習慣的な玄米食が高齢者の認知機能改善に寄与

東洋ライス株式会社のプレスリリース

東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター 瀧 靖之 教授
東洋ライス株式会社 代表取締役社長 雜賀 慶二

【発表のポイント】

  • 認知症のない高齢者を対象に、玄米摂取と白米摂取を比較する6か月間の介入試験を実施し、週4食という現実的な摂取頻度での効果を検証しました。

  • 玄米摂取群では遂行機能(注1)を評価するFAB(注2)の合計得点が有意に改善し、白米摂取群ではこのような改善はみられませんでした。

  • 本研究では、日常の主食の一部を玄米に置き換えるだけで高齢者の遂行機能を改善する可能性が示されました。

【概要】

東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターの瀧靖之教授らの研究グループは東洋ライス株式会社との共同研究により、玄米を週4食、6か月間摂取することにより、高齢者の遂行機能が改善することを明らかにしました。

本研究では、認知症や軽度認知障害のない60歳以上の高齢者56名(平均年齢約79歳)を対象に、玄米を摂取する群(30名)と白米を摂取する群(26名)に分け、いずれも施設で提供される主食として週4回・6か月間摂取してもらいました。

介入前後で認知機能検査を実施した結果、玄米群では遂行機能を評価するFABの合計得点が有意に増加し、白米群では同様の改善が認められませんでした。このことから、玄米を週4食という比較的少ない頻度で6か月間摂取することにより、高齢期の遂行機能を支える効果がある可能性が示されました。本研究成果は、学術誌Critical Public Healthに掲載されました(2025年12月11日付け)。

【詳細な説明】

研究の背景

日本をはじめとした先進国では平均寿命が伸びる一方で、高齢期の認知機能低下や認知症の増加が大きな社会課題となっています。なかでも、計画を立てる、状況に応じて行動を切り替える、注意を維持するなどの「遂行機能」の低下は、日常生活動作や要介護リスクに直結します。そのため、遂行機能を含む認知機能を日常生活の中で無理なく維持・向上させる方法が求められています。

玄米は、白米に比べて食物繊維やビタミン、ミネラル、γ-オリザノールなどの機能性成分を多く含み、動物実験では脳内のアミロイドβの減少や学習・記憶機能の改善など、認知機能に対する直接的・間接的な効果が示されてきました。しかし、人を対象とした研究はまだ少なく、特に認知症のない高齢者を対象に、現実的な摂取量・摂取頻度で効果を検証したデータは限られていました。

今回の取り組み

研究グループは、長期入所型の介護老人保健施設および通所介護施設の利用者のうち、60歳以上で認知症が疑われない高齢者を対象に、玄米の摂取が認知機能に与える影響を検証しました。認知症が疑われる人や重度の視聴覚障害がある人などは除外し、最終的に56名が解析対象となりました(玄米群30名、白米群26名)。参加者には、試験開始前に玄米と白米の両方を試食してもらい、自身の希望に基づいていずれかの群を選択してもらいました。その後、各施設で提供される主食として、それぞれの米を週4食、6か月間にわたり摂取してもらいました。米の量は1回あたり「お茶碗1杯程度」を目安とし、摂取頻度は施設職員が確認しました。その上で、介入前後で、2種類の認知機能検査(FAB(注2)とMMSE(注3))を実施し、その変化を検討しました。その結果、摂取した米の種類(玄米/白米)と時間(介入前/介入後)の交互作用を検討したところ、FAB合計得点ではこの交互作用が有意であり、玄米群でのみ得点の有意な上昇がみられました(中程度の効果量)。一方、MMSE合計得点については、群間・時間・交互作用ともに有意な差は認められませんでした。

今後の展開

今回の研究により、玄米を週4食・6か月間摂取するという、日常生活でも取り入れやすいレベルの習慣であっても、高齢者の遂行機能を支える可能性が示されました。今後は、高齢者の認知機能を維持・改善する食習慣として玄米食の社会実装が期待されます。

図1.

介入前後の玄米摂取群と白米摂取群のFAB得点の推移を表した図。玄米摂取群では介入前後で統計的に意味のある得点の増加が認められた一方で、白米摂取群では統計的に意味のある得点の変化は認められなかった。

【用語説明】

注1.遂行機能:

遂行機能(実行機能)とは、「計画を立てる」「必要な情報に注意を向ける」「状況に応じて行動を切り替える」「衝動を抑える」など、目標に向かって行動をコントロールするための高次の認知機能の総称です。買い物の段取りを考える、用事を忘れずにこなす、状況に応じて柔軟に対応するといった、日常生活の自立に深く関わる機能です。

注2.FAB:

Frontal Assessment Batteryの略。前頭葉機能(遂行機能)を簡便に評価するための神経心理検査です。6つの課題からなり、合計得点は 0~18 点で評価します。点数が高いほど前頭葉機能(遂行機能)が保たれていることを示します。

注3.MMSE:

Mini-Mental State Examinationの略。全般的な認知機能を評価する簡便な検査です。合計得点は0~30点で、認知症の有無や程度をスクリーニングする際に世界的によく用いられています。

【論文情報】

タイトル:「6か月間の脱ロウ玄米摂取が高齢者の認知機能を改善する:オープンラベル試験」

Consumption of dewaxed brown rice for a 6-month period improves cognitive function in older adults: An open-label trial

著者:髙橋芳雄*、高野 裕治、國分 圭介、西山 直希、雜賀 慶二、瀧靖之

*責任著者:東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター 髙橋芳雄講師

掲載誌:Critical Public Health

DOI:10.1080/09581596.2025.2598713

URL: https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/09581596.2025.2598713 

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