甲良集落営農連合協同組合のプレスリリース
滋賀県甲良町で生産される古来より良食味の《甲良米》がふるさと納税の返礼品として受付中。無洗米となってお手軽にお試し頂けます。
《甲良米・特別栽培米コシヒカリ 無洗米》5㎏7,000円から返礼品受付中。
県といえば米所として全国的にも有名だが、中でも湖東地域・町には、「知る人ぞ知る」銘柄米の産地がある。
甲良町は琵琶湖の南東方面に位置する小さな町だ。人口は6,652人(2022年4月現在)。近隣には、「彦根城とひこにゃんの彦根市」、「伊勢神宮の親神様である多賀大社」、「けいおん!」の聖地で有名な町がある。にぎやかな有名観光地に囲まれつつも、ここはのどかで落ち着いた田園風景を残しており、忙しい日常につかれた都会人の心をやさしく包み込んでくれるような雰囲気を感じられる。
甲良町は鈴鹿山脈のに位置している。鈴鹿山脈を水源とする川は、1,500万人の取水源たる琵琶湖を育む清流の一つ。この犬上川の水(山麓で地下に浸透する河川水)を利用して栽培された甲良米は、江戸時代から彦根藩の中では評判の「上品」といわれてきた。戦前には甲良米の名声は京都にも届き、日々たくさんの仕入れがあったという。
湖東は湖東でも、山麓で作る米こそが本当に美味いんだと、地元の人々はみな誇らしそうに語る。町の人々にとって甲良米は、犬上川のせせらぎと、地域の歴史とが生み出した結晶なのだ。
町の中心に位置する集落・法養寺。ここでは集落ぐるみで組織的な農業を営む「集落営農」に長年取り組んできた。農業振興の先進事例として、全国からも視察が絶えない。集落営農法人・サンファーム法養寺の代表を務める上田栄一さんは、この地で30年以上、農業改良普及員として町の農業を支え続けてきた。上田さんたちは、町内でも一層すぐれた甲良米をつくることを目指して、試行錯誤をつづけてきた。いまでは、町内七つの集落が営農法人を設立し、それらが「甲良集落営農連合協同組合」という大きなグループを作り、町ぐるみで品質の高い米づくりに取り組んでいる。
彦根にある木材のリサイクル会社・株式会社ケントムは、協同組合設立の立役者の一つだ。この会社は、間伐材や街路樹といった生木を使ったバイオ炭を製造している。そして、上田さんたちに、このバイオ炭を混ぜ込んだ有機肥料を田んぼに播き、土づくりを行うことを提案した。CO2を土壌に留めるなどその効果は、顕著に表れた。2010年、バイオ炭を使って栽培した甲良米が、米・食味鑑定士協会が主催する第12回「米・食味分析鑑定コンクール」の国際大会で食味値85点を達成、さらに翌2011年の同コンクールでは特別優秀賞を受賞することとなった。上田さんたちが作る甲良米は、このバイオ炭を使った「特別栽培米」。これは滋賀県が推進する観光こだわり栽培基準に基づく、減農薬減化学肥料で生産した「特別栽培米」として販売している。生木を利用した環境にやさしい資材を使っていることが自慢の一つだ。
上田さんたちは、名古屋のスーパー・ナフコチェーンに、自慢の甲良米を出荷している。ナフコチェーンは当初、得意先ではない上田さんたちからお米を仕入れることに半信半疑だったようだが、初めて販売した甲良米はあっという間に売り切れてしまった。それ以来、上田さんたちは毎年2,000~3,000俵もの甲良米をナフコチェーンに出荷しているが、売れ行きは衰えを見せることなく、生産が追い付かないほどだという。
大型の農業機械でバイオ炭を散布する。(画像提供:甲良集落営農連合協同組合)
今でこそ、町に恵みの水をもたらしてくれる犬上川だが、歴史をさかのぼれば、現在とは違った姿がみえてくる。扇状地に位置するこの町はかつて、水田耕作地帯でありながら干ばつが頻発し、渇水に悩まされる地域でもあったという。このため、昭和初期には大きな水利紛争が起きたこともある。ままにならないこの川を恵みの清流に変えたのは、先人たちによる水利基盤の整備や土地改良だった。こうした歴史があるからこそ、町の人々は川に対する愛情と誇りを持ってきた。甲良町はかつて、まちづくりの先進事例として、全国、さらには海外からも視察が訪れた。その発端は、農地の整備と用水路のパイプライン化が進む一方で、人々が永く親しんできた田園風景が失われてしまう、という町民たちの危機感からだった。町の人々は、やがて自らの手で町の自然と景観を守ってゆこうと、草の根の活動を始めた。町内にある13の集落のそれぞれで、住民たちが互いに村と町の将来について思いを語りあった。そして小川を清掃したり、お花を植えたり、さらには木製の水車を設置するなどして、美しい「せせらぎ遊園」と呼ばれる親水空間を作り上げていった。そこにはホタルもすみつき、生態学や農村研究の専門家も巻き込んで、住民が大学と協働してまちづくりを進めていった。これは当時イギリスで提唱された、グラウンドワークという住民主導の住環境保全運動を体現したものだった。
住民たちがつくる草の根のまちづくり勉強会の名を甲良学「バサラ塾」とよぶ。バサラは、室町時代に活躍した甲良町出身の武士・佐々木道誉の異名「大名」に由来している。バサラ塾を命名した信州大学の玉井袈裟男は、「バサラ」を、体制になびかず革新的で、威風堂々として、しかも深い教養に裏打ちされている様と表現した。戦国時代から近世にかけて活躍した武将・藤堂高虎も、甲良町の出身だ。中世から現代にいたるまで脈々と受け継がれるバサラの精神は、この町を時間軸に沿って流れるもう一つの清流なのである。
国道307号線沿いにある道の駅・せせらぎの里こうら(筆者撮影)
甲良米づくりに励む上田栄一さんたちにとって、とてもうれしいことがあった。それは、就農の道を志し、県立の農業大学校を出たばかりの若手・中山凌輔さんが、上田さんたちの法人に働き手として就職したことだ。勤勉で朗らかな中山さんはあっという間に集落一の人気者になった。そして、営農法人の中で経営と技術を学び、一人前の農家に育とうとしている。町外出身の若者が、甲良町の農業に魅せられ、ここで成長し、自立を迎えようとしているのだ。
2013年に国道307号線沿いにグランドオープンした道の駅の名称は「せせらぎの里こうら」。ここには地域外から毎日多数の人々が休憩に訪れ、地元産の農産品やピザなどの料理を楽しむ人々でにぎわっている。今年、専属シェフが監修して、甲良米を使った白ビール「甲良米WEIZEN」を商品化した。食前酒として楽しめるよう味にも、ラベルにもこだわった。駅長の金織昭人さんによると、売れ行きは上々という。ほかにも町内の農家やレストランとコラボし、さまざまな加工品を開発し、町の活性化に貢献しつづけている。
甲良米WEIZEN(筆者撮影)
住民たちが誇るせせらぎとバサラの町。甲良町は、地域の外の人々との縁を結び交流する中で、お米と人とを育て、そしていま新たな文化を芽吹かせようとしている。
(摂南大学国際学部 講師 小林基)
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・「ふるさとチョイス」滋賀県甲良町 https://www.furusato-tax.jp/city/product/25442
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・道の駅「せせらぎの里こうら」 https://m-koura.jp/