ウクライナと九州をつなぐ「食」の架け橋

株式会社岩田産業グループホールディングスのプレスリリース

岩田産業社長の岩田章正が、クリスマスアドベントを主催・運営する株式会社サエキジャパン社長の佐伯岳大様をお迎えし、2025年春から岩田産業で勤務するウクライナ人のソフィア・ユルチェンコさん(愛称ソーニャ)を交えて対談。


佐伯社長のクリスマスアドベントへの取り組みと、ソーニャがそこでウクライナ料理「ボルシチ」「ピリシキ(ロシア語ではピロシキ)」を販売するようになった経緯、また岩田産業の取り組みなどについてそれぞれの話をうかがった。

株式会社サエキジャパン 代表取締役 佐伯 岳大

大学在学中の2001年に起業し、卒業後の2007年にサエキジャパン設立。警備会社や飲食業など多方面で事業を展開中。「クリスマスアドベント」を主催し、総合プロデューサーとして手腕を発揮。

岩田産業株式會社 代表取締役 岩田 章正

飲食店向けにプロ用食材、アルコール、飲料、菓子材料の卸売会社を運営。日本ソムリエ協会の認定ソムリエ、フランスチーズ鑑評騎士の会シュバリエ。「食を通じて九州を元気に!」が信条。

岩田産業株式會社 ソフィア・ユルチェンコ

ウクライナ出身。キーウ国立言語大学/日本経済大学卒業後、2025年入社。戦争により人生が根本的に変わったが、日本に住みたいという夢をかなえ、食を通じてウクライナの文化に触れてもらいたい。

クリスマスアドベントの取り組みについての経緯や概要について教えてください。

佐伯 2007年、私が26歳の時に知人に誘われてドイツのクリスマスマーケットに行ったのがきっかけです。寒い夜に人々が身を寄せ合いながらホットワインを飲んでいる姿が印象的で、いつか福岡でもクリスマスマーケットができればいいなと思いました。そこから準備をすすめ、2012年冬にもう一度ドイツへ行き、そこで来年こそは何があっても福岡でクリスマスマーケットをやろうと決心し、2013年に博多駅前広場で1回目を開催しました。

 また、2023年に光・音・芸術の3つの柱をコンセプトに「クリスマスアドベント」に名称を変更しました。10年後は日本中に福岡発のクリスマスアドベントを広げていきたいですね。岩田社長、コロナ禍後の状況はどうですか?

岩田 私たち岩田産業グループは「食を通じて九州を元気に!」をキャッチフレーズに業務用食品の卸企業として、九州を中心にホテル、レストラン、カフェデリカ、学校の食堂、病院給食などに業務用のプロ商材を提供していますので、緊急事態宣言の度重なる発令で、お客様ともども、とても厳しい逆境に立たされました。しかしながら、なんとかお客様と一緒にその逆境を乗り越え、社員1,800名とともに約400台の営業車両を運行し、来年で55周年を迎えられそうです。

クリスマスアドベントとは: 2013年にクリスマスマーケットとして初開催。現在は名称をクリスマスアドベントに変え、光と音と芸術をテーマに福岡のまちを華やかなイルミネーションで結ぶとともに、さまざまなイベントを開催している。福岡の冬の一大イベントとして毎年多くの人でにぎわうだけでなく、上野恩賜公園・袴腰広場にて「東京クリスマスアドベント in Ueno Park」を開催。

今年で13回目の開催になりますが、今年の「推し」を教えてください。

佐伯 岩田産業様には1回目から応援をいただいており、ありがとうございます。「推し」は11月21日~12月18日に天神中央公園で開催する無料のサーカスショーReverie(リヴェリー)。1日2ステージ(月曜日・火曜日は休み)、30分のショーですが、空中アクロバットをはじめ今年は空中ブランコもやります。また、貴賓館前広場には130体以上のサンタクロースもいますし、今年はプロジェクションマッピングもするので貴賓館も「推し」です。

 ここではすべてを伝えることはできませんが、いろいろな会場で「推し」がありますのでぜひたくさんの会場にお越しいただきたいですね。そして、岩田産業さんから紹介されたウクライナ料理の「ボルシチ」「ピリシキ」も「推し」ですね。多くのお客様に食べにきていただければ嬉しいと思っています。

ボルシチ
ピリシキ

サエキジャパン様にウクライナ料理を紹介された理由を教えてください。

岩田 太宰府市にある日本経済大学は、ウクライナのキーウ国立言語大学から毎年2名の交換留学生を受け入れていましたが、2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり中止せざるを得なくなりました。戦況が変化するなか、一転して逆に64名の避難学生の受け入れ要請があり、日本経済大学は人命を最優先に考え即決で対応されました。

 その英断に感動し、当社も「顔の見える支援」をしたいと考えました。ユニセフや赤十字への寄付もしていましたが、目の前に困っている方がいるなら、直接支援すべきだと。まずは依頼のあったお米の提供から始めました。

 その背景には、2016年の熊本地震で当社の熊本支店が被災、2018年と2020年の豪雨で久留米支店や米穀事業部が被災し、私たち自身が直接、周りの皆様から多くの支援をいただきました。その経験から「受けた恩を返したい」という気持ちもありました。

佐伯 なるほど、それからどう「ボルシチ」「ピリシキ」とつながっていくのですか?

岩田 継続的に経済的な支援も必要だと考え、2022年からお中元・お歳暮ギフト販売の売上の1%を日本経済大学へ寄付する取り組みを開始しました。そのようななかで2023年、日本経済大学からウクライナ人留学生のインターンシップの依頼がありました。

 次年度の卒業生を対象に、日本の企業を視察、体験してみたいという要望でした。何かのご縁と考え、経済的な支援だけでなく人的な支援にも繋がればという思いで受け入れました。年2回マリンメッセ福岡で開催している秋冬のフードフェアで、ウクライナブースを出展し、インターンシップに参加してくれたウクライナ留学生に運営してもらうことにしました。

 テレビ局の取材インタビューで「きょうのお客様のウクライナ料理や「ボルシチ」に対するご意見を伺いながら、自分たちにできることは“ウクライナ料理や「ボルシチ」を九州で拡げること”“食を通じてウクライナに寄与したい”」と語ったところ、ウクライナ留学生の何人かが共鳴してくれました。その中の一人がソーニャさんであり、当社に入社するキッカケになり、今回紹介することになりました。

ソーニャ こんにちは。私はキーウ国立言語大学の日本文献学科に入学し、日本経済大学でも学んでいます。幼い頃から日本に強い憧れがあり、いつか住みたいと思っていました。でも、戦争が始まり、人生が一変しました。

 そんななかで、日本に来る機会を得た私は「何もせずに生きるなんて耐えられない」と思いました。文化交流・平和交流の一環として「食」が果たす役割の大きさに気づき、ウクライナ料理や「ボルシチ」を通じて日本の皆さんにウクライナを紹介することが私にできることではないかと思いました。

 ウクライナ料理は、心の広さと思いやりの象徴です。豪華な食卓は客人を「幸運を運ぶ存在」として迎える文化的な行為です。例えば「テーブルが崩れるほどのごちそう」という表現は、相手を大切に思う気持ちの表れです。

 また、ウクライナワインも魅力的です。紀元前4世紀から続く伝統があり、現在は新たな黄金期を迎えています。多様な気候と土壌、希少な品種、伝統と最新技術の融合により、個性的で高品質なワインが生まれています。

ソーニャさんが語るウクライナ料理の文化的背景や平和への願いを聞いて、どのような印象を持たれましたか?

佐伯 戦争が始まった時はとてもショックでした。戦争前は毎年、クリスマスアドベントにウクライナからも出店者が来ていましたからね。

 今回「ボルシチ」と「ピリシキ」が幸運を運ぶ存在となって、家庭で料理を出すように、クリスマスアドベントに来たお客様の幸せや平和を願いたいですね。ぜひ多くの方に食べていただきたいです。

岩田 そうですね。私たちがソーニャの想いに共感し、岩田産業オリジナルの商品として、ソーニャと一緒に「ボルシチ」「ピリシキ」を開発しました。地産地消にもつながる取り組みをめざすと同時に、ウクライナ料理を日本の食卓に定着させたいと考えています。社員がソーニャと話し合いながらボルシチをつくるなかで、完成したらまず、クリスマスアドベントの佐伯社長に相談に行こうという話が、社内に湧き上がっていました。

 今回、ウクライナ支援の一環として「ボルシチ」「ピリシキ」をクリスマスアドベントで販売することになった経緯について、どのような想いがあってのことでしょうか?

佐伯 経緯ですが、岩田産業さんの想いとソーニャさんの想いに共感したからです。岩田産業さんのご提案は食べることで支援につながりますし、少しでも平和につながればと思っています。

 今回の取り組みをきっかけに、世界の料理を紹介し合い、クリスマスがもっと多様で豊かな場になってほしいと思います。そして、ウクライナ料理「ボルシチ」と「ピリシキ」を販売することによって、日本経済大学のウクライナ人留学生に対して売上金の一部を支援金にする取り組みにも賛同しました。

岩田 日本でウクライナの生活と同じような暮らしをしてもらいたいこと、また今後、復興には多額の支援が必要となりますので、継続的な支援のスキームが重要と考えました。外食・中食は日々の生活に欠かせない存在なので、食べることイコール支援につながれば、負担を感じることなく支援に参加し、平和に貢献している意識になり、心が豊かになればと思います。

会場で販売されるボルシチ
会場で販売されるピリシキ

ウクライナ料理を広めることの意義について、もう少しお聞かせください。

ソーニャ ウクライナ料理を広めることは、ウクライナという国の文化的な誇りと存在証明です。料理はその国の歴史や価値観を映し出す重要な要素。特にウクライナでは、食文化が家族の絆や精神的な強さと深く結びついています。

 例えば「ボルシュ(ウクライナ語で“ボルシチ”のこと)」は世界的に知られるスープですが、ロシア料理と誤解されることが多いです。これは長年の文化的抑圧の結果です。2022年にはユネスコが「ウクライナのボルシュ調理文化」を無形文化遺産として緊急保護の対象に登録しました。これは文化的アイデンティティを守るための静かな抵抗の象徴です。

岩田 佐伯社長はクリスマスアドベントという場で、ウクライナ支援を形にすることの意義や、来場される方々に、今回の取り組みを通じてどのようなメッセージを届けたいとお考えですか?

佐伯 世界にはまだまだクリスマスを楽しめる国というのは少ないと思います。日本みたいにクリスマスにみんなでお酒を飲んだり、イルミネーションを楽しんだりできる国は少ないと思います。

 今回、来場者の方が「ボルシチ」と「ピリシキ」を食べることで平和への支援になり、1日でも早く世界が平和になればいいですね。世界がクリスマスを通して平和になればいいと願っています。

今後、岩田産業との連携や、食を通じた社会貢献活動について、広げていきたいことがあれば教えてください。

佐伯 今後、福岡の「クリスマスアドベント」を日本中に広げたいと思っています。また、今回の取り組みをきっかけに岩田産業さんと、他の国の伝統料理も一緒に提案することができればいいなと思います。クリスマスアドベントを通して世界の食文化を体験し楽しんでもらいたいと思います。

岩田 最後に、ソーニャさんからメッセージをお願いします。

ソーニャ 食を通じて、日本の皆様にウクライナ文化やウクライナ人の温かい人柄に触れていただき、それを周りの方々とも共有してほしいです。世界が不安定な今だからこそ、平和・文化交流・助け合いという共通の価値観が私たちをつなげてくれます。

 日本は常にウクライナの味方であり、心からの支援を続けています。料理は人々の心をつなぎ、文化や価値を伝える力があります。共に心を開き、平和に寄与する思いを持ちながら、美味しい食べ物を楽しみましょう。

岩田 ありがとうございます。佐伯社長のご協力により、ウクライナの文化と九州の食がつながる素晴らしい機会が生まれました。今後もこのような取り組みが広がっていくことを願っています。

クリスマスアドベントの様子

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