NPO法人アニマルライツセンターのプレスリリース
アニマルウェルフェアアワードは畜産水産動物福祉の向上に取り組むNPO法人アニマルライツセンターが、前年度(2022年4~2023年3月末)までの間のアニマルウェルフェア向上に最もインパクトのあった企業を評価するものです。今年は魚賞をはじめて贈ることができたことをとても喜んでいます。
採卵鶏:鶏賞汐文社様
汐文社は2022年12月に児童書『いつか空の下で さくら小ヒカリ新聞』(堀 直子/作 あわい/絵)を出版しました。この本は採卵鶏のアニマルウェルフェアについて深く知ることができ、かつ心に響く作品でした。この本は現在全国各地の図書館などに配備されており、認知度が課題であるアニマルウェルフェアの解決策となりえます。
採卵鶏の隠された飼育実態を児童書の分野で初めて表現したこの作品を勇気を持って出版したことを評価しました。
三和食鶏様
三和食鶏は茨城県にある成鶏(採卵鶏)の食鳥処理場です。2019年にアニマルライツセンターとの話し合いに後から社員の意識向上のための教育と改善を始め、放血不良の割合を10分の1に、到着時の死亡鶏の割合を9分の1に減らしました。
経営者のアニマルウェルフェアへの積極性と社員に自ら考えさせるという意識向上の方式により、改善が日本でも可能だということを示し、実質的に鶏の苦しみを減少させた点を評価しました。
養殖魚:魚賞ニッスイ様
ニッスイは事業のメインである魚の分野でアニマルウェルフェアの取り組みを公開した最初の企業です。養殖魚の96%において、事前のスタンニングを行い、またその改善の検討をしていることを公表しました。国内での養殖魚におけるアニマルウェルフェアが進まない中、重要な一歩です。
国内水産業におけるアニマルウェルフェアにいち早く取り組み、その内容を公表したことを評価しました。
豚:豚賞コープ自然派様
コープ自然派は妊娠ストールフリーについて専用のチラシや記事、カタログなどで、度々組合員及び市民に向けて発信しています。実際に調達する豚肉の多くも妊娠ストールフリーであり、中規模生産者のフリーストール化をともに進めてきました。
自ら需要を作り出しながら生産者の良い取り組みを応援するという理想的なサイクルを作るという積極的な取り組みを評価しました。
※今回肉用鶏に関する受賞はありませんでした。
■アニマルウェルフェアは国内でも企業の重要アジェンダに
2022年度、私達は本当に多くの企業と対話をしました。このエンゲージメントはすぐには結果に結びつかないかもしれませんが、対話した多くの企業の中でアニマルウェルフェアの芽が育ち始めています。
受賞に至らなかった中には、日本マクドナルドの鶏肉について統合報告書への記載、トリドールホールディングスの豚の妊娠ストールについてのポリシー、キユーピーのHOBOTAMA市販開始など大企業の取り組みも検討の俎上にのぼりました。しかし、2022年度は、インパクトがあって表彰ができる事例は多くはなかったと考えています。なぜなら企業は内々で進めてはいても、より具体的な情報公開に踏み切れなかったからです。
アニマルウェルフェアを企業価値に変え、いつかやってくる投資のために備えておく必要があります。またESG投資のアジェンダの一つとしてアニマルウェルフェアが意識されるようになっています。そのような中でポリシーや目標、取り組みの見えない日本企業の評価は常に低くでてしまいます。なぜなら現状も目標も、何も公開されていないからです。1%でも10%でも、現状を把握し、公開していくことで取り組みは評価されます。むしろ100%になった時点で発表することは企業にとっても社会にとっても何の価値も生み出さないことを自覚しなくてはなりません。現状と目標、それに向かう過程の公表こそが、社会課題を解決するための鍵なのです。
2023年度、企業の取組みが見えてくることを願っています。
最後に、アニマルウェルフェアを上げることを検討し、行動をしてくれたすべての企業に感謝します。
ありがとうございました。
なお、受賞企業にはあらためてお礼をお伝えいたします。