海の未来を考え、学び、実践する「THE BLUE CAMP(ブルーキャンプ)」の期間限定レストランを「日本食品総合研究所」で開催

株式会社日本食品総合研究所のプレスリリース

次世代に向けた新しい食文化づくりに挑戦するプラットフォーム「日本食品総合研究所」(以下NSK)にて、持続可能な海を目指した啓発活動を行う一般社団法人「Chefs for the Blue」による、未来を担う次世代の若者を対象とした人材育成プログラム「THE BLUE CAMP」の最終コンテンツとなる期間限定ポップアップレストランを2024年8月6日(火)〜8月11日(日)に開催しました。

このたびの取り組みは、Chefs for the Blueの活動にNSKが共感し、新たな食文化と価値創造を目的に掲げる同社がサポートしたいということで、これまでディスカッションを重ねながら実現に至った経緯があります。「THE BLUE CAMP」は、水産資源を守るシェフチームから未来を担う次世代の若者まで幅広い世代を巻き込んだプロジェクトであり、親和性が高いイベントでもありました。

利用いただいたのは、シェフの新しい挑戦やキャリア形成や交流を促したり、企画・開発中の商品のテストマーケティングを行うことができる「研究所」と、テストキッチンとして利用可能な「調理室」。外部階段側のエリアを前室として、プロジェクトの紹介と食事後のプレゼンテーションが行われました。レストランの待合室である「ディストピア魚屋」に始まり、日本の水産資源の現状を表現したコンテンツを盛り込んだプログラムは、1週間で120名の満員御礼となりました。

日本食品総合研究所の「研究所」。少ロットで多品種の商品を製造していくODM(Original Design Manufacturing)ファクトリー機能も持ち合わせています。
日本食品総合研究所の「調理室」。キッチンを備えたイベントスペースで、シェフズディナーや試食会、商品発表や展示会まで様々な用途で利用できます。

今後もポップアップレストランやワークショップ、プレゼンテーション時の利用はもちろん、スタートアップや若手シェフとのコラボレーションイベントなども積極的に開催しながら、あらゆる食のプラットフォームとして機能していくことを目指していきます。

■THE BLUE CAMP(ブルーキャンプ)とは

「THE BLUE CAMP」は、日本財団「海と日本プロジェクト」の助成を受けて行う、未来を担う次世代の若者を対象とした人材育成プログラムです。海や漁業、その持続可能性などについて学びや実践の機会を提供し、将来、海や水産物に関わる様々な分野で活躍できる人材の種を育てています。昨年に続き今年は2回目の実施となり、東京と京都の2拠点で選抜された15名の高校生・大学生・専門学校生たちがプログラムに参加。プログラム全体には、東京・京都のトップシェフ4名がメンターとして伴走し、3ヶ月間の学びと思考の内容を伝える場として、8月に期間限定レストランをオープンしました。
HP:https://thebluecamp.jp/ 
note:https://note.com/the_bluecamp/

東京チーム

<東京チーム  レストラン 『あおのいま』概要>

東京チームの学生8名が中心となって企画した、レストラン『あおのいま』では、4品の料理の提供と、プレゼンテーションが行われ、3か月の学びの軌跡と、日本の水産資源管理の現状に向き合った思いを発表しました。

レストラン会場では、メンターシェフである、【てのしま】林亮平シェフ、【御料理ほりうち】堀内さやかシェフとともに考案した、海の未来へのメッセージを込めた4品(前菜2品、定食、デザート)のコース料理を提供。レストランで提供するメニューは、魚種の選定から調理法、しつらえまで学生がアイデアを出し合いこだわり抜きました。

各魚種の漁獲量の現状を表す札を設置した「ディストピア魚屋」

<プロローグ「ディストピア魚屋」>

レストランの待合室は、「ディストピア魚屋」。

来場したお客様を待ち構えた魚屋に置かれた発泡スチロールには、魚の代わりに「マイワシ89%減」「サンマ96%減」などと書かれた札が並びます。この数字は、ピーク時からどれだけ漁獲量が減ったかを表すもの。プレゼンテーション担当の学生が、日本の水産資源の現状を真剣な面持ちで説明しました。

<料理>

ディストピア魚屋からレストランに向かう扉が開き、ダイニングルームへ案内されたお客様をサービス担当の学生たちが出迎えました。客席には、大学で水産研究を行う学生を含む2名の学生がお客様と並んで着席し、提供する料理に込める思いや、三か月の学びを伝えました。

会場の様子

1.前菜 鰯の冷製油煮 トマトだれ

旬のマイワシを油で低温調理し、夏らしいさっぱりとしたトマトだれをあしらいました。日本人にとって身近な魚のひとつ「マイワシ」は、令和5年現在、海面漁業において最も漁獲の多い魚です。しかし、実際人間の口に入っているのは3割程度で、多くが水産養殖用のエサや、農畜産業向けの飼肥料として利用されています。イワシを食する重要性を知り、イワシの価値をあげたいという思いで提供しました。

2.揚げ物:黒鯛の米粉揚げ 夏野菜あん

二品目に使用したのは「クロダイ」。魚屋には並ぶことが多いものの、都心のスーパーであまり見かけることがないという現状に目を付けました。この場でクロダイのおいしさを知ることで、「魚屋」を訪れる人が増え、日本の魚食文化を支えている「魚屋」の重要性を見直すきっかけを作りたいという思いで選定した魚種です。

3.お膳:マグロづくし

(血合いの煮つけ、山かけ、尾の身のつみれ汁、香の物、御飯)

メインとして提供した「マグロづくし」膳では、クロマグロの未利用部位を活用。普段捨てられていることも多い血合いは、実は鉄分やビタミンB群が豊富で、調理法を工夫すると、非常に美味しく食べられる部位だということを学んだ学生たち。生臭さや、食感のパサつきを抑えるため何度も試作を重ね、ほろりとした食感と、濃厚な旨味を感じる煮物に仕上げました。お吸い物のつみれには、同じくクロマグロの尾の身を使用。尾びれを常に動かす回遊魚のまぐろの尾の身は、筋力が発達するため、強いうま味としっかりとした肉質が特徴。皮と身の間の筋はコラーゲンが多く含まれるため、加熱することで柔らかな食感となります。資源管理の成果として資源回復傾向にある、クロマグロの現状からの学びと、未利用部位をおいしく活用することは、一尾の価値をあげることにつながるというメッセージを伝えました。

4.甘味:桃の水羊羹 海藻のレモン蜜漬け

甘味には、旬の桃を白あんと合わせた水羊羹に、海藻の蜜漬けをあしらった一品。海のゆりかごとも呼ばれる海藻類は、魚の産卵や子育ての場として利用されることも多く、海の生態系の中で重要な役割をになっています。

近年、「磯焼け」が問題視される中、海藻類の重要性を見直したいと、デザートとして活用しました。

<エピローグ「学生が残した3つのメッセージ」>

「100年後も魚を食べ続けるためには」をテーマの学生たちのブレストボード

1.魚は無限にない

3か月の学びの中で、まず直面したのが、1つめのメッセージ「魚は無限にはない」ということ。天然資源である魚は、「獲り過ぎ」ると減ってしまいます。3か月の学びの中で、未来へ資源を残していくため、「獲り過ぎ」ない工夫をしている漁業者と出会ってきた学生たち。しかし、それらの工夫はほんの一部に過ぎず、日本の漁業においては、まだ資源管理によって改善する余地があるということを訴えました。


2.希望と現実の葛藤「モヤモヤ」

ポップアップレストランの開催にあたり、学生たちは「100年後も魚を食べ続けるにはどうしたらよいのか」という大きな問いを立てました。

3か月の学びの集大成として、学生たちが出した結論は、その答えは出せないという「モヤモヤ」でした。「魚食に関する日本の技術や文化がすばらしいこと、そして資源管理が重要なことはよくわかった。でも最適な資源管理の方法はまだわからないし、消費者に何ができるか、についても解が出せない。

海を守るためには「獲らない、食べない」ことが一番のように思えるが、それでは魚食文化を守れない。資源管理の証としてのエコ認証魚を買うように勧めるのがよいかというと、それでは食べられる魚種が限定的になり、やはり多様な魚食文化が衰退する。認証がなくても、サステナブルな漁業を続ける漁業者がいる中で、『認証』の有無で魚や漁業者の良し悪しを決めるべきなのかがわからない。それとも、資源が減っているなら養殖で増やせばよいのか。しかし現状、養殖魚のエサには天然魚が必須であり、その漁獲が生態系に与える影響も大きい。…」

様々なプレイヤーから、海の現状を学んできたからこそ、「100年後も魚を食べ続けるにはどうしたらよいのか」という問いに対して、ひとつの最適解を出せなかったという学生たち。答えが出せないことは無責任だと感じ、大きな「モヤモヤ」が残った。それでも、学びの集大成として出した結論は伝えたいと、言葉につまりながらも、素直に葛藤とモヤモヤを表現した学生たちの姿に、涙ぐむ来場者も見られました。


3.知らなければ何も変わらない、知ることで何かは変わる

答えは出せなかったけれど、3か月の学びを通して海の現状を「知る」ことで、自らの思考や行動が大きく変わったことを実感した学生たち。食卓に魚が並ぶ機会が増え、行ったことのなかった魚屋に自ら足を運ぶようになり、調理したことがない魚も積極的に調理するようになった。そのような、変化を身をもって体感した学生たちは、「今日ここで感じたこと、知ったことを、身近な人に話してみることから始めてほしい。僕たちが感じた『モヤモヤ』の輪を広げ、少しでも多くの人に、海の未来に関心を持ってほしい」と締めくくりました。

<参加者の声>

K.Iさん

単なる食事の提供ではなく、食を通して社会課題と活動の総合プレゼンテーションとしてデザインされていたことに感動しました。異なる年代や分野のメンバーがしっかりと課題意識を持ってコラボレーションしていることに感動し、刺激を受けました。これからみなさんの活動は社会に変化を与えていくことになると思います。とても大切なきっかけを与えていただきありがとうございました。

君島 佐和子さん(株式会社料理通信社 )

食材選択とその生かし方が理に適っていて、魚種と部位・調理法・味わい、全てが腹落ちしました。学びがレストランに落とし込まれていくキャンプの組み立てがすばらしいと思います。レストランという場が持つ可能性や社会的な役割を、プロのレストラン従事者がもっと認識しなければいけないと感じたのも事実です

山本徹さん(株式会社フーディソン 代表取締役CEO)
(記憶に残ったことは?という問いに対して)複雑ですぐに解決できない問題に対して向き合ってモヤモヤしていたこと。とっつきやすい答えを出してスッキリする選択をしなかったことに、今後難しい問題に向き合う胆力を感じて感動しました。

松島 博英さん(水産庁 資源管理推進室)

今回の活動を機に、水産関係者「以外」へのアプローチ活動の重要性をさらに感じた。いわゆる一般消費者の皆様は、水産資源の現状を単に知らないだけで、我々が情報共有をしていくことで、関心を持ち、さらに行動にも移してくれるのでは、という希望を感じた。今後はさらに、対外的な活動を積極的に行っていきたい。

<THE BLUE CAMPダイジェストムービー>

https://youtu.be/_Aqv-z27Fzo

■Chefs for the Blue(シェフズフォーザブルー)とは
Chefs for the Blueは、2017年5月、日本の水産資源の現状に危機感を抱いたフードジャーナリスト佐々木ひろこの声がけに応え、東京のトップシェフ約30名が集まりスタートさせた海についての深夜勉強会を起点とする料理人チームです。2021年9月には京都チームも発足しました。「日本の豊かな海をとり戻し、食文化を未来につなぐ」ことを目標に、研究者やNGO、政府機関などから学びを得ながら、持続可能な海を目指した自治体・企業との協働プロジェクトやフードイベントなど様々な活動を行っています。

<概要>

法人名 :一般社団法人Chefs for the Blue (シェフス フォー ザ ブルー)

設立日 :2018年6月6日(活動開始は2017年)

住所  :東京都渋谷区千駄ヶ谷3-7-13東急アパートメントB1

代表理事:佐々木ひろこ フードジャーナリスト

理事  :岸田周三【カンテサンス】 オーナーシェフ

     石井真介【シンシア】オーナーシェフ

     米澤文雄【ノーコード】オーナーシェフ

     坂本健【チェンチ】オーナーシェフ

     花岡和佳男「シーフードレガシー 」代表取締役社長

相談役 :村田吉弘【菊乃井】主人

公式HP:https://chefsfortheblue.jp/



■日本財団「海と日本プロジェクト」について

さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。

公式HP:https://uminohi.jp

■日本食品総合研究所(NSK)について


「日本食品総合研究所」は、食の領域で多様なサービスを展開し続け、新しい食文化の創造を目指すイートクリエーターを中心に、食に関わる人やコミュニティ、企業や自治体をつなげるハブとして、プロジェクトベースで食にまつわる企画・開発・製造・提供のサイクルを循環させていくプラットフォームです。ラボラトリー&ファクトリー「研究所」、テストキッチン「調理室」、グローサリー「食品庫」、カフェ&ワインバー「喫茶室/ Mary Jane」の4つのスペースで構成され、従来の「開発」や「製造」に偏りがちだった機能的なビジネスモデルから、「企画」や「体験」をかけ合わせることで、食のコミュニティを通じてデザイン、ファッション、アート、音楽、シネマ、トラベル、SDGs等の様々なカルチャーと交わりながら、イノベーティブなサービスを提案していきます。この度「職・住・遊 近接の新しいライフスタイル」を提案する新商業施設「フォレストゲート代官山」に拠点を開設して、新しい食文化づくりに挑戦していきます。


<会社概要>

社名:株式会社日本食品総合研究所(NSK)

設立:2022年2月

代表者:永砂 智史

所在地:東京都中央区日本橋兜町6-7 兜町第7平和ビル 1F

資本金:2億5140万円

事業内容:

・シェフ・パティシエ・ソムリエ等、飲食業に関わるクリエーターのマネジメント業務

・食品のODM生産(Original Design Manufacturing)

・商品企画・プロデュース

・飲食施設の運営受託

公式HP:https://nsk-office.com/


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