培養肉に向けて開発した国産牛由来の多能性幹細胞において3次元培養技術の開発に成功

ウシ多能性幹細胞のフィーダーフリー培養技術とともに開発し、培養肉の大量製造にむけて一歩前進

株式会社Hyperion FoodTechのプレスリリース

図 BEEF細胞の3次元スフェロイド培養の顕微鏡写真

培養肉の開発を細胞の設計から行う株式会社Hyperion FoodTech(以下:HFT)は、独自技術で樹立した国産牛の受精胚に由来する多能性幹細胞(BEEF細胞:Bovine Embryo-derived stem cell for Engineered Food または Bovine Embryo-derived Element Forming cell)において、従来は増殖能や分化能を維持したままの培養に必須であったフィーダー細胞との共培養を不要とし、BEEF細胞のスフェロイド(細胞同士が凝集して塊になったもの)を形成して3次元浮遊培養を可能とする技術を確立しました。また、そのための培養液の開発に、ナカライテスク株式会社(京都府京都市 代表取締役社長:半井 大)による資材提供の協力の下、成功しました。

背景として、多能性幹細胞の培養では、シャーレ上でフィーダー細胞とともに2次元培養を行うことが多く見られます。研究スケールでの培養であれば2次元培養で事足りますが、培養肉生産を目的とする場合においては大量培養に向かない2次元培養での生産は非現実的なため、3次元培養技術を採用することが必要でした。さらに、フィーダー細胞は培養肉の構成要素ではない細胞であることから、安全性面、コスト面、3次元培養への切り替えの面から、フィーダー細胞を使わずに培養できることが理想的でした。そこでフィーダーフリー培養方法、3次元の浮遊培養方法、そしてオリジナリティの高い培養液開発に取り組みました。

今回のプレスリリースで我々の発表の新しい点をまとめますと以下の通りです。

  • BEEF細胞のフィーダーフリー培養の条件の確立と培養液の開発

  • BEEF細胞のスフェロイド形成のための培養条件の確立と培養液の開発

  • BEEF細胞スフェロイドの3次元浮遊培養(≦ 2リットルスケール)の実証と培養液の開発

上記により、従来のシャーレ等の2次元培養と比較して、作業プロセスの削減、それに伴う作業者数の削減、設置スペースの狭小化が可能となり、培養肉生産に必要な効率的な大量細胞培養へのさらなる展開が期待されます。なお、上記については特許申請もいたしました。

今後、HFTは、現在着手中のその他の検討課題に加え、さらに上記開発からの発展として、大量培養に向けたスケールアップの検討、培養液成分の低コスト化、より食品製造に好ましい培養液成分へのマイナーチェンジ、3次元培養下で食用肉を構成する細胞・組織(例えば骨格筋、脂肪、線維、血液等の混在した組織)へと近づける分化誘導法の開発などに着手していきたいと考えております。

HFTは今後も人が日常的に摂取しても問題のないような「より安心・安全」な培養肉を目指して、原料、プロセス、周辺技術などの種々の課題に対して、創業者達の専門分野である再生医療開発で培われた“リスク・ベース・アプローチ”を基本とした姿勢で研究開発していきます。

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