森永乳業株式会社のプレスリリース
①B. breve MCC1274と腸管上皮細胞の共培養により、免疫調節因子として知られている代謝産物ILAとPLAの産生量が増加した。
②腸管上皮細胞が産生する代謝産物ヒポキサンチンとキサンチンが、B. breve MCC1274のILAの産生量を増加させた。
なお、本研究成果は、科学雑誌「Frontiers in microbiology」に 2023年4月13日に掲載されました※。
1.研究背景
ビフィズス菌がもたらす健康増進作用の一部は有用な代謝産物の産生によるものと考えられています。そのため、摂取したビフィズス菌が腸に到達した後、どのように代謝するのかを明らかにすることが重要です。私たちの腸では腸管上皮細胞がビフィズス菌と接していますが、通常の培養方法では再現できないため、腸管上皮細胞がビフィズス菌に与える影響に関してほとんど明らかにされていませんでした。本研究では、新しい培養方法として新規の人工腸管モデルを活用し、腸管上皮細胞がB. breve MCC1274の代謝に与える影響を評価しました。
2.研究手法/結果
①B. breve MCC1274と腸管上皮細胞の共培養により、免疫調節因子として知られている代謝産物ILAとPLAの産生量が増加した。
人工腸管モデルにおいて、ヒトiPS由来腸管上皮細胞とB. breve MCC1274を24時間共培養し、腸管上皮細胞を含まないB. breve MCC1274の単培養と比較して、それぞれの培養液中に含まれる代謝産物を網羅的に解析しました。
その結果、単培養した場合のB. breve MCC1274と増殖性は同程度にも関わらず、腸管上皮細胞との共培養ではインドール-3-乳酸(ILA)や3-フェニル乳酸(PLA)などの代謝産物の産生量が有意に増加しました。(図1) これらの代謝産物はbreve種など乳幼児に定着する種のビフィズス菌で産生量が多いことが知られており、中でもILAは抗炎症を初めとする様々な免疫調節作用を持つ代謝産物として近年注目されています。
②腸管上皮細胞が産生する代謝産物ヒポキサンチンとキサンチンがB. breve MCC1274のILAの産生量を増加させた。
作用機序を明らかにするために、腸管上皮細胞が産生する代謝産物を添加した培地でB. breve MCC1274を培養すると、ヒポキサンチン及びキサンチンを添加した際にILAの産生量が有意に増加しました。(図2) よって、腸管上皮細胞が産生したこれらの代謝産物がB. breve MCC1274の代謝に影響を与えていることが示唆されました。
3.今後の展望
本研究では、新規の人工腸管モデルを活用してB. breve MCC1274を腸管上皮細胞と共培養することで、抗炎症因子として知られているILAなど有用な代謝産物の産生を増加させることを確認しました。今後も、森永乳業は産学連携に積極的に取り組み、新技術の導入・活用を通して、ビフィズス菌の生理機能を明らかにするための研究を推進し、人々の健康に貢献してまいります。
<参考> ※ 論文タイトル・著者
「Comprehensive analysis of metabolites produced by co-cultivation of Bifidobacterium breve MCC1274 with human iPS-derived intestinal epithelial cells」
Akira Sen, Tatsuki Nishimura, Shin Yoshimoto, Keisuke Yoshida, Aina Gotoh, Toshihiko Katoh, Yasuko Yoneda, Toyoyuki Hashimoto, Jin-zhong Xiao, Takane Katayama, Toshitaka Odamaki1
Frontiers in microbiology 2023, 13
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2023.1155438/full
PDF版はこちら
https://prtimes.jp/a/?f=d21580-944-0214b93a1cf045a42985b1d26ef6673d.pdf