生産者と職人の想いを載せて…まちの魅力よ届け！全国へ

主原料である国富金時のほか米粉やハチミツは町内産、バターは県内産と地産地消にこだわり、グルテンフリー、砂糖不使用のスイーツとなっております。完成まで何度も何度も試行錯誤を繰り返した塩バタータルト。最初の試作品は「きんつば」だったのです。難しかったのは「蜜芋の量にこだわった」ところ。蜜芋は非常に質の良い焼き芋で水分を多く含むため、量が多いと生地に火が通りにくいことが難点でした。その課題をクリアすべく蒸して「浮島（蒸してつくる和菓子）」にしてみたこともありました。最終的には、卵を泡立て、卵・米粉・ハチミツのバランスを調整し生地を軽く仕上げることで、蜜芋本来の甘さを損なうことのない、食べやすいスイーツが出来上がりました。

今回のスイーツ制作の発案者である原さんは、国富生まれ国富育ち。父親から受け継いだ農業（当時はタバコ農家）から６次化に成功し、国富金時芋を使用した主力商品の「蜜芋（甘えん棒）」は宮崎空港や都内のアンテナショップなどでも大人気の商品です。そんな原さんが以前から気になっていたのが、知人などから聞く「国富には何もない」という言葉。これが悔しくて自分にできる国富発信はないかと考案したのが「国富金時」や「蜜芋」でしたが、包丁がなくてもより手軽に食べることができ、より国富色の濃いお土産品ができないかと町内で商品化できるお店を探していたところ、国富製パン所の辻野さんの想いに共感して、新作スイーツの開発が始まりました。

辻野さんは元々パンの激戦区といわれる大阪でパン屋を営んでいました。大阪では数多あるパン屋の中のひとつでしかなかったけれど、国富町に来たら（当時は）パン屋がひとつもなかった。大阪では叫んでも通らなかった声が、国富なら周囲の人に聴いてもらえる。人口の少ない国富町では、一つ一つのお店に与えられた役割がとても大きく、やりがいを感じたと言います。「自分を温かく迎えてくれた国富の皆さんのために、少しでもお役に立てたら…」そんな想いで７年間パンを焼き続け、今では売店が閉鎖してしまった地元高校のパン販売まで担っています。このようにして地元の期待に応え続けてきた結果、製造が追いつかずお店を開けることができるのは金・土・日だけ。それでも国富のため、地域のためと今日もみんなが寝静まったころにお店の明かりを灯しています。