カゴメ株式会社のプレスリリース
~日常的な食事条件においても、同量の糖質を含む糖液と比較して食後早期の上昇が小さい可能性~
カゴメ株式会社(代表取締役社長:奥谷晴信 本社:愛知県名古屋市)は、これまで当社野菜飲料を食事の前に摂取することで、食後血糖値の上昇が抑えられる可能性を報告してきました。※
今回、より日常的な食事条件における野菜飲料の影響を検証するため、野菜飲料摂取後すぐに白米を摂取する試験を実施し、持続血糖測定装置を用いて食後の血糖値の変動を詳細に評価しました。
その結果、野菜飲料と同程度の糖質量を含んだ糖液を食事の最初に摂取した場合では、水および野菜飲料を食前に摂取した場合と比較して食後血糖指標が統計学的に有意に高くなることが観察されました。一方、野菜飲料を食前に摂取した場合においては、水を食前に摂取した場合と比較して複数の食後血糖指標に統計学的な差が認められないことを明らかにしました。本研究成果は、日本栄養・食糧学会誌に掲載され、2026年10月28日にJ-STAGE上で公開されました。
※<第18回 日本病態栄養学会で発表予定>野菜ジュースを食前に飲むことで、メタボの原因の一つである食後の血糖値の上昇が抑えられることをヒト試験で確認~食事中に野菜ジュースを飲んだ場合は食後の血糖値が速やかに低下~https://www.kagome.co.jp/company/news/2015/002108.html
■ 発表のポイント
・健康な成人を対象に、対照食(水+白米)、野菜飲料食(野菜飲料+白米)、糖液食(野菜飲料と同量の糖質を含んだ糖液+白米)を摂取し、それぞれ摂取後180分までの血糖指標を比較しました。
・その結果、糖液食を摂取した場合では、対照食および野菜飲料食と比較して複数の食後血糖指標が有意に高かった一方で、野菜飲料食においては対照食と比較して食後血糖指標に統計学的な差は認められませんでした。
・野菜飲料過去研究で報告してきた知見について、より日常的な食事条件および持続血糖測定装置による詳細な評価を行った結果、野菜飲料を食事の最初に摂取した場合、同量の糖質を含む糖液と比較して食後血糖上昇が抑制される可能性が示されました。
■ 研究の背景
野菜を食事の最初に摂取する“ベジタブルファースト”は、摂取する食品を大きく変えることなく食後血糖値の上昇を抑制できることが報告されています1)。また、当社においても、これまで野菜飲料を食事前に摂取することで食後血糖値の上昇が抑えられる可能性について報告してきました2,3)。今回はその知見をより日常的な食事条件で野菜飲料の摂取が食後血糖値へ及ぼす影響について、連続的な血糖値を測定する装置を用いて詳細に検証することを目的とし、白米の摂取直前に水、野菜飲料と同量の糖質を含む糖液を摂取するクロスオーバー比較試験を行いました。
■ 研究方法
研究対象者は、2023年11月から2024年2月にカゴメ株式会社の総合研究所に勤務する20歳以上の従業員から募集し、糖尿病の治療中である者や試験食品に対するアレルギーがある者、などの本試験への参加が適さない者を除き、試験参加への同意が得られた者に対して実施しました。
試験食は、①水200 mLと白米150 gを摂取する“対照食”、②野菜飲料(「野菜一日これ一本」)200 mLと白米150 gを摂取する“野菜飲料食”、③「野菜一日これ一本」200 mLに含まれる糖質13.2 gと同量のグラニュー糖を水に溶かした糖液200 mLと白米150 gを摂取する“糖液食”の3種類としました。
研究対象者には、3種類の試験食をそれぞれ2回、計6回摂取してもらいました。最初に摂取する試験食はランダムに指定したうえで、対照食、野菜飲料食、糖液食の順序で2サイクルの摂取を行いました。いずれの条件においても、午前8時に飲料(水、野菜飲料、糖液)を全量摂取した後、間を空けずに白米を摂取していただきました。また、摂取前日の21時以降は水または白湯以外の飲食を控えていただき、試験当日の条件をできるだけ統一しました。試験食摂取から3時間後までは水または白湯200 mL以外の飲食を控え、身体活動についても座位または静かな立ち仕事程度に制限しました。
試験期間中は、研究対象者に持続血糖測定装置FreeStyle Libre™(アボット社)を装着していただき、試験食摂取180分後までの間質中グルコース値を測定しました。間質中グルコース値は血糖値の変動を反映する指標であり、FreeStyle Libre™ではこれを継続的に測定することができます4)。
得られたデータから、食後のグルコース値の最大変化量(ΔCmax)、食後のグルコース値の推移から算出した上昇曲線下面積(incremental area under the curve: IAUC)、各時点における食前からのグルコース値の変化量(Δグルコース値)、グルコース値がピークに達するまでの時間(Tmax)、およびグルコース値の上昇速度の指標となるΔCmax/Tmaxを算出し、3種類の試験食間で比較しました。なお、個人内の日間変動の影響を軽減するために、各試験食における2回の測定値の平均値を用いて解析を行いました。(図1)
図1 試験の概要
■ 研究の結果
試験は30名の方から参加への同意をいただき、そのうち規定通り試験を完遂した26名を対象として解析を実施しました。
まず、試験食を摂取する直前のグルコース値を確認したところ、3つの試験食間で統計学的な差は認められませんでした(平均値±標準偏差 = 対照食: 102.5±11.4 mg/dL, 野菜飲料食: 101.8±11.1 mg/dL, 糖液食: 103.3±12.2 mg/dL)。
次に、試験食を摂取した後の食後血糖指標を比較しました。その結果、糖液食では対照食および野菜飲料食と比較して食後早期の血糖上昇を示す複数の指標(摂取後60分までのIAUC、食後15分および30分のΔグルコース値、ΔCmax/Tmax)が有意に高値を示しました(いずれもp < 0.05)。一方、野菜飲料食と対照食との間ではいずれの指標においても統計学的な差は認められませんでした(図2, 3)。
図2 各群の15分ごとのΔグルコース値(平均値)
図3 各試験食群の食後血糖指標(平均値)
野菜飲料食と糖液食に含まれる糖質は同じであったにもかわらず、食後早期のグルコース上昇が野菜飲料食では抑制されたことから、食事の最初に野菜飲料を摂取した場合には、同量の糖質を糖液として摂取した場合と比較して、食後早期のグルコース上昇が小さくなる可能性が示されました。
また、野菜飲料食では、飲料由来の糖質13.2 gが加わっているにもかかわらず、水と白米を摂取した対照食との間で食後グルコース指標に統計学的な差は認められませんでした。この結果は、同じ食事のタイミングかつ食事の糖質を減らさない、という日常的に実践しやすい食事条件下においても、同量の糖質を含む飲料と比較して食後血糖指標の上昇を抑えられる可能性が示唆されました。
上記のようなグルコース応答の違いが生じたメカニズムについては、本研究では検討していません。これまでのヒト介入研究では、食品に含まれる食物繊維や有機酸が糖質の吸収速度に影響することや、植物由来ポリフェノールを含む食品・飲料の摂取によって食後早期の血糖応答が低下することが報告されています5,6)。したがって、野菜飲料に含まれる糖質以外の成分が今回の結果に寄与した可能性も考えられますが、そのメカニズムについては今後さらなる検討が必要です。
■ 掲載論文情報
論文名: 野菜飲料ファーストによる食後血糖応答: 水、野菜飲料および糖液とのクロスオーバー比較試験
掲載誌: 日本栄養・食糧学会誌
著者: 吉田悠、牛田悠介、関谷美保子、井上拓郎、鈴木重德
DOI: https://doi.org/10.4327/jsnfs.79.389
■ 参考文献
1)Kanamoto I, Inoue Y, Moriuchi T, Yamada Y, Imura H, Sato S (2010) Effect of Differences in Low Glycemic Index Food Intake Sequence on Plasma Glucose Profile. Journal of the Japan Diabetic Society 53: 96-101.
2)Kasuya N, Inoue N, Inoue Y, Murata I, Kanamoto I (2019) Effect of vegetable juice consumption prior to eating rice on postprandial blood glucose and insulin levels. Exp Ther Med 18: 3817-22.
3)吉田和敬, 砂堀論, 菅沼大行 (2018) 米飯摂取前の野菜飲料または野菜サラダの摂取が食後血糖値に及ぼす影響. 日本病態栄養学会誌 21: 487-494.
4)Bailey T, BodeBW, Christiansen MP, Klaff LJ, Alva S (2015) The Performance and Usability of a Factory-Calibrated Flash Glucose Monitoring System. Diabetes Technol Ther 17: 787-94.
5)Giuntini EB, Sardá FAH, de Menezes EW (2022) The Effects of Soluble Dietary Fibers on Glycemic Response: An Overview and Futures Perspectives. Foods 11: 3934.
6)Shahidi F, Danielski R (2024) Review on the Role of Polyphenols in Preventing and Treating Type 2 Diabetes: Evidence from In Vitro and In Vivo Studies. Nutrients 16: 3159.
■ 注の解説
* クロスオーバー比較試験
同じ対象者に期間を分けて異なる治療や介入(本研究では、対照食、野菜飲料食、糖液食の3つ条件の食事)を順番に受けてもらい、その効果を比較する研究デザインです。対象者間の個人差の影響を抑え、少ない人数で効率よく介入の効果を確かめる方法です。
* 持続血糖測定装置
一定期間の血糖値を連続的に測定する装置のことです。これまでの血糖測定では採血を行う必要がありましたが、血糖値は数分ごとに変動することから、従前の測定方法では血糖の変動を捉えきれない課題が指摘されていました。持続血糖測定装置を使用することで、血糖の変動をより詳細に把握することができます。