『大地を健康にするカーボンファーミング酪農』の実証研究を開始

道東カーボンファーミング研究会の2024年度活動がスタート。 土壌健康の向上により炭素貯留量増加を追究するカーボンファーミング手法の実証を開始しました。

一般社団法人道東サスティナブル農業推進機構のプレスリリース

昨年8月に発足した道東カーボンファーミング研究会(北海道別海町、会長 中山勝志 以下、本研究会)は、昨年度実施の北海道別海町での酪農牧草地における炭素貯留量の基礎調査結果を踏まえ、本年度から日本ならではの堆肥活用による酪農法が土壌に好影響を及ぼすプロセスに着目、土壌健康度を示す指標を評価軸とした酪農法による炭素貯留量の向上を検証していきます。

2024年7月2日土壌サンプル採取風景。養老牛山本牧場(北海道中標津町)

2023年度活動報告
本研究会では現状における酪農牧草地の炭素貯留量を計測し、今後のベンチマークとするため、別海町内6社9地点で土壌炭素貯留の調査を実施しました。
①別海町内の調査対象地点における炭素貯留量は平均130ton/30cm。道内牧草地の平均値120ton/30cmと比較して、別海町内の炭素貯留量は多いことが推測されます。
②その結果から別海町農耕地 64,216ha 全体の炭素貯留量は834万〜902万ton/30cmと試算されました。この土中炭素貯留量を増大化させていくことが課題です。
③また土壌分類、農法(慣行農法/放牧)の違いで貯留量の差を確認が出来ました。様々な酪農家のそれぞれの酪農スタイルに対応するカーボンファーミング手法(以下、CF手法)の確立が求められます。
2023年度活動の詳細については研究会事務局にお問い合わせください。

2024年度活動の3つのポイント
1.『土壌健康度』に着目したカーボンファーミングのコンセプト 
2️. PDCAサイクルによる実践検証
3. 新たな連携パートナーの協力

土壌健康度に着目した『大地を健康にするカーボンファーミング酪農』がコンセプト
2023年度の調査結果を踏まえ、本研究会は今後『大地を健康にするカーボンファーミング酪農』を目指していきます。土壌健康とは土壌有機物(Soil Organic Matter、以下SOM)を分解する土壌内微生物が増加・活性することで牧草の良好な生育を促し、結果として土中の炭素貯留量を増やしていくプロセスです。
日本、特に道東エリアで行われている牛の排泄物を有用な有機物として土壌へ散布する酪農法は「SOMをマネジメントする循環型農法」と言えます。SOMの散布により「土壌の健康管理」を行い、土中微生物の活性と土中炭素貯留量増加の両輪を回していくスタイルが道東版カーボンファーミングと言えます。本研究会では微生物との共生や環境再生型農法も視野に入れつつ、施肥マネジメントと土壌管理手法を追究していきます。

PDCAサイクルによる実践検証で多様な酪農家が導入できる手法を開発
今年度調査では飼育頭数1,000頭規模の大規模農場である有限会社中山農場(北海道別海町)、同40頭規模の完全放牧型小規模酪農家である養老牛山本牧場(北海道中標津町)の2牧場計5圃場にて施肥を行う前の7月、施肥後の11月の2回の土壌サンプリング調査を行います。炭素貯留量、微生物量や有機炭素量に関する項目を分析し、排泄物の施肥による変化、カバークロップの有無など条件に変化を持たせ農法の違いによる差を検証していきます。
こうした調査は今後3年を目処に継続し、「土壌健康度を示す基準指標作り」「酪農規模、スタイルに応じたCF手法」の確立を目指します。今年度後半からは飼育頭数100 〜200頭の中規模農家の検証参画も促していきます。このように一元的な手法ではなく、多様な酪農スタイルに合わせたCF手法によって大・中・小規模農家が混在する道東ならではの持続可能な酪農生産地を形成していきます。

カバークロップの種子。これで土壌を覆う。

新たな連携パートナーの協力による活動の広がり
本研究会は、生乳生産の最前線である酪農家と明治ホールディングス株式会社(本社:東京都中央区)および株式会社 明治(本社:東京都中央区)(以下、明治グループ)協働し、サプライチェーンを跨ぐ持続可能な酪農乳業を模索する活動であることが特長です。
本年度からはソニーグループ株式会社(本社:東京都港区) も研究会メンバーに加わります。ソニーグループの通信・画像解析・センシングなどのテクノロジーへの知見が加わることで、生乳生産の現場からサプライチェーンをつなぎ、サステナブルな生乳生産活動を下支えするCF手法のシステム化を図ります。

今後見通し:研究から実践活動へ〜健康でサステナブルな生乳生産
本研究会はCF実践に向けて、効果が可視化され管理しやすいシステム開発、農家の導入障壁を下げるオフセットクレジット化も検討。道東から始まるカーボンファーミングを北海道全域に拡げ、理念に賛同する酪農家を増やしていきます。それに伴いCF実践地域における環境再生やカーボン・オフセットミルクの開発も視野に入れて研究活動から実践活動へとつなげていく予定です。
今年度から打ち出していく『土壌の健康』を皮切りに生乳生産に関わる持続可能性を『健康という価値観』に照らしあわせ、ヒトの健康(消費者・生産者の健康)、牛の健康(アニマル・ウェルフェア)にも繋がるサステナブル酪農乳業を構想していきます。


《道東カーボンファーミング研究会》

2023年8月設立。生乳生産日本一の北海道別海町を中心とする道東をフィールドにフードチェーンをつなぐ酪農家〜乳業メーカーが参画する連携事業です。ゆくゆくは消費者も参加・応援できる仕組みづくりを目指します。またメンバーは北海道庁「北海道カーボンファーミング推進協議体」の構成員でもあります。

道東カーボンファーミング研究会 会長 中⼭ 勝志

有限会社中⼭農場代表取締役会⻑、⼀般社団法⼈道東サスティナブル農業推進機構理事⻑(※)
『⼈が幸せに、⽜が幸せに、関わる⼈が幸せに』を社是とする中⼭農場は、1996年に地域に先駆け、家族経営から法⼈経営へ舵を切り、酪農乳業の内製化・組織化を⾏う。その後、⽜舎へのロボティクスの導⼊、糞尿によるバイオマス発電を⾏うなど先進的な取組を⾏う酪農家として注⽬を浴びています。

有限会社中⼭農場 〒086-0654 北海道野付郡別海町中春別307番地の2

▷URL:https://www.nakayama-farm.com/
※一般社団法人道東SDGs推進機構から改組、改名しました。

道東カーボンファーミング研究会 事務局

⼀般社団法⼈道東サスティナブル農業推進機構(※) 株式会社TREE内
メールアドレス: hokkaido@carbonfarming.jp
TEL: 050-3339-8800
※一般社団法人道東SDGs推進機構から改組、改名しました。

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