「森永乳業ビフィズス菌通信 Vol.4」自治体や企業も様々な取組みを開始している 認知機能を維持するためには、早期診断、早期対策が重要 独自の取り組みも  第4弾は「認知機能」がテーマです。

森永乳業株式会社のプレスリリース

近年、ビフィズス菌をはじめとする腸内細菌と全身のさまざまな疾患との関連性について、世界中で研究が進められており、なかでも大腸の腸内環境を整えることは全身の健康につながると重要視されています。森永乳業は50 年以上にわたり、ビフィズス菌や腸内フローラの研究に取り組んでいます。ヒトにすむビフィズス菌の研究論文では、世界
1位※1の論文数を公開しており、また、森永乳業のビフィズス菌はこれまでに世界30ヶ国以上で使用実績があります。これからもビフィズス菌の研究で得た知見や成果を、皆さまの健康にお役立ていただけるよう、発信していきます。第4弾である今回は、日本が抱える社会問題のひとつであり、コロナ禍による自粛生活の影響が問題視されている「認知機能」とビフィズス菌の関係についてです。 ※1 (株)メタジェン調べ…2019年時点、医薬文献DBにおいて企業による研究論文数で世界1位

■コロナ禍で高齢者の認知機能低下が加速。認知症をとりまく現状とは
 人生100年時代を迎え平均寿命が伸び続けている日本では、認知症患者の増加が社会問題となりつつあります。厚生労働省が発表した認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)によると、日本国内における高齢者の認知症患者数は、2025年には約700万人、65歳以上の約5人に1人に達するおそれがあるとされています。認知症は治療の難しさや介護が必要になるなど、本人だけではなく家族や地域社会との関わりも大きいため、非常に身近になってきています。
 また、2020年から続く新型コロナウイルス感染症流行による外出自粛の影響で、コロナ禍において約4割の医療従事者や介護専門職員が「認知症者に影響が生じた」と回答し、特に在宅認知症者の半数以上が「認知機能の低下、身体活動量の低下等の影響が見られた」と回答※2しており、認知症の人の症状悪化が懸念されます。
 現在、認知症に関する研究は世界中で進められ、原因や対策についても少しずつ分かってきました。認知機能の維持には早期対策による予防が非常に重要と考えられ、認知機能の早期診断や対策法を取り入れる自治体、企業が増えてきています。
※2 広島大学…全国945施設・介護支援専門員751人のオンライン調査結果(https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/59484

リリースの詳細はこちら
https://prtimes.jp/a/?f=d21580-20211125-ac73b9f2ac965075ad6f9f535e36706c.pdf

■抗加齢医学の専門家、伊賀瀬先生に聞く、あたまの健康状態を保つための早期対策の重要性

・伊賀瀬 道也先生
愛媛大学大学院抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授
愛媛大学医学部附属病院 抗加齢予防医療センター長2006年より4,000人以上の患者さんに指導を続けてきた「抗加齢医学」研究の第一人者として、認知機能低下の予防と治療に尽力。血管の専門家としても有名。NHKの“血管特集”番組などテレビ出演も多数。著書に『アンチエイジング医療の医師が教える!「食事」と「生活習慣」の極意』(日東書院)『国立大教授が教える最高の若返りメソッド 長生き1分片足立ち』(文響社)他がある。

認知症は発症までにステップがある

 記憶力を含めた認知機能の低下は40-50歳代から始まると言われています。2006年、「抗加齢予防医療センター」を開設して以来、30-90歳代の4,000人以上の患者さんの心と体に向き合ってきた中で、群を抜いて多かったご相談も「度忘れ、もの忘れが気になる」でした。そのためにすぐにでも心掛けたいのが、早めの記憶対策です。
加齢に伴う物忘れと認知症の間の概念として、MCI(軽度認知障害)と呼ばれるグレーゾーンがあると言われています。このMCIの状態で対策をしていけば、認知機能の低下が起きない、あるいは非常に遅くなるというデータもたくさん出てきています。またMCIの状態では日常生活や社会活動に影響しないとされるため、多くの場合見落とされがちですが、私たちの認知機能は様々な要因で変化します。例えば、コロナ禍での外出自粛は、運動とコミュニケーションの機会を奪うことになり、これが心身に与えた影響は非常に大きいと考えています。微細な変化に早期に気付き、予防的な活動を取り入れ、早めの記憶対策をすることが、あたまの健康状態を保つためには非常に重要です。
 
 記憶対策を長続きさせる最大のコツは、普段の生活の中で簡単にできることから始めることです。まずは取り入れやすい食習慣の改善からはじめてはいかがでしょうか。基本は「ベジタブルファースト」、ヨーグルトを含んだ野菜中心の食である「地中海食」のような食材を積極的に摂取しましょう。その他に調理方法としてできるだけ生食、煮炊き料理をおすすめします。焼き料理や揚げ物などのお焦げができやすい料理は少なめにして、老化を促進しやすくする終末糖化産物(AGEs)がたまらないようにしましょう。摂りやすい食品で1日1回大豆食品を摂ることもおすすめです。運動と同時に別の何かをすることで脳を刺激し、認知機能を高めるということが近年分かってきています。国立長寿医療研究センターでも「コグニサイズ」※3として取り入れられ、効果が実証されています。また、記憶対策には会話をともなうコミュニケーションや、睡眠の質を高めることも大切です。最後に記憶対策では「覚える」ことだけでなく「思い出す練習」を習慣化することも効果的です。
※3 cognition (認知) とexercise (運動) を組み合わせてcognicise(コグニサイズ)

■食で認知機能の低下を予防。注目される脳腸相関

 近年、認知機能低下の予防策として食事が注目されています。WHOの認知機能低下および認知症リスク低減のガイドライン※4では、「健康的な食事が認知障害を予防する可能性は大きい」と述べられています。グローバルな認知症疫学調査では、認知症のリスクを低減させる食事として「地中海食」が挙げられており、地中海食はMCIやアルツハイマー病のリスクを低減させ、健常者の「良好なエピソード記憶や全般的な認知機能と関連していた」と報告されています。また、国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 副センター長の佐治直樹先生の研究によると、日常の食事から影響を受ける腸内細菌叢(腸内フローラ)の構成タイプが、認知症のありなしによって異なること※5や、腸内細菌の代謝産物は、認知症と深い関係があること※6が分かってきました。

 

 

脳と腸は、自律神経などを介して互いに影響を及ぼし合うと言われ、その関係性のことを「脳腸相関」と呼んでいます。脳腸相関については、近年「Nature」や「Lancet Neurology」といった信頼性の高い専門雑誌でも論文が公表されるなど、世界的に注目されています。
 ※4 WHO, Risk reduction of cognitive decline and dementia  WHO Guidelines 2019.5.14
 ※5 Saji N, et al. Sci Rep. 2019 Jan 30;9(1):1008.
 ※6 Saji N, et al. Sci Rep. 2020 May 18;10(1):8088.

■認知機能を維持する「ビフィズス菌MCC1274」
森永乳業は、50年以上に及ぶビフィズス菌研究や腸内フローラ研究を行っていますが、脳と腸が密接に関わる“脳腸相関”が注目をあびる中、腸と脳機能に関する研究を深めてきました。保有する数千株の菌株を研究する中、2017年に認知機能維持作用のある「ビフィズス菌MCC1274」を特定しました。
2020年に実施した臨床試験では、MCIの疑いがある方を含む50歳以上80歳未満の80名を対象に、ビフィズス菌MCC1274の摂取により、主要評価項目である「RBANS神経心理テスト(認知機能がどの程度低下しているか評価する検査)」の「評価点合計」「即時記憶」「視空間・構成」「遅延記憶」においてプラセボ群と比較して有意なスコアの上昇が確認され、副次評価項目である、「あたまの健康チェック(神経心理学検査)」でも有効性が見られたことから、ビフィズス菌MCC1274に認知機能を維持する作用が確認されました。当研究結果は、学会賞を受賞したり、国際的なアルツハイマー病の最大の情報サイト「ALZFORUM」に唯一のプロバイオティクス素材として紹介されたり、アルツハイマー病協会国際会議2021にて発表するなど、世界からも注目されています。

■森永乳業が認知機能維持作用のあるビフィズス菌を研究するに至った背景

・清水 金忠
森永乳業株式会社 研究本部 基礎研究所長
日本農芸化学会フェロー、京都大学生命科学研究科客員教授、天津科学技術大学客員教授。1984 年 中国華南農業大学卒、1991 年 名古屋大学大学院 農学研究科博士課程修了、理化学研究所などで研究職に従事。1995 年 森永乳業株式会社入社、主な研究テーマは腸内細菌やビフィズス菌、乳酸菌の基礎・機能性研究および応用技術開発。2013 年 日本農芸化学会技術賞受賞、2016 年 日本酪農科学学会賞受賞。

 森永乳業では、乳幼児から高齢者までのすべての世代を対象に、一生を健康的に過ごすサポートができるよう様々な研究を行っております。特にビフィズス菌に関しては、生理機能に関する研究を数多く実施してきました。事業においてはヨーグルトを中心に、サプリメント、フォローアップミルク(1歳頃からの幼児用ミルク)、や国内外の業務用素材と幅広く展開しています。また、乳幼児においては、全国150以上のNICU(新生児集中治療室)や小児科へビフィズス菌M-16Vを提供し、多くの赤ちゃんの健全な成長を支えています。
高齢者に対して何ができるかと検討した際に、脳腸相関を知り、認知機能に対しても何かしらの影響を持つ腸内細菌がいるのではないかという仮説を立て、10年ほど前から研究に取り組んできた中で。「ビフィズス菌MCC1274」を見出し、MCIの疑いのある方を対象とした臨床試験で認知機能スコアを大幅に上昇させるエビデンスを得ることができました。このように明らかな差が確認された素材はほとんどなく、結果を見たときには興奮して眠れなくなったほどでした。今後は作用機序の解析や、認知症患者への有効性の研究も予定しています。ビフィズス菌は60歳代以降加齢によって減少することが分かっています。認知機能の他にも、腸内のビフィズス菌の占有率と高齢者の健康の関係性といった研究にも取り組んでいます。森永乳業は、独自の機能性素材であるビフィズス菌によって、笑顔あふれる豊かな社会の実現のため、私たちならではの価値を高め、その価値をお届けし続けることによって、より一層社会に貢献してまいります。

■認知機能維持のための早期対策の事例
早期から対策を行うことで認知機能を維持できる可能性が徐々に周知され、早期対策の重要性を啓発し様々な取り組みを行う自治体や施設、企業が増えてきています。

-愛知県尾張旭市 あたまの元気まる-

愛知県の尾張旭市では、市の健康福祉事業として2013年より、40歳以上の方を対象に、もの忘れの訴えの無い元気な頃から受けられる初めての認知機能チェックテスト「あたまの健康チェック®」(株式会社ミレニア)を無料で受けることができます。これは、全国の自治体で初めての試みです。また、同市内のイトーヨーカドーやシニアクラブへの出張チェックの実施や予防のための保健指導、国立長寿医療研究センターが開発した認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」の実施など、早期からのチェックと対策を行う啓発活動を行っています。
コロナ禍では、市民の方々がご自宅からでもお電話を通じて「あたまの健康チェック®」が受けられるよう、リモートによる新しいチェック・指導体制を整備。様々な啓発活動を行ったことにより、若年層にまで情報が広がり、親子でチェックテストを実施する方なども増えています。

-健脳カフェ-

健脳カフェは、アルツハイマー病研究の権威でアルツクリニック東京(東京都千代田区)の新井平伊院長が、早期の認知症予防および認知症発症リスク低減のための治療的介入を行う「先制医療」の拠点として、2021年4月に開設した施設です。認知症の専門医が常駐し、カフェ内でのプログラムや談話に参加することで、未病の段階から予防の個別プログラム支援をしています。
現在は、高齢者や低体力者でも筋力向上ができる簡単運動プログラム「ラクティブ」と、認知機能と関わりが深い食事・栄養・ビフィズス菌(腸内フローラ)などについて、森永乳業グループの栄養士から学ぶことができる「栄養教室/健幸サポート栄養士セミナー」などのプログラムを実施中。今後も様々な新しいプログラムを追加していく予定となっています。

-明電舎-

東京都品川区に本社を置く電機メーカー 株式会社明電舎の太田工場(群馬県太田市)では、工場で働く従業員の遂行機能や注意機能などの脳機能向上・維持のために、認知機能や運動機能の向上を目的としたプログラム「シナプソロジー」を実践しています。
また、さらなる認知機能の維持のために、認知機能維持作用が確認できた「ビフィズス菌MCC1274」を配合したヨーグルトなどを定期的に食べ、従業員の機能向上の試みを行っています。「脳機能や認知機能が下がると、重大な事故につながる場合があります。従業員のことを考え安全に働いていただけるよう、このような取り組みを試行しました。」と太田工場長の阿久津さんは話します。

             ~ 知っているようで知らないビフィズス菌のはなし ~
       『脳の不調は腸に伝わる?腸の不調は脳に伝わる? 腸と脳の不思議な関係!』
 

佐藤信紘(さとう・のぶひろ)
学校法人順天堂理事、順天堂大学名誉教授・特任教授
1940年生まれ。大阪大学医学部卒。大阪大学第一内科助教授、順天堂大学消化器内科学主任教授、順天堂大学医学部附属練馬病院院長、大阪警察病院院長などを経て現職。ジェロントロジー研究センター センター長、順天堂大学寄付講座「腸内フローラ研究講座」代表なども務める。

【身近な「脳腸相関」体験】
脳腸相関と聞くと少し難しそうな印象を抱く方もいるかもしれません。しかし、脳腸相関は誰しもが体験したことのある非常に身近な現象です。例えば、試験や会議の前など脳にストレスがかかるとおなかの調子が悪くなることや、逆におなかの調子が悪いと気分が沈み仕事が手につかないといったような経験はないでしょうか?これらも脳と腸が密接に関係しあっているからこそ起こる現象のひとつなのです。

【日本語には「腹」で「心」を表す言葉が多い】
日本人は、脳と腸の関連性が医学的に明らかになっていない古くから、経験的に脳と腸の関連性に気が付いていたようです。その証拠として、「腹」という言葉に「心」の意味を持たせる言葉が非常に多いことがあります。例えば、「腹が立つ」、「腹の虫」、「腹が腐る」、「腹を探る」、「腹を割る」など、枚挙に暇がありません。「腹」はもう一つの「心」と感じていたのでしょう、先人の知恵というのは素晴らしいものと感心します。

【様々な疾患と腸内細菌との関連性が明らかに】
2021年の2月に科学雑誌「Nature」に掲載された最新の総説では、腸内細菌は自らが産み出す代謝産物を介してパーキンソン病や自閉症などの精神疾患を制御していると報告されました。このように、技術が進歩したことで、体験的にしか分かっていなかった脳腸相関が、医学的に正しい可能性が高いことがだんだんと分かってきています。

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