己対処も有効であると考える医師が多数いました。
自己対処法として有効と考えられているのは、「食生活」カテゴリーでは「規則正しく食べる」「よく噛んで、ゆっくり食べる」「食事の量を抑える」が、また、「行動」カテゴリーでは「ストレスを発散する」「睡眠を十分に取る」「運動や体操をする」が多くの医師から支持されていました。「食事・食材・栄養」カテゴリーでは「胃にやさしい食事・食材をとる」「乳酸菌をとる」「温かい飲み物を飲む」との回答が多くみられ、具体的な食材としては「乳酸菌をとる」がもっとも多く、「ビタミン・ミネラルをとる」「食物繊維をとる」がそれに続く結果でした。一般的には腸に効くというイメージのある乳酸菌が、胃にも良いと考えている医師が少なくないことが示されました。
外から来るストレスを自分でコントロールすることはできませんが、自分に合った有効な自己対処法を取り入れることで、ストレス社会に負けないための自己防御はある程度できると考えられますのでぜひチャレンジしてください。
中田 浩二 (川村病院/東京慈恵会医科大学 客員教授)
■胃の不調の予防の基本は健康的な生活習慣
日本生活習慣病予防協会は、コロナ禍が始まって以降、生活環境の変化により人々の体調変化や生活習慣がどのように変化しているかを調査しています。胃の不調である「機能性ディスペプシア」は、ストレス過多の現代社会で増加が指摘されている睡眠障害などと同様に、多くの人が悩みを抱えている症状です。
糖尿病や高血圧、脂質異常症のような自覚症状のないまま進行してしまうために、検査が欠かせない疾患とは反対に、自覚症状はあるのに検査では異常が見つからないという特徴があります。ただし、どちらも生活習慣やストレスが病状に少なからず影響を及ぼします。
日本生活習慣病予防協会は、健康的な生活習慣による生活習慣病予防を目指し、健康スローガンとして『一無、二少、三多』(一無:禁煙・無煙、二少〔少食:食事は腹八分目に、少酒:お酒はほどほどに〕、三多〔多動:よく体を動かす、多休:しっかり休養、多接:多くの人・こと・ものに接する〕)を提唱しています。
今回とり上げた胃の不調の予防としての効果的なセルフケアも、一無、二少、三多による健康的な生活習慣にほかなりません。新型コロナ、国際紛争、物価上昇など、人々のストレスがますます増大しつつある今の日本においては、とくに、「三多」が重要になってくると言えそうです。
宮 崎 滋 (一般社団法人日本生活習慣病予防協会 理事長)
■一般社団法人日本生活習慣病予防協会とは
日本生活習慣病予防協会は、生活習慣病の一次予防を中心に、その成因、診断、治療、リハビリテーションに関する知識の普及啓発、生活習慣病に関する調査研究を行うことを目的に2000年に設立されました。
健康標語『一無、二少、三多(いちむにしょうさんた)』の健康習慣を提言し、1月23日を『一無、二少、三多の日』として記念日登録し、2011年より、毎年2月を「全国生活習慣病予防月間」として、『一無、二少、三多』の普及を図っています。
▶ 一般社団法人日本生活習慣病予防協会
https://www.seikatsusyukanbyo.com/
その結果、現代の日本人の多くが罹患していると思われる新・国民病のTOP3は、「機能性ディスペプシア」、「MASLD」、「うつ病」であることが判明いたしました。
バブル崩壊後の“失われた30年”、日本はストレス社会だと言われ続けてきましたが、ここ数年はコロナパンデミックや緊迫した国際情勢、それらに伴う経済状況の悪化などによって、人々のストレスがさらに一段階強くなったようです。このようなストレスは、日本人の疾病構造の変化も引き起こしている可能性があります。
今回、「新・国民病」に選ばれた「機能性ディスペプシア(FD)」は、原因がはっきりしない痛み・不快感のためにQOLが低下しやすいばかりでなく、最近では睡眠障害をきたしたり、労働生産性が低下してしまうことがわかっています。FDは、ストレスの影響を受けやすい病気だと考えられています。
近年の急速な社会環境の変化は、胃の不調に悩む人の増加などの変化をもたらしている可能性があります。また、本調査では約8割の医師が、今後も胃の不調は増加すると回答しました。胃の不調は、令和の日本人にとって深刻な問題といえるかもしれません。
331人の医師の回答から明らかになった主要ポイントを紹介します。
<調査結果のポイント>
● 今後、日本人の新たな国民病になる疾患TOP3は、1位「機能性ディスペプシア」、2位「MASLD」、
3位「うつ病」
● 機能性ディスペプシアの患者さんが増えていると感じる医師は、86.7%
● 現代人が胃の負担を感じる生活になっていると思う医師は、92.7%
● 医師が胃の負担の原因と思うものTOP3は、1位「社会的ストレス(仕事や家計など)」、2位「人間関係ストレス(コミュニケーショントラブルなど)」、3位「食生活の乱れ」
●医師が現代人のストレスの原因と思うものTOP3は、1位「職場での人間関係」、2位「金銭面での不安」、3位「将来に対する漠然とした不安」
● 胃の不調を感じる人が今後増えると回答した医師は、76.1%
●「胃の不調」のセルフケアで効果的な対処法について、「乳酸菌をとる」は、「食事・食材・栄養」対処法カテゴリーで2位(16.0%)。漢方薬よりも高い割合
【調査概要】
調査時期:2023年11月6日(月)~2023年11月9日(木)
調査対象者:全国の30代から60代の消化器内科医331名
調査委託先:マクロミル
調査手法:インターネット調査
【調査結果】
1. 今後、日本人の新たな国民病になる疾患トップ3は、1位 「機能性ディスペプシア(FD)」、2位「MASLD」、3位「うつ病」
今後、日本人の新たな国民病になる可能性のある疾患を、複数選択可で挙げてもらったところ(図1)、1位は「機能性ディスペプシア(FD)」で24.5%の医師が選択しました。2位は「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患※)」で23.9%が選択。3位は「うつ病」で22.4%でした。
2位のMASLDが多く選択された背景には、メタボリックシンドロームを中心とする代謝性疾患の増加があり、かつ、最近NAFLDから改称されたことが医学会で大きなニュースとして扱われたばかりであることも、関係しているかもしれません。3位のうつ病が挙げられたことに関しては、まさにストレス社会が映し出された結果と言えそうです。
それら2疾患を抑えて、機能性ディスペプシア(FD)が1位となったことから、医師の間でのFDへの関心の高さがうかがえます。
※MASLD:metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease
2. 機能性ディスペプシア(FD)の患者さんが増えていると感じる医師は、86.7%
次に、「機能性ディスペプシア(FD)を抱える患者さんが増えていると感じるか」との質問を投げかけたところ、「とても増えていると思う」が14.5%、「増えていると思う」が43.5%、「やや増えていると思う」が28.7%であり、合計86.7%と、大半の医師が機能性ディスペプシア(FD)患者さんの増加を実感しているようでした(図2)。
3. 現代人が胃の負担を感じる生活になっていると思う医師は、92.7%
機能性ディスペプシア(FD)の発症や悪化には、ストレスの負荷も含めた生活環境の変化の影響も少なくないと考えられています。そこで、「現代人は胃に負担がかかる生活になっていると思うか」という質問をしてみました。すると、92.7%と9割以上の医師が、「そう思う」という肯定的な回答を選択しました(図3)。
4. 医師が胃の負担の原因と思うもののトップ3は、1位「社会的ストレス(仕事や家計など)」、2位「人間関係ストレス(コミュニケーショントラブルなど)」、3位「食生活の乱れ」
では、より具体的に、生活の中のどのような事がらが胃の負担となっていると考えられるかを、複数選択可で挙げてもらいました。
最も多く選択されたのは、「社会的スト レス(仕事や家計など)」で72.8%の医師が選択。2位は「人間関係ストレス(コミュニケーショントラブルなど)」で71.3%、3位は「食生活の乱れ」68.6%という結果に。ストレスによる胃の負担は、食生活の乱れ以上に大きいと考える医師が多く存在すると言えそうです(図4)。
5. 医師が現代人のストレスの原因と思うもののトップ3は、1位「職場での人間関係」、2位「金銭面での不安」、3位「将来に対する漠然とした不安」
そこで、どのような種類のストレスが現代人を悩ましていると思うかを、複数選択可で質問。すると、1位は「職場での人間関係」で69.8%、2位は「金銭面での不安」で60.7%、3位は「将来に対する漠然とした不安」59.5%。2位や3位に挙げられた回答選択肢に、近年の混沌とした社会・経済環境が現れているとみることもできそうです(図5)。
6. 胃の不調を感じる人が今後増えると回答した医師は、76.1%
このような社会・経済的ストレスの高まりは、胃の不調に悩 む方をさらに増加させる可能性があります。今回のアンケートでも、「『胃の不調』を感じる人は今後増えると思うか」との質問に対して、10.3%が「とても増えると思う」を選択し、37.8%は「増えると思う」、28.1%は「やや増えると思う」を選択。約8割の医師は今後、胃の不調を訴える患者さんの増加を予測しているようです(図6)。
7. 「胃の不調」のセルフケアで効果的な対処法について、「乳酸菌をとる」は、自己対処法の「食事・食材・栄養」。カテゴリーで2位(16.0%)。漢方薬よりも高い割合
機能性ディスペプシア(FD)のような慢性の疾患では、患者さんのセルフケアも治療の重要な一部を占めます。そこで最後に、「胃の不調」のセルフケアについて医師に質問してみました。
複数回答可で挙げてもらった結果は図7に示すように、「乳酸菌をとる」が「食事・食材・栄養」による対処法のカテゴリーで2位(16.0%)に挙げられました。一般的には腸に効くというイメージのある乳酸菌ですが、胃にも良いと考えている医師が少なくないようです。なお、原因を特定できない慢性疾患や、長引く自覚症状のためにQOLが低下している状態に対しては漢方薬が用いられることも多く、この質問でも15.4%の医師が胃の不調のセルフケアとして選択し、「乳酸菌をとる」に次いで多いという結果でした。
■コロナ禍を経たストレス社会における日本人の新・国民病として「機能性ディスペプシア」が浮上。
生活習慣を見直しセルフケアを行うのも有効
今回、医師331名を対象に行ったアンケート調査から、コロナ禍を経た現代社会における新・国民病として「機能性ディスペプシア」が多くの医師の注目を集め、増加傾向にあると考えられていることがわかりました。
現代社会では、「社会的ストレス(仕事や家計など)」「人間関係ストレス(コミュニケーショントラブルなど)」「食生活の乱れ」などにより胃の負担が増加しており、ストレスの内容としてはとくに「職場での人間関係」「金銭面での不安」「将来に対する漠然とした不安」が挙げられていました。このような社会・経済的なストレスの高まりにより「胃の不調」を感じる人が今後増加すると回答した医師が全体の約3/4いる一方で、「胃の不調」に対してはセルフケアによる自己対処も有効であると考える医師が多数いました。
自己対処法として有効と考えられているのは、「食生活」カテゴリーでは「規則正しく食べる」「よく噛んで、ゆっくり食べる」「食事の量を抑える」が、また、「行動」カテゴリーでは「ストレスを発散する」「睡眠を十分に取る」「運動や体操をする」が多くの医師から支持されていました。「食事・食材・栄養」カテゴリーでは「胃にやさしい食事・食材をとる」「乳酸菌をとる」「温かい飲み物を飲む」との回答が多くみられ、具体的な食材としては「乳酸菌をとる」がもっとも多く、「ビタミン・ミネラルをとる」「食物繊維をとる」がそれに続く結果でした。一般的には腸に効くというイメージのある乳酸菌が、胃にも良いと考えている医師が少なくないことが示されました。
外から来るストレスを自分でコントロールすることはできませんが、自分に合った有効な自己対処法を取り入れることで、ストレス社会に負けないための自己防御はある程度できると考えられますのでぜひチャレンジしてください。
中田 浩二 (川村病院/東京慈恵会医科大学 客員教授)
■胃の不調の予防の基本は健康的な生活習慣
日本生活習慣病予防協会は、コロナ禍が始まって以降、生活環境の変化により人々の体調変化や生活習慣がどのように変化しているかを調査しています。胃の不調である「機能性ディスペプシア」は、ストレス過多の現代社会で増加が指摘されている睡眠障害などと同様に、多くの人が悩みを抱えている症状です。
糖尿病や高血圧、脂質異常症のような自覚症状のないまま進行してしまうために、検査が欠かせない疾患とは反対に、自覚症状はあるのに検査では異常が見つからないという特徴があります。ただし、どちらも生活習慣やストレスが病状に少なからず影響を及ぼします。
日本生活習慣病予防協会は、健康的な生活習慣による生活習慣病予防を目指し、健康スローガンとして『一無、二少、三多』(一無:禁煙・無煙、二少〔少食:食事は腹八分目に、少酒:お酒はほどほどに〕、三多〔多動:よく体を動かす、多休:しっかり休養、多接:多くの人・こと・ものに接する〕)を提唱しています。
今回とり上げた胃の不調の予防としての効果的なセルフケアも、一無、二少、三多による健康的な生活習慣にほかなりません。新型コロナ、国際紛争、物価上昇など、人々のストレスがますます増大しつつある今の日本においては、とくに、「三多」が重要になってくると言えそうです。
宮 崎 滋 (一般社団法人日本生活習慣病予防協会 理事長)
■一般社団法人日本生活習慣病予防協会とは
日本生活習慣病予防協会は、生活習慣病の一次予防を中心に、その成因、診断、治療、リハビリテーションに関する知識の普及啓発、生活習慣病に関する調査研究を行うことを目的に2000年に設立されました。
健康標語『一無、二少、三多(いちむにしょうさんた)』の健康習慣を提言し、1月23日を『一無、二少、三多の日』として記念日登録し、2011年より、毎年2月を「全国生活習慣病予防月間」として、『一無、二少、三多』の普及を図っています。
▶ 一般社団法人日本生活習慣病予防協会
https://www.seikatsusyukanbyo.com/