クリーンミートの商業化に向け、オルガノイド技術を世界で初めて適用した技術開発を開始

日揮ホールディングス株式会社のプレスリリース

日揮ホールディングス株式会社(代表取締役会長CEO 佐藤 雅之)は、国内EPC事業会社である日揮株式会社(代表取締役社長 山田 昇司)が、このたび動物細胞を培養して食肉を生産するクリーンミート(培養肉)の商業生産を目指し技術開発を行う新会社を設立しましたので、お知らせします。

1. 新会社設立の背景と目的

世界的な人口の増加を背景に、将来的に食肉消費量の増加が見込まれています。一方で、温室効果ガス総排出量の約14%*1が畜産由来であり、地球上の農地の約75%*2が畜産用であることなどから、従来の畜産生産体系における環境負荷の高さが課題となっており、代替肉の普及に対する期待が高まっています。
代替肉の中でも、クリーンミートは動物の細胞を体外で培養して生産される食肉であり、植物由来代替肉と比較して動物性の栄養素を補えるなどの利点を有し、新たな代替肉の生産方法として注目されています。現在、世界中でクリーンミートの研究開発が進んでおり、2040年には食肉全体の35%*3をクリーンミートが占めると予測されています。
本技術開発では、横浜市立大学武部貴則特別教授(東京医科歯科大学教授、シンシナティ小児病院准教授を兼任)および、順天堂大学赤澤智宏教授が開発した、食肉組織から特定の幹細胞を取り出し、効率よく培養して食肉オルガノイド*4と呼ばれる組織体を作成する手法を世界で初めて適用します。開発にあたっては、横浜市立大学の保有するオルガノイド作成技術を食料生産へ応用するための特許ライセンス契約を締結し、商業化に向けた検討を行います。
クリーンミートの大量生産を実現するためには、製造コストの低減や製造規模の拡大が不可欠であり、設立した株式会社オルガノイドファームでは、今後外部の知見も活用しつつ、当社グループが医薬品分野を通じて培ってきた細胞培養関連技術や大規模生産を可能とする工程の自動化・効率化などのエンジニアリング技術力を駆使し、栄養改善などを実現する高機能・高付加価値なクリーンミート生産技術の確立を目指します。2030年に商業プラントの運転開始を予定しています。

2. 株式会社オルガノイドファームの概要

1. 代表者:山木 多恵子(日揮株式会社 未来戦略室)
2. 設立日:2021年11月29日
3. 資本金:5,000万円
4. 所在地:神奈川県藤沢市(湘南アイパーク内)
5. 事業の概要:細胞培養による食料生産技術の開発・コンサルティングなど
6. 出資比率:日揮株式会社100%
7. 特別技術顧問:武部 貴則 教授(東京医科歯科大学統合研究機構先端医歯工学創成研究部門教授/シンシナティ小児病院オルガノイドセンター副センター長/横浜市立大学特別教授)、赤澤 智宏 教授(順天堂大学・難病の診断と治療研究 センター)

3. 今後の方針

当社グループは、中期経営計画「Building a Sustainable Planetary Infrastructure2025」のもと、企業グループとして取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として「環境調和型社会」の実現を掲げ、温室効果ガスの削減に資する様々な取り組みを行っています。クリーンミートの普及を通じて、畜産生産体系における温室効果ガスの削減と、人々の健康で豊かな生活の実現に貢献してまいります。

*1 出典:FAO (food and agriculture organization of united nations) 2013
*2 出典:Nature Analysis “Solutions for Cultivated Planet (2011)”
*3 出典:https://www.es.kearney.com/consumer-retail/article/?/a/when-consumers-go-vegan-how-much-meat-will-be-left-on-the-table-for-agribusiness
*4 オルガノイド:「器官(organ)」と「~に類似したもの(-oid)」の造語で、立体的な3次元構造を形成するよう培養された立体組織のこと。体内に存在する臓器に近い特徴を有するため「ミニ臓器」とも呼ばれる。基礎研究や創薬研究、再生医療への応用で注目されているが、本事業ではこのオルガノイド培養技術を食料生産に応用する。特定の幹細胞を使用した食肉オルガノイド作成技術では、細胞が自発的に組織化する特徴により、効率的に培養肉を生産することが可能となり、時間短縮と低コスト化の実現を通じて商業化に向けたスケールアップへの貢献が期待されている。

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