株式会社獺祭のプレスリリース
株式会社獺祭(本社:山口県岩国市、以下、獺祭)と三菱重工業株式会社(本社:東京都千代田区、以下、三菱重工)は、月面での清酒製造を目指す「獺祭MOONプロジェクト」の第一弾ミッションを完遂しました。本ミッションは、獺祭と三菱重工が共同開発した専用の醸造装置と清酒の原材料を国際宇宙ステーション(ISS)へ打上げ、ISS「きぼう」日本実験棟のJAXAの実験装置内部で月面重力を模擬した環境において、人類史上初となる清酒のアルコール発酵過程を確認することに成功しました。ISS「きぼう」船内で発酵を終えたもろみは、地球へ帰還し、今年3月に獺祭の本社蔵にて清酒へ仕上げられ、予定していた「獺祭MOONプロジェクト」第一弾ミッションは全て完了しました。
ISSから帰還した醸造装置(左)と完成した宇宙醸造清酒(右)
◆本ミッションの成果
人類初となる地球外での清酒醸造の達成:ISS「きぼう」船内での醸造試験により得られたもろみを、地上で分析した結果、アルコール度数が12%に到達していることを確認し、月面重力の環境下でも地上と同様の製造プロセスで清酒製造が可能であることを実験的に証明しました。一方で、軌道上のデータでは、発酵動態が地上に比べて緩慢になる事が確認され、重力条件が発酵速度に影響を与えることが示唆されました。その詳細については今後研究を予定しています。
宇宙用醸造装置の開発:今回三菱重工が開発・製作した清酒醸造装置は、月面重力を模擬した環境下にて適切に動作し、攪拌機能により試料の発酵を促しつつ温度・アルコール濃度等を各種センサで確認することができました。
獺祭MOON-宇宙醸造-の完成:地球へ帰還した宇宙醸造のもろみ約260gは、獺祭の本社蔵で搾られ、清酒116mlが仕上がりました。獺祭は、得られた清酒のうち100mlをチタン製ボトルに詰めて、1億1千万円(税込)の価格で、挑戦の証として販売しました。売上金は、日本の宇宙開発に寄付する予定です。
今後の宇宙産業における発酵技術への応用:本ミッションで得られた酒粕は、東北大学東谷研究室の協力のもと精密な成分解析を実施し、宇宙空間における酵母の遺伝的変化や発酵食品の地上製造との差異を検証し、今後の宇宙産業の発展に役立てます。
◆獺祭MOONプロジェクトと本ミッションの概要について
「獺祭MOONプロジェクト」は、将来の月面生活におけるQOL(Quality of Life:生活の質)向上を目的とした、月面での酒蔵建造と獺祭の醸造を目指す取り組みです。本ミッションはその第一段階として、獺祭と三菱重工がJAXAのきぼう有償利用制度を活用し、ISS「きぼう」日本実験棟の月面重力模擬環境下にて、宇宙空間での清酒製造技術の概念実証を目的とした試験を実施しました。本ミッションでは清酒の原材料と専用の醸造装置をISS「きぼう」日本実験棟へ輸送し、2週間にわたって宇宙空間での発酵現象を確認しました。
過去リンク: https://dassai.com/news/info/007297.html
◆ミッション経過
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2021年 |
名古屋商工会議所での講演会を機に、“将来、人類が月面に移住するならば、月でも酒造りをしたい”というプロジェクトコンセプトが創案される。 |
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2024年 |
獺祭MOONプロジェクトが始動する。 |
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2025年10月26日 |
国産ロケット、H3ロケット7号機、国産の新型宇宙ステーション補給機、HTV-X1号機を使用して、醸造装置と清酒原材料が種子島宇宙センターよりISSへと輸送される。 |
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2025年11月25日 |
油井 亀美也宇宙飛行士担当のもと、ISS「きぼう」船内にて醸造試験が開始される。 |
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2025年12月8日 |
2週間の試験期間を終え、サンプルがISS内の冷凍庫へと移される。 |
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2026年2月27日 |
サンプルがISSから地球へと帰還し、米国ロサンゼルスにて回収する。 |
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2026年3月13日 |
回収サンプルが獺祭本社蔵に到着する。 |
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2026年3月24日 |
帰還したもろみをもとに、獺祭MOON-宇宙醸造-が完成する。 |
◆オールジャパンを掲げた挑戦
本ミッションのもう一つのテーマとして“日本の技術力によってミッションを遂行する”という目標を掲げておりました。宇宙実験やISS「きぼう」の利用については、JAXAのきぼう有償利用制度のもと、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、有人宇宙システム株式会社(JAMSS)、Space BD株式会社、株式会社DigitalBlastによる技術・運用面の支援を受けました。また種子島からISSへと輸送する機体には国産のH3ロケットと国産の新型宇宙ステーション補給機のHTV-X1号機を使用し、軌道上での作業も日本人宇宙飛行士が担当、ミッション全体を通して日本の技術が中核を担いました。
また、プロジェクトの策定段階では高砂電気工業株式会社、醸造装置の開発・製作では愛知県(あいち産業科学技術総合センター)、株式会社インタフェース、有限会社工房大倉、原材料の加工には株式会社サタケ、ミッションロゴのデザインは漫画「宇宙兄弟」作者の小山宙哉先生、帰還品の輸送には日本通運株式会社、日本航空株式会社(JAL)を中心に多くの日本企業に協力頂きました。もちろん国際的な協力無くして本ミッションは成し得ておりませんが、本ミッションの中心には必ず日本企業・日本機関が携わり、ミッションを成功へと導いてくださいました。本ミッションの完遂をもって、協力支援頂いた企業・機関の皆様にはこの場を借りて感謝を申し上げると同時に、宇宙開発における日本の存在感を世界へ提示します。
私共が描く「月面でも人々が明るく暮らす未来」の実現にも、日本の技術力が牽引して導いてゆく事を信じています。