これまでに報告されている最低有効用量のわずか1/4量 ~科学雑誌『Functional Foods in Health and Disease』掲載~
森永乳業株式会社のプレスリリース
森永乳業は長年にわたり、ヒトの大腸にすみ様々な健康効果をもたらしているビフィズス菌や、そのビフィズス菌を増やすオリゴ糖の一種「ラクチュロース※1」の研究を行っています。このたび、1日わずか500 mgのラクチュロース摂取で、腸内のビフィズス菌が増加することを臨床試験で確認しました。本研究結果はFunctional Foods in Health and Disease誌に2025年12月8日に掲載されました※2。
1.研究背景
腸内環境は全身の健康維持に深く関わり、腸内細菌叢を整える食事が注目されています。ラクチュロースは消化・吸収されずに大腸まで届き、善玉菌の代表であるビフィズス菌を増やすプレバイオティクス※3の一種として知られ、飲料やヨーグルト、粉末タイプのサプリメントなどに広く利用されています。
従来、健常成人を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験の結果から、ラクチュロースが腸内環境におけるビフィズス菌を増やす最低有効用量は2 gとされていました。
(Y. Sakai et al., Benef Microbes. 2019, DOI: https://doi.org/10.3920/BM2018.0174)
しかし、最近の研究でビフィズス菌がラクチュロースを効率的に利用する仕組みが解明され※4、より少ない用量でも効果が期待されると考えられました。そこで本研究では、従来報告の1/4量である500 mgのラクチュロース摂取による腸内細菌叢におけるビフィズス菌への影響を評価しました。
2.研究方法
・解析対象者数:健康な成人男女78名
・試験デザイン:ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験
・期間:2025年2月~2025年4月(摂取期間4週間)
・試験食品摂取:対象者をランダムに2群に分け、プラセボまたはラクチュロース(500 mg/日)を含む食品のいずれかを4週間毎日摂取。2週間の休止期間を挟んだ後、もう一方の食品を4週間毎日摂取。
・評価項目:腸内細菌叢(ビフィズス菌占有率)および安全性
・解析方法:排便時に便を採取し、便から抽出した腸内細菌のDNAを用いて 次世代シーケンサーによる菌叢解析を実施し、ビフィズス菌の占有率を算出して比較
3.研究結果
ラクチュロース摂取後では、腸内細菌叢に占めるビフィズス菌の割合が、プラセボ摂取後と比較して有意に増加しました(図1)。また、一般的に、プレバイオティクス摂取で生じやすいとされる、おなかが緩くなるなどの症状はみられませんでした。このほか、ラクチュロースに関連する有害事象は認められず、安全性が確認されました。
4.まとめ
今回、500 mg という少量のラクチュロースの摂取でもビフィズス菌を増やす効果を確認し、腸内環境の改善に役立つ可能性が示されました。一方、従来の高用量は、お通じの改善効果がより得られやすいと考えています。お客様にとっては、ご自身の悩みや体質にあわせて、腸内環境を整えたい方は低用量から、お通じにお悩みの方は量を増やすなど、多様なラクチュロース用量から選択できるようになり、継続しやすい健康サポートの実現が期待されます。
当社は、乳児のおなかの中のビフィズス菌を増やすことを目的として、1960年に世界で初めてラクチュロースを配合した育児用ミルク「森永Gドライミルク」を発売しました。それ以来、60年以上にわたりラクチュロースの研究開発を継続し、様々な製品への応用を進めてまいりました。現在では、特定保健用食品や機能性表示食品などにも幅広く展開しております。今後もラクチュロースのさらなる価値を追求し、腸の健康やビフィズス菌の認知拡大を通じて、人々の健康に貢献する製品の開発に努めてまいります。
<参考情報>
※1 ラクチュロース
牛乳に含まれる乳糖を原料として作られる難消化性のオリゴ糖。大腸内のビフィズス菌を増やすほか、便通改善作用やミネラル吸収促進作用も報告されている。
※2 書誌情報
「Ultra-low-dose lactulose modulates the gut microbiota in healthy adults: a double-blind, randomized, placebo-controlled crossover trial」
Ryo Sakiyama, Seiya Miyashita, Manabu Nakano, Miyuki Tanaka,
Functional Foods in Health and Disease, 2025, 15(12): 907 –920
DOI: https://doi.org/10.31989/ffhd.v15i12.1838
※3 プレバイオティクス
腸内の有益な細菌(善玉菌:ビフィズス菌や乳酸菌など)に選択的に利用される難消化性の食品成分。善玉菌の増殖や活性を促すことで、様々な健康効果をもたらすことが報告されている。
※4 当社リリース
「ビフィズス菌がラクチュロースを利用する仕組みを解明」 2021年5月21日