meijiのプレスリリース
糖・脂質代謝改善効果をもつ明治保有の乳酸菌 「Lactiplantibacillus plantarum OLL2712」の抗炎症作用に関わる成分を特定 ~菌体由来MGDGと乳由来GlcCerが免疫細胞に働きかける仕組みを解明~ 日本乳酸菌学会2026年度大会にて発表
明治ホールディングス株式会社(代表取締役社長 CEO:松田 克也)と株式会社 明治(代表取締役社長:八尾 文二郎)は、大阪大学 微生物病研究所 山崎 晶教授との共同研究で、乳酸菌「Lactiplantibacillus plantarum(ラクチプランチバチルス・プランタラム)OLL2712」(以下、OLL2712株)が樹状細胞株※1に働きかけ、抗炎症性物質インターロイキン10(IL-10)の産生を促す機能性成分を特定しました。本研究では、OLL2712株自体が持つ糖脂質「MGDG(モノグルコシルジアシルグリセロール)」が主要な作用成分であることに加え、乳培地での培養によって菌体に保持される乳由来成分「GlcCer(グルコシルセラミド)」がその作用をさらに高めることを明らかにしました。
本研究成果は2026年7月24日~26日に開催された日本乳酸菌学会2026年度大会にて発表しました。なお、同成果は2026年5月30日に国際学術誌の「Journal of Dairy Science」にオンライン先行公開版として掲載されています。
(参考URL:https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(26)02889-4/fulltext)
※1 樹状細胞とは、外来異物等の情報を他の免疫細胞に伝えて適切な免疫応答を誘導する白血球の一種です。
【研究成果の概要】
OLL2712株は、樹状細胞の受容体「TLR2※2」と「Mincle※3」を協調的に活性化し、抗炎症性物質IL-10の産生を促します※4。本研究では、Mincleを刺激する具体的な成分を明らかにしました。
・OLL2712株が持つ糖脂質「MGDG」が、Mincleを刺激する主要成分であることを特定。
・MGDGは、TLR2への刺激と相乗的に作用し、IL-10産生を強力に促進することを確認。
・乳培地での培養で菌体が保持する乳由来成分「GlcCer」もMincleを刺激し、MGDGの作用をさらに増強することを発見。
※2,3 細菌などがもつ特定の構造を認識する受容体の一種。TLR2とMincleは異なる物質を認識します。
※4 出典:Sakabe et al., Microbiol Spectr, 13(3): e0119624, 2025
【研究成果の活用】
OLL2712株の健康機能を支える実体として、免疫細胞の受容体Mincleを刺激する糖脂質を特定したことで、本株の有用性をより科学的に裏付けることができました。さらに本研究では、培養条件によって菌体に保持される成分が免疫細胞への作用を増強する可能性も示されました。
今後もOLL2712株の機能発現メカニズムの解明を進めることで、糖・脂質代謝改善や健康維持に役立つ商品開発へ活用してまいります。
図 OLL2712株の樹状細胞におけるIL-10産生誘導機序
【研究の目的】
OLL2712株は、免疫細胞から抗炎症性物質IL-10を強く産生させる能力を指標として選抜された乳酸菌です。これまでの研究により、OLL2712株を含むヨーグルトには慢性炎症を抑制し、糖・脂質代謝を改善する効果が報告されています※5-7。
また近年、OLL2712株によるIL-10産生にはTLR2およびMincleの協調的な活性化が重要であることが明らかになりましたが、Mincleを刺激する物質は不明でした。そこで本研究では、OLL2712株に含まれるMincle刺激因子を特定することを目的としました。
※5 出典:Toshimitsu et al., Nutrients, 12(2):374, 2020
※6 出典:Toshimitsu et al., Curr Dev Nutr, 5(2):nzab006, 2021
※7 出典:Toshimitsu et al., Diabetes Obes Metab, 26(6): 2239-2247, 2024
発表内容
【タイトル】
高いIL-10産生誘導能を有するLactiplantibacillus plantarum OLL2712 のMincle刺激性糖脂質の解明
【方法】
OLL2712株から脂質成分を抽出し、HPLCおよび質量分析を用いてMincle刺激活性を有する成分を解析しました。また、Mincle活性化検出細胞および樹状細胞を用いて、各成分のMincle刺激活性やIL-10産生能を評価しました。さらに、乳培地培養菌体についても同様の解析を行いました。
【結果】
・OLL2712株由来脂質画分からMincle刺激活性をもつ糖脂質MGDGを同定した。
・MGDG単独ではIL-10産生誘導作用は限定的だったが、TLR2刺激と組み合わせることで強いIL-10産生が認められた。
・乳培地培養菌体ではMGDGに加えてGlcCerも検出され、Mincle刺激活性を示した。
・GlcCerもMGDGとともにIL-10産生をさらに増強した。
・乳培地培養菌体でIL-10産生能が高い理由の一端として、GlcCerの寄与が示唆された。
図1 OLL2712に含まれる糖脂質MGDGは、免疫細胞の受容体Mincleを刺激し、抗炎症性物質IL-10の産生を促進する。(A)MGDGが、検討した濃度範囲で免疫受容体Mincleを活性化することが示された。(B)樹状細胞株をMincleとTLR2リガンドで同時に刺激すると、抗炎症性物質IL-10の産生量が大きく増加した(**対照に対して有意差あり)。
図2 乳由来GlcCerはMGDGとともにIL-10産生をさらに増強する。TLR2リガンドおよびMGDGによる刺激条件下でGlcCerを添加すると、IL-10産生量はさらに増加した。このことから、GlcCerはMGDGと協調してIL-10産生を促進することが示された(a-c 異符号間に有意差あり)。
【考察】
本研究により、OLL2712株の抗炎症作用を支えるMincle刺激因子としてMGDGを特定しました。また、乳培地由来GlcCerがその作用をさらに高めることも明らかになりました。これらの知見は、OLL2712株が免疫細胞に働きかけてIL-10産生を促進する仕組みを分子レベルで説明するものであり、これまで確認されてきた糖・脂質代謝改善作用の理解を深める成果と考えられます。