加熱と酸化が生む唯一無二のワイン体験と、再評価される“熟成する日本酒”の価値とは
日本酒造組合中央会のプレスリリース
ユネスコ無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」に関わる日本酒業界最大の団体である日本酒造組合中央会(以下、中央会)では、国内外に向けた日本酒および日本酒文化の魅力発信に取り組んでおります。
このたび、3月24日、中央会は、ポルトガル大使館、ポルトガル政府観光局、ポルトガル投資貿易振興庁、およびマデイラジャパン株式会社の協力のもと、日葡文化交流イベント「マデイラワインと熟成日本酒 セミナー&試飲会」を開催しました。本イベントでは、マデイラワインおよび日本酒 各10種に加え、大使公邸シェフによるポルトガル料理が提供され、日葡両国の酒文化と食文化が交差する場となりました。
中央会の山名副会長は、「日本酒の新たな価値を国内外に発信する機会として、本イベントが両国の酒文化理解の深化につながることを期待しています」と挨拶しました。
■大航海時代から続く“熟成文化”の接点
16世紀の大航海時代。ポルトガルが世界に先駆けて海洋進出し、赤道を越えて東方との交易をおこなう過程で偶然生まれたのが、加熱と酸化を経て完成する酒精強化ワイン「マデイラワイン」です。
ポルトガルは日本が交易を開始した最初のヨーロッパ国家であり、日本人が最初に飲んだワインはマデイラだったと言われます。また一方で日本酒を最初に飲んだ西洋人はポルトガル人だったと言われるように、ユーラシア大陸の両端に位置しながら、日葡両国には歴史的な深い縁があります。
近年、熟成酒への関心が高まる中、熟成日本酒とマデイラワインという二つの文化が、再び同じテーブルで出会う機会が生まれました。
■加熱と酸化が生む唯一無二のワイン体験
マデイラワインのセミナーでは、同ワイン最大の特徴である「加熱による酸化熟成」についてマデイラワインの輸入販売を行うマデイラジャパン・稗田千尋氏より解説が行われました。マデイラワインは、加熱と緩やかな酸化を組み合わせて熟成させる酒精強化ワインであり、この製法により安定した品質で長期間の熟成が可能なお酒です。
稗田氏からは 「マデイラワインは、あえて熱と空気にさらすことで熟成させるワインであり、すでに酸化が進んでいるため、開栓後も品質が安定している点が大きな特徴です」 と説明がありました。
また、黒ブドウ品種ティンタ・ネグラは酒精強化のタイミングによって甘口から辛口まで表現できること、白ブドウは品種ごとに味わいが規定されていることなど、マデイラ特有の設計思想も紹介されました。さらに、「通常ワインにとって劣化要因である“熱”と“空気”が品質を形成する要素となる」という点が強調されました。
■再評価される“熟成する日本酒”の価値
続く日本酒古酒セミナーでは、日本の酒情報館館長・今田周三が登壇し、日本酒の熟成文化の歴史と現代的価値について解説しました。「ポルトガルの食文化との相性に着目したことが、今回の企画の出発点」と語り、日本酒はかつて熟成文化を持っていたが、制度的背景により新酒を飲む文化に移行した経緯と、近年改めて熟成日本酒の価値が見直されていることが紹介されました。
熟成した日本酒については、色調は熟成と共に琥珀色へ変化、香りはカラメルや蜂蜜、スパイスなどが感じられ、味わいは滑らかで複雑になる傾向があるといった特徴が説明されました。さらに、 ペアリングについても甘口のものはデザートやチーズと相性が良い、濃熟なものは、中華・スパイシー料理との相性が良い、また淡熟な傾向のものはクリーム系の料理と合わせると良い、など、多様なペアリングの可能性が提示されました。
■マデイラ製法を応用した日本酒という挑戦
宮城県の日本酒の酒蔵である一ノ蔵の蔵元・鈴木整氏も来場し、マデイラワインの製法を応用した日本酒の取り組みが紹介されました。同蔵では、アルコール添加による発酵停止と、温泉の蒸気熱を活用した加温熟成を組み合わせることで、独自の熟成酒を開発しています。「ヨーロッパの醸造文化への敬意から、日本酒への応用を試みた」という思想のもと生まれたこの酒は、開栓後の安定性や、和食・洋食双方への適応力が特徴として紹介されました。
■食と酒の融合がもたらす新たな価値
会場では、大使公邸シェフによるポルトガル伝統料理が提供され、試飲と共に、ポルトガル料理とペアリングできる機会が提供され、参加者からは新たな発見として評価されました。
【関係者コメント】
■ Gilberto Jeronimo駐日ポルトガル大使 コメント
本日は、日本酒造組合中央会様より、数ある大使館の中から、当ポルトガル大使館を、セミナ-のパートナ-としてお選びいただきましたことに、感謝申し上げます。ポルトガルはマデイラワイン、ポートワインといった名だたる銘酒を擁し、日本酒と比べても決して劣ることはないと、自負しております。 この機会により、皆様がより日本酒の良さを再確認され、またポルトガルの歴史あるワイン、マデイラワインをより正しくご理解いただけますことは、大変有難く思っております。 また、今回大使公邸のシェフによります、私も毎日おいしくいただいておりますポルトガルの料理をご試食いただきますことは、大変貴重な機会でもありますし、また如何に日本酒とも良くあうか、実際にお試しいただきたくいい機会でもあります。マデイラワインも、大変美味で、日本酒とは熟成のレベルは違いますが、本日お集りの味のプロッフェショナルの皆様方に、その美味しさ、味わい深さを感じていただけましたら幸いです。 これからの日本酒造組合中央会様、マデイラジャパン様の益々のご発展と、本日の会の盛況を心より祈っております。
■ Miguel Garcia ポルトガル投資貿易振興庁 コメント
私自身、大変な日本酒好きで、各地の酒蔵を訪ねるほど、日本酒の魅力にはまっております。今回はマデイラワインとコラボレーションする特別な会、ということで、特別に大使公邸のシェフに、おつまみの提供を依頼しました。美味しいお酒には、美味しい料理が必ず必要で、よりお酒の味が引き立つことは、皆様もご存知のとおりです。この度本格的ポルトガル料理と日本酒をご試食いただき、いかによくあうか、ご賞味いただきたく思います。また、ポルトガルワインのプロモ-ションを担っております立場から、マデイラワインも、専門家による選りすぐりをご用意いたしました。その美味しさをじっくり味わっていただき、周りの方々にもお薦めいただけましたら、幸いです。 これからの日本酒造組合中央会様のご活動の更なる飛躍と、マデイラジャパン様の一層のご繁栄を、心より願っております。
■未来へと続く「熟成文化」の架け橋
異なる文化背景を持ちながらも、「熟成」という共通の価値によって結びつくマデイラワインと日本酒古酒。
本イベントは単なる試飲体験にとどまらず、歴史・技術・文化が交差する中で、新たな価値と可能性を提示する機会となりました。大航海時代に始まった日本とポルトガルの関係は、交易や文化交流を経て、現代において再び“酒文化”という形で新たな接点を生み出しています。
長い年月を経て完成する酒の魅力は、時代や国境を越えて人々をつなぎ、新たな発見と感動をもたらします。 今回の取り組みは、両国の伝統的な酒文化の再評価にとどまらず、今後の食文化・酒文化の発展に向けた新たな可能性を示すものとなりました。今後もこうした文化的価値の共有と発信を通じて、日本酒および世界の酒文化のさらなる発展と相互理解の深化が期待されます。
<参考>
文化交流イベント「マデイラワインと日本酒古酒」概要
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日時: |
2026年3月24日(火) |
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会場: |
ポルトガル大使館 |
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提供内容: |
マデイラワイン約10種、日本酒古酒 約10種、ポルトガル伝統料理(ポルトガル投資貿易振興庁協力) |
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プログラム: |
1.ポルトガル大使館による挨拶(駐日ポルトガル大使館次席・ティアゴ・ペネ-ド氏) 2.日本酒造組合中央会挨拶(日本酒造組合中央会副会長・山名規雄) 3.ポルトガルの紹介 (ポルトガル政府観光局 プロモーションマネージャー・高岡千津氏) 4.マデイラワインセミナー(マデイラジャパン株式会社 代表取締役・稗田千尋氏) 5.日本酒古酒セミナー(日本の酒情報館 館長・今田周三) 6.乾杯フォト&セッション 7.試飲・試食交流会 |
<日本酒造組合中央会について>
全国約1,600の日本の伝統ある酒類メーカー(日本酒、本格焼酎・泡盛、本みりん) が所属する日本酒業界最大の団体。酒類業界の安定と健全な発展を目的とし、1953年に設立。ユネスコ無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」により生み出される「國酒(こくしゅ)」である日本酒、本格焼酎・泡盛、本みりん等について魅力を広めることにより、世界の食文化の多様性に貢献し、国内外の需要拡大につなげる活動に取り組んでいます。
■公式HP: https://japansake.or.jp/sake/
<「清酒」と「日本酒」 呼称の違いについて>
「清酒」(Sake)とは、海外産も含め、米、米こうじ及び水を主な原料として発酵させてこしたものを広く言います。「清酒」のうち、 「日本酒」(Nihonshu / Japanese Sake)とは、原料の米に日本産米を用い、日本国内で醸造したもののみを言い、こうした「日本酒」という呼称は地理的表示(GI)として指定・保護されています。
※海外産米を用い、又は海外で醸造した「清酒」、「SAKE」のことを「日本酒」と表記することは誤りとなります。