「2024年問題」への対応加速に向け、AIを活用し、持続可能な物流インフラ構築を目指す
キリンホールディングス株式会社のプレスリリース
キリンビバレッジ株式会社(代表取締役社長 井上一弘、以下キリン)は、株式会社Hacobu(代表取締役社長CEO 佐々木太郎、以下Hacobu)が提供する、輸送量平準化を実現するための生産・販売・在庫管理の情報プラットフォーム「MOVO PSI※1」を2024年11月1日より導入開始します。「MOVO PSI」は、基盤の企画と販売をHacobuが担当し、AIやデータサイエンスを活用した共通データ基盤の開発と提供を株式会社JDSC(代表取締役 加藤エルテス聡志、以下JDSC)が担当するサービスです。
※1 PSIとは、Production, Sales, and Inventoryの略で、生産計画、販売計画、在庫計画を統合的に管理することでより効率的なサプライチェーンを実現するための方法論のこと。
1.背景
2024年4月より、トラックドライバーに「働き方改革関連法」が適用されたことで、物流の停滞が懸念される、物流「2024年問題」が喫緊の課題となっています。さらに、2023年6月2日に政府が発表した「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」では、「発注量および発送量の適正化」が推奨され、業界全体での迅速な対応が求められています。
一方で、メーカー、卸売業、小売業をつなぐサプライチェーンでは、予測困難な消費者の購買行動が課題となっています。例えば、小売業での急な需要増加が、卸売業を経由してメーカーに伝わる過程で、その変動が増幅されてしまいます。この「需要増幅効果」により、各段階で過剰な在庫や不必要な輸送が発生し、結果として「ムリ・ムラ・ムダ」を生んでいます。特に、飲料業界では、セールや季節変動、天候による予測困難な需要変化により、欠品のリスクを避けるために在庫を多く抱える傾向にあります。その結果、メーカーや卸売業において余剰在庫の発生や、効率的な輸送の手配が困難となり、課題がさらに複雑化しています。
「MOVO PSI」はこのような深刻化する物流危機と業界の課題に対し、AIやデータサイエンスを活用し、輸送量を平準化することで解決を目指すものです。
図1:需要変動が増幅するメカニズム
2.輸送量平準化 共同プロジェクト(実証実験)について
「MOVO PSI」の導入に先駆けて、2021年より当社とHacobuは、物流課題解決に向けた「輸送量平準化 共同プロジェクト」を開始しました。2023年10月から11月の期間、VMI※2拠点での実証実験を行い、約9.1%の輸送コスト削減に加え、在庫日数においても約13.2%の削減効果が確認できました。実際のオペレーションと同条件を適用することで、在庫日数や欠品率の削減など、実証実験と同等レベルの成果が出せることを確認しています。
さらに、2023年より新たにアサヒ飲料株式会社(代表取締役社長 米女太一、以下 アサヒ飲料)が本プロジェクトに参画し、アサヒ飲料は2024年3月から4月に実証実験を実施。特定の配送センターへの輸送コスト約 6.2%、卸売業の在庫日数約 6.5%削減を実現しました。
※2 VMIとは、Vendor Managed Inventoryの略で、納品する側が納品先の在庫管理を実施する手法のこと。
図2:「MOVO PSI」による輸配送平準化のイメージ
3.今後について
今後、当社は2025年春までに全VMI拠点で「MOVO PSI」導入完了を目指し、自社における輸送の積載率向上やコスト削減、および納品時の欠品率低減を推進し、持続可能な物流インフラの構築に向けた取り組みを加速していきます。
また、将来的には、Hacobuを中心に他業界などのさまざまなステークホルダーとデータ共有・活用したオープンプラットフォーム化を推進し、業界を超えたステークホルダーの皆様とともに社会全体の価値創出・課題解決へ挑戦し続けます。
キリンビバレッジは、2024年問題をはじめとする、飲料業界が抱えるさまざまな物流課題の解決に向けて企業の垣根を越えて連携し、こころ豊かな社会の実現に貢献します。
【参考資料】輸送量の平準化を実現するPSI情報プラットフォーム「MOVO PSI」の開発
「MOVO PSI」は、メーカー、卸売業、小売業の企業間をつなぎ、PSI情報を管理・共有・分析するプラットフォームです。このシステムを通じて、各企業は日々のデータにアクセスし、過剰在庫や欠品を防ぎつつ、在庫量や輸配送量を最適化することができます。
「MOVO PSI」は、2つのAI(機械学習)モデルを搭載しています。1つ目は卸売業や小売業からの受注を予測し、在庫の変動を正確に把握します。2つ目は、必要最低限の補充数量を毎日一定に保つため、膨大な組み合わせの中から最適なパターンを計算し、現場の実務を支援します。「MOVO PSI」を活用することで、企業は輸送コストの削減、在庫効率の向上、欠品率の低減などを見込めます。さらには企業間を跨いだ連携により、社会全体の輸送効率向上を推進できます。
本プラットフォームの開発にあたっては、基盤の企画と販売をHacobuが担当し、AIやデータサイエンスを活用した共通データ基盤の開発と提供をJDSCが担当しています。「MOVO PSI」は、JDSCが保有する需要予測ソリューション「demand insight®」をベースに開発しました。