TDBのプレスリリース
帝国データバンクは、上場する外食企業100社の値上げ動向について調査・分析を行った。
- 外食主要100社の半数超が値上げ メニュー価格は平均50円アップし600円超え
- ファミレスなどでは値上げ進む 居酒屋業態では値上げ少数にとどまる
- 「無理な価格据え置き」に見切りの動き 「再値上げ」が広がる可能性大
外食主要100社の半数超が値上げ メニュー価格は平均50円アップし600円超え
上場外食主要100社 価格改定動向 (10月18日時点)
大手外食チェーンが続々と値上げに踏み切っている。上場する外食主要100社における、2022年以降の価格改定計画(値上げ、実施済み含む)を調査した結果、10月18日までに56社で値上げが判明し、全体の半数超に上った。今年1~4月までの値上げは15社にとどまっていたなか、半年間で約4倍に急増した。値上げの要因としては、「食肉」「小麦粉」「原油」の高騰による影響が目立つほか、夏以降の値上げについては円安による輸入コスト上昇を挙げた企業も目立った。
値上げを行った企業のうち、具体的な値上げ金額が判明している企業41社をみると、最も多い値上げ金額の幅は「30円以下」で15社だった。30円以下の値上げでは、中華料理やラーメンなど中華麺業態のチェーンで多い。次いで「100円以下」(9社)、「50円以下」(8社)と続いた。1メニュー当たりの単価が高いファミリーレストランや、高価格帯のランチなどを値上げした企業でこれらの値上げ幅が多かった。一方、最も少ないのは「10円以下」で、41社のうちわずか3社にとどまった。1メニュー当たりの値上げ金額は平均50円となり、平均メニュー価格は600円を超えた。
1メニュー当たり値上げ金額
値上げを行った企業では、今年夏ごろにかけては牛丼やハンバーガー、うどんなど、原材料価格上昇を受け止める余力が低い「低価格チェーン」などが多くを占めた。ただ、近時では回転すしなど長らく均一価格を保ってきた業界や、中高価格帯のランチなどにも値上げの波が広がっている。これまで来店動向に直結する価格変更に慎重だった外食各社の姿勢は一転して、大幅な価格アップに踏み切るケースが目立つのが今年の外食値上げの特徴となっている。
ファミレスなどでは値上げ進む 居酒屋業態では値上げ少数にとどまる
飲食業態別 「値上げ」企業割合
飲食店業態別に各社の値上げ動向をみると、最も値上げした企業の割合が高いのは中華料理やラーメンチェーンなど「中華麺」業態で、9割の企業で値上げが行われた。多くが「ワンコイン」に代表される低価格メニューを主力としている業態で、麺の原料となる小麦価格に加え、肉製品の価格上昇、電気・ガス代などエネルギーコストの上昇が直撃した。
一方、「居酒屋」は値上げの割合が3割にとどまった。客足が戻らないなかでの値上げに慎重姿勢を崩さない企業が多いほか、値上げした企業でも酒類のみの値上げや、ランチメニューなどの値上げにとどめるケースが多い。
「無理な価格据え置き」に見切りの動き 「再値上げ」が広がる可能性大
外食チェーンではこれまで、値上げによる消費者離れを懸念して、コスト削減や新たなメニューの提供、調達材の国産への切り替えなどで極力「メニュー価格据え置き」としてきたほか、やむを得ず値上げする場合でも値上げ幅を抑制するための対策に知恵を絞ってきた。しかし、足元では急激に進んだ円安の影響で輸入食材価格や電気・ガスなどエネルギーコストの上昇が重なるなかで、無理な価格維持が自社の利益を圧迫するケースもみられ始めている。150円に迫る円ドル相場など「コスト上昇が当初想定を超えている」といった指摘もあるなかでは、当面の間コスト減少につながる明るい材料は見えない。「顧客離れ」というリスクを抱えつつも、自社収益確保のための「再値上げ」「再再値上げ」に踏み切るケースはさらに増加する可能性が高い。