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「仕入れる」から、「共に育てる」へ 外食企業の一次産業参入から見る、安定調達の新潮流 | グルメプレス

「仕入れる」から、「共に育てる」へ 外食企業の一次産業参入から見る、安定調達の新潮流

くら寿司株式会社のプレスリリース

くら寿司 ニュースレター2026年 10月号

「仕入れる」から、「共に育てる」へ 外食企業の一次産業参入から見る、安定調達の新潮流

いつでも適正価格で仕入れ可能な環境は崩壊

 円安や原材料価格の高騰、海外事業者との買い付け競争などにより、外食企業を取り巻く調達環境は大きく変化しており、必要な食材を市場から仕入れるだけでは、量・価格・品質を安定させることが難しくなりつつあります。原材料の安定調達は、外食産業にとってまさに経営の根幹に関わる重要な課題。農林水産省も、国際情勢や気候変動による不作や不漁、円安の進行などを背景に、輸入原材料に依存するリスクを強く懸念し、食品事業者と国内の産地の連携強化を最重要施策として位置付けています。

 こうした中、「いつものおいしさ」を届ける外食企業の間では、生産者や産地との連携を深め、調達のさらに上流である「川上」=生産現場に参入するムーブメントが広がっています。

本ニュースレターは以下の情報をご紹介

①食材高騰や不漁を背景に、外食企業の「生産現場」への参入が加速

②くら寿司子会社は養殖魚の出荷量を2022年度比約14倍の2,000トンへ

③くら寿司の水産子会社責任者、パートナーの水産会社代表が語る「水産業の未来」

④AIを活用した「漁業の働き方改革」、生産者のコスト・労働・経営リスクも軽減

■食材調達を取り巻く四つの課題

円安による輸入価格上昇などを背景に 多くの食品で値上げが進む

コスト上昇|円安や原材料価格の高騰による仕入れ価格の上昇

供給の不安定化|気候変動による水産物の不漁や農産物の不作

買い付け競争|世界的な日本食ブームなどを背景とした食材需要の拡大

生産者の担い手不足|農業・漁業など生産現場の人手不足・高齢化

飲食店の94.6%が仕入れ価格の上昇に直面

 帝国データバンクの「仕入れ単価に対する企業の動向調査(2025年3月)」によると、企業の75.5%が仕入れ単価の上昇に直面し、業種別では、「飲食店」が94.6%と最も高い割合になっています。企業からは「売り上げ自体は悪くないが、原価の高騰や人件費などの販管費が重い」などの声が聞かれたそうです。

 仕入れ価格の上昇をそのまま販売価格へ転嫁することは難しい一方で、消費者の品質や安全性への期待は高まっています。企業はそのはざまで、新たな選択を迫られています。

調達から生産へ、広がる外食企業の取り組み

 「食材を安定して調達したい」「生産現場が抱える人手不足や担い手不足にも向き合わなければならない」。食に携わるさまざまな外食企業が生き残りを懸けて挑戦しているのが、新たな調達体制の構築です。契約農家との連携をはじめ、自社農場の運営、養殖事業への参入まで、各社が抱える課題や目指す方向性によって参入のスタイルもさまざま。外食企業が見渡す領域は、「店舗」から「生産現場」にまで広がっています。

○サイゼリヤ→農地取得+契約農家との生産体制

 2000年に福島県白河高原で280ヘクタール(東京ドーム約62個分)の土地を取得。レタスの苗づくりを自社で行い、契約農家へ配布するなど、生産段階から安定調達に取り組んでいる。

○モスフードサービス→全国7社の「モスファーム」

 2006年から地域の生産者と共同で農業法人を設立。現在は北海道から熊本まで7社のモスファームを展開しており、2025年度は全国133産地から計7,458トンの生野菜を調達した。

○エー・ピーホールディングス→自社養鶏+生販直結

 宮崎での地鶏生産に加え、2011年には北海道新得町に自社養鶏場を設立。地鶏のふ化から飼育、加工、出荷までを一貫して手がけるなど、生産・流通・販売まで深く関与する独自の「生販直結」モデルを展開している。

漁業生産量はピーク時の3分の1以下、担い手も減少

 日本の漁業・養殖業生産量は、1984年の1,282万トンをピークに減少し、2025年には357万トン余りと3分の1以下にまで落ち込んでいます。背景には、海洋環境や水産資源の変化に加え、漁業就業者や漁船の減少による生産体制の弱体化などがあります。農林水産省の統計では、 2025年の漁業就業者数は前年比で約5,000人少ない約11万人。20年前から半減するなど、漁業従事者は減少の一途をたどっているのです。

 その一方で、欧米の健康志向やアジア地域の経済発展を背景に、世界的に水産物の需要が拡大。和食を提供する外食企業にとっては海外進出の追い風となる一方、海外事業者との原材料の調達競争が激しさを増しています。特に人気のハマチ・ブリ類については輸出比率が高まっていて、日本国内で「お金を出しても買いにくい」状況がすでに起きています。

 新鮮で多種多様な魚が取れる日本だからこそ、独自に発展してきた寿司文化。「今も未来もずっと、リーズナブルで高品質なお寿司をご提供したい」と考えるくら寿司にとって、商いの源流である水産業への関与は必然でした。

 くら寿司では、2010年より産地直送の「天然魚プロジェクト」をはじめとする「漁業創生の取り組み」をスタート。現在では120以上の漁協・漁港様と直接取引を行っています。また、漁業従事者様の収入の安定化につながるよう、定置網にかかった国産天然魚を年間契約で丸ごと買い取る「一船買い」や、仕入れた国産魚を全て活用する「さかな100%プロジェクト」など、積極的に海洋資源の保護と国内漁業の活性化に取り組んでいます。

 2021年には、回転寿司チェーン初となる水産会社「KURAおさかなファーム」を設立し、日本が育んだ豊かな魚食文化を守るため、さまざまなアクションを起こしています。

生産から販売まで一気通貫で行う「KURAおさかなファーム」

 水産資源の減少、漁業従事者の高齢化と担い手不足、世界的な魚食需要の高まりという、複合的な課題と向き合うため、2021年に誕生した「KURAおさかなファーム」は、三つを事業の柱に取り組みを進めています。

 こうした取り組みの拡大に伴い、養殖魚の出荷数量も年々増加しています。2期(2022年11月~2023年10月)の約140トンから、3年後には約1,000トンまで拡大。7期(2027年11月~2028年10月)には約2,000トンの出荷を計画しており、2期と比較すると約14倍の規模となる見込みです。

「自社養殖」…漁業権を取得し、和歌山県由良町に約40基のいけすを運用。オーガニックはまちを中心に付加価値の高い魚種を育成しており、2027年度中に約100基まで増やす計画。

「委託養殖」…担い手不足や労働効率の改善のため、AI・IoT技術で給餌を最適化するスマート養殖を推進。愛媛県宇和島市をはじめ、長崎県、鹿児島県、大分県、高知県、北海道などで、計200基を超えるいけすを運用。

「卸売」…自社店舗や全国のスーパーへの卸売、海外への出荷に加え、漁協との提携による天然魚の販路開拓も推進。

川上から川下までをつなぐ新たなサプライチェーンを構築「KURAおさかなファーム株式会社」上席執行役員 統括本部長 清水雅彦にインタビュー

◇ハマチやサバなど高付加価値魚種で養殖魚の可能性を拡大

◇タイパ&コスパをかなえるスマート養殖で後継者が増加

◇安定した生産、供給、販路で新たな水産業モデルを提示

Q.現在どのような魚種の養殖に取り組んでいますか

A.私たちの養殖場では、日本で初めて国際的基準のオーガニックフィッシュ認証を取得した「オーガニックはまち」を中心に育てています。2026年5月には、愛媛県宇和島市の生産者様に委託し養殖した大型の生サバをくら寿司で販売しました。サバは夏の高水温を生き抜くことが難しく、1年ほどかけて250〜300gに育てて出荷するのが一般的です。対してくら寿司のサバは、AIの活用で給餌を適切にコントロールすることで猛暑を2回乗り越え、約2年かけて回転寿司のネタにふさわしい、しっかりと脂ののった700g以上のサイズに育ちました。また、鮮度が落ちやすいサバは、一般的に生の状態で回転寿司にて販売されることはほぼないですが、お客様においしい生サバを召し上がっていただきたく、物流や加工方法を整え、販売の実現に至りました。

 気候変動による水温などの変化に耐え得る種苗を見いだし、ハマチ、サバに続く高付加価値魚種の養殖に挑戦していきます。

生サバ

Q.一次産業へ参入するに当たり、漁業権の取得や漁協・漁港との関係はどうクリアしたのですか

A.15年以上、漁業創生の取り組みを推進してきた中で、バイヤーの地道な産地訪問、密なコミュニケーションで信頼関係を構築しました。そういったつながりを持つ中で、漁業協同組合から組合員としての参画のお話をいただき、組合に入ることができました。組合に入っているからこそ、漁業権を取得して養殖事業を行い、競りにも参加することができています。

 さらに、委託養殖に関しても、単なる委託ではなく、スマート給餌機や餌、稚魚をわれわれがご提供し、育ててもらった魚を全量買い取ることで、安心して養殖だけに専念いただける環境になるよう意識しています。

 われわれの思いに共感いただいた生産者様と一緒に取り組んでおり、日頃から、課題を聞き出し、何度も話し合い、解決策を一緒に探っていくことで、持続可能な漁業を構築していければと考えています。

Q.スマート養殖に関して、生産者の方々の反応はいかがですか

A.1日に何度も餌やりが必要な魚種もありますし、いけすが数十基あれば時間も労力もかかる中で、「魚が餌を食べたい時、食べたい量をAIが学習して自動給餌するスマート養殖のおかげで、毎日海に出なければならない制約から解放されて、休日に家族と出かける余裕ができました」といった声をいただくと、たいへん嬉しいです。また、一般的に、養殖にかかるコストのうち、約8割が餌代といわれている中で、スマート養殖により、餌代を約2割削減でき、生産者の方からも魚が大きく育つので生産性が非常に高まったと喜んでいただいています。

Q.これまでを振り返り、印象的な出来事は

A.一番嬉しいと感じるのは、委託養殖を展開する生産地で私たちの取り組みに共感いただいた新規就業者が増えつつあることです。「安定経営を見込める。新しい養殖にチャレンジしたい」と後継者のUターンが増えた、関心を持った大学生が養殖企業に就職した、といった話を聞くと、各地に出向き、地道に行ってきた活動が実を結び始めていると感じます。

Q.これから「KURAおさかなファーム」が向かう目的地とは

A.くら寿司の人気魚種であるハマチやマダイに関して、2025年までは全店舗で取り扱う約3分の1が「KURAおさかなファーム」からの供給でしたが、2028年をめどに約半分の供給を目指して生産しています。とはいっても、私たちが川上の水産業に参入した意義は、単に自社の仕入れ安定だけにとどまりません。生産者様にとっては、販路の安定や経営負担の軽減、新規投資への後押しとなりますし、お客様にとっては、これまで一部の地域でしか食べられなかった魚や高付加価値な養殖魚を身近な店舗でお楽しみいただける機会の創出につながります。共存共栄モデルを世界のベンチマークにしていきたいと考えています。

くら寿司でも人気!みかんブリを共に世に送り出した「株式会社宇和島プロジェクト」 代表取締役社長 木和田権一氏にインタビュー

 もともと、宇和島漁協青年部の有志が「自分たちが取った魚を自分たちで販売して宇和島の水産業を盛り上げよう」と始めた活動をルーツに持つ「宇和島プロジェクト」。2010年に法人化し、現在は宇和海の水産物の仕入れから加工、販売、商品開発、海外輸出までを手がけています。愛媛県産のみかんの皮などを魚の餌に活用したフルーティーフィッシュの代表格・みかんブリは、「KURAおさかなファーム」と委託契約を結ぶ「宇和島プロジェクト」が育て、直接、くら寿司の店舗に届けられています。

◇生産から販売までを一気通貫したいという理念が合致

◇賛否が分かれたみかんブリがくら寿司に並んだ理由

◇餌・稚魚の提供と全量買い取りで経営リスク軽減

Q.宇和島プロジェクトとくら寿司との出会いについて教えてください

A.2010年、「宇和島プロジェクト」の創業とくら寿司さんが漁業創生への取り組みに着手されたのがくしくも同じタイミング。くら寿司のご担当者が「できるだけ生産者様から直接、良い魚を仕入れて、お客様にご提供したい」という熱意を持って、宇和島の浜を回っておられたんです。それは、「生産から販売までを統合し、水産業に関わる全ての人が豊かになる新しいモデルを作りたい」と願う私たちとまったく同じ理念でした。まさに会うべくして会った、そんな気がしています。

Q.宇和島産の柑橘が香るみかんブリとは

A.国内屈指の養殖魚の生産地である愛媛県の宇和島は、みかんの一大生産地でもあります。ジュースの製造などで廃棄される大量のみかんの皮には、香り成分のリモネンやビタミンCが多く含まれています。これを餌に混ぜて、ブリの養殖に有効活用しようと生まれたのがみかんブリです。ほのかに柑橘の香りがするブリには賛否両論があり、私たちとお付き合いがある企業100社にアンケートをお願いしたところ、ほとんどの水産業者は「違和感がある」という意見でした。その中で唯一、くら寿司さんが「すばらしい商品じゃないですか!」と興味を持ってくださり2012年に商品化が実現。そこからみかん鯛も誕生し、順調に出荷数を増やしています。2026年9〜10月にかけては台湾のくら寿司6店舗限定でみかんブリとみかん鯛を初披露し、世界で通用する手応えを感じました。

Q.委託養殖によって宇和島にどんな変化が生まれましたか

A.養殖のいけすというのは、一基1,500万~2,000万円を投資して海に浮かべているんですね。そのほか、人件費や稚魚代、餌代、設備代、電気代など全て含めると、一人の生産者が数億円の負担を抱え、無事に出荷するまで入金が見込めないのがほとんどです。気候変動もある中で、若い世代がリスクを感じて、水産業を避けるのも当たり前です。私たちだけではなかなか解消できなかった不安を聞き入れ、払拭してくださったのが「KURAおさかなファーム」の委託養殖。スマート給餌機や餌、稚魚は提供され、育った魚は全量買い取ってもらえるという安心感によって、後継者の若い世代も夢が持てるようになりました。

Q.くら寿司との強力タッグで手繰り寄せたい、水産業の未来とは

A.私たち生産者とくら寿司さんが直接つながり、どんなことも相談しながら、生産から物流、販売まで一気通貫の仕組みを組み立てていけたことは画期的でした。これからも宇和島という世界一の養殖の産地を絶やさないために、センサーやAIといった新しい技術を使って、世界のどこにもない養殖システムを作り上げていきたいですね。

 喜びを共有するだけではなく、苦しみも一緒に乗り越えてくださる。真っ黒に日焼けするまで一緒に体を動かしてくださるくら寿司さんと共に、宇和島の大事な恵みを守っていきたいと思います。

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