白鶴酒造が平成30年度 日本醸造協会技術賞を受賞

白鶴酒造株式会社のプレスリリース

白鶴酒造株式会社(本社:神戸市、社長:嘉納健二、資本金:4億9,500万円)研究室の副主任 玉田佳大、室長  明石貴裕は、清酒分野でメタボロミクス技術(※1)を用いて、自社開発酒米「白鶴錦(※2)」などの原料米品種・酵母菌株による清酒の酒質特性の解析を行い、その研究成果が評価され、公益財団法人日本醸造協会から「日本醸造協会技術賞(※3)」を受賞しました。授賞式と受賞講演は、10月10日(水)に東京大学弥生講堂で行われた日本醸造学会大会にて実施されました。

公益財団法人日本醸造協会 日本醸造協会技術賞授賞式

■研究概要

白鶴が10年以上の歳月をかけて独自開発し2007年に品種登録した酒造好適米品種「白鶴錦」の特性解析を目的とした研究です。

現在、清酒の分析には、アルコール度数や日本酒度、酸度、アミノ酸度などの成分分析と官能検査が一般的で、これらの限られた数値から酒質の特性を明らかにするには限界がありました。そこで、白鶴では、ライフサイエンスの研究に活用され、近年、食品分野でも応用されるようになったメタボロミクス技術を清酒分野で活用し、清酒に含まれる多種成分を網羅的に分析・解析することにより、原料米や酵母による清酒成分の違い(特徴)を初めて科学的に明らかにしました。

本研究では、ガスクロマトグラフィー/質量分析機(GC/MS)を用いたメタボロミクス技術により、酵母(自社酵母2種)と米の品種(白鶴錦、山田錦)を変えた大吟醸酒15種類の成分を分析し、同定した51成分を含む80個の化合物を検出しました。各大吟醸酒の成分組成を比較した結果、酵母菌種や原料米品種により清酒に含まれる化合物組成に特徴があることが明らかになりました。

これまでは、清酒の醸造は経験や勘に頼ることも多く、醸造後の酒の分析や官能検査により酒質特性を把握していましたが、今後、原料米や酵母の数値的根拠のある特性を活かした、より精度の高い酒質設計が可能になると考えています。このような化学組成の特徴が生じる要因を解明することで、「白鶴錦」の特性を活かした清酒商品の開発を進めていきたいと考えています。

(※1)メタボロミクス技術

メタボロミクス(Metabolomics)とは、メタボローム解析(Metabolomic  analysis)とも呼ばれ、生体内の活動によって生じる代謝産物(メタボライト)を網羅的に分析・解析することであり、この手法を応用することで、清酒に含まれているアミノ酸や有機酸、糖類などの親水性の低分子化合物を一斉に分析することが可能です。

(※2)自社開発酒米「白鶴錦」

優良酒米を開発するため、酒米の最高品種である「山田錦」の優良形質を解明し、1995年「山田錦」の父にあたる品種「渡船(わたりぶね)」と母にあたる「山田穂」の交配を開始しました。10年以上かけて得られた優良品種を「白鶴錦」として2007年に品種登録しました。

(※3)日本醸造協会技術賞

日本醸造協会は、醸造に関する学術研究や調査を行う他に、日本醸造学会を主宰するとともに、関連団体の研究会等を支援し、醸造学と醸造技術の進歩発展を図り、わが国の伝統的なスローフードである醸造飲食品の高品質化と安心・安全を提供し、国民の豊かな食文化に寄与する事業を行っています。日本醸造協会技術賞は、醸造に従事する者の養成、技術の振興を目的とした顕彰事業の一環として、醸造技術の発展に寄与した者に授与されるものです。

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