ハナマルキと月桂冠が共同研究で成果

ハナマルキ株式会社のプレスリリース

味噌メーカーのハナマルキ株式会社(社長・花岡周一郎、本社・長野県伊那市)と、日本酒メーカーの月桂冠株式会社(社長・大倉治彦、本社・京都市伏見区)総合研究所は共同研究により、「液体塩こうじ」による畜肉や魚肉の不快な香り1)を低減させる有効成分が、麹菌が作る成分・デフェリフェリクリシン(以下、Dfcy)であることを初めて見出しました。今回の研究成果は、「液体塩こうじに含まれるデフェリフェリクリシンによる畜肉調理時のヘキサナール生成阻害」と題して、日本調理科学会2023年度大会(会期2023年9月9日~10日)で発表します。

  • 「液体塩こうじ」での不快臭低減物質の評価

「液体塩こうじ」は、畜肉・魚肉の肉質を柔らかくする・旨味を増加させるなどの効果が知られていますが、食品が酸化されたときの不快な香り成分1)を、低減させる効果があることも知られています2)。こうじを原料とした他の調味料の研究では、糖分、有機酸あるいはデフェリフェリクリシン(以下、Dfcy)などの様々な有効成分によって不快な香りが低減されることが知られています。しかしながら、液体タイプの塩こうじにおいては、不快な香りの低減に関与する有効成分が不明でした。そこで、「液体塩こうじ」の開発技術をもつハナマルキ(担当:各種評価試験)と、Dfcyに知見を有する月桂冠総合研究所(担当:Dfcyに関する技術協力)が共同研究をおこない、有効成分の評価・特定をしました3)。

今回報告する主要な成果は以下の通りです。

・豚ひき肉モデル試験3)において、Dfcyを添加した条件が最も不快臭発生が少なく、更に不快臭の1つであるヘキサナールの発生量抑制をガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)で確認した。

・サンマ魚肉モデル試験4)においても、Dfcyを添加した条件が最も不快臭発生が少なかった。

 

以上のことから、「液体塩こうじ」による畜肉や魚肉の調理時に生成する不快臭の低減効果には、麹菌が作るDfcyが大きく関与することを見出しました。

今後は本研究結果をもとに、従来の機能に加えて不快臭低減効果をアップさせた「液体塩こうじ」などの商品開発につなげていく予定です。

1: 畜肉では代表的な不快な香りとして“ヘキサナール”が知られている。主に油分が酸化することにより発生し、食品中の好ましくない香りとして認知されるため、食品業界では、発生を抑制、他の良い香りでマスキング、あるいは物理的に吸着させるなどの手法が用いられる。

2: 不快な香りが、液体塩こうじ中の糖に吸着されることにより低減されることが考えられていた(ハナマルキニュース2021年1月29日付リリース)

3:ハナマルキ社が製造販売する液体塩こうじと同等の塩分濃度を含む食塩水をモデル試験の標品として用いた。標品にDfcy、糖分(グルコース)、あるいは有機酸(クエン酸)をそれぞれ加えたものを、さらに豚ひき肉と混ぜ合わせた。この豚ひき肉混合物を焼いたときに発生する食品が酸化されたときの不快な香りの発生量を官能評価及びGC-MS分析により評価した。

4:ハナマルキ社が製造販売する「液体塩こうじ」と同等の塩分濃度を含む食塩水をモデル試験の標品として用いた。標品にDfcy、糖分(グルコース)、あるいは有機酸(クエン酸)をそれぞれ加えたものを、さらにサンマ魚肉と混ぜ合わせた。このサンマ魚肉混合物調理時に発生する不快な香りの発生が抑制されることを官能評価で発見した(N=8)。

  • 学会での発表

学会名 : 日本調理科学会2023年度大会(主催:一般社団法人日本調理科学会)

日時  : 2023年9月9日 15時30分~16時00分(発表コアタイム)

会場  : 県立広島大学 広島キャンパス

演題  : 液体塩こうじに含まれるデフェリフェリクリシンによる畜肉調理時のヘキサナール生成阻害

発表者 : 白井伸生1、戸所健彦2、石田博樹2、山本英作1(1ハナマルキ、2月桂冠)(ポスター発表)

  • デフェリフェリクリシン(Dfcy)

Dfcyは、麹菌が生産するペプチドで、アミノ酸が6つ環状に繋がった構造をしています。日本酒醸造で用いる米麹はもちろん、日本酒、酒粕、甘酒にも含まれています。Dfcyは鉄と結合して赤褐色の着色成分「フェリクリシン」(以下Fcy)となるため、無色透明であることが求められる日本酒にとっては不要な物質でした。業界では着色原因となるFcyとDfcyを減少させる研究が進められ、現在では、それらの物質を作らせない技術が確立されています。月桂冠では、逆転の発想によりFcyとDfcyの有効活用を検討するために、大量生産技術に関する研究を進めるとともに、これまでに、鉄分吸収促進や抗酸化作用、尿酸値低減、抗炎症作用、美白作用、皮膚バリア機能、抗がん作用といった機能性を解明してきました。また、植物への鉄分補給による生育促進作用も確認しています。

  • 会社概要

ハナマルキ株式会社

ハナマルキは1918(大正7)年の創業以来、「素材とモノ作りを大切にしていく」という企業理念のもと、素材にこだわり、味噌作りの伝統的な技術と最新の科学技術とを活かし、環境に負担をかけず、お客様に高品質で安全なおいしい商品を提供し続けています。更に近年では、ペースト状の塩こうじを絞って液体化した万能調味料「液体塩こうじ」や、その製造技術から誕生した新たな発酵調味料「熟成こうじパウダー」など、独自商品の研究開発も積極的に進めています。

創業:1918(大正7)年11月、設立:1946(昭和21)年11月

所在地:長野県伊那市西箕輪2701

資本金:1億円

従業員数:290名

代表者:代表取締役社長・花岡周一郎

主力事業:味噌醸造販売および加工食品製造販売

 ウェブサイト: https://www.hanamaruki.co.jp/

月桂冠株式会社

1637(寛永14)年、京都伏見で創業。1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が酒造りに科学技術を導入する必要性から日本酒メーカー初の研究所創設(現・月桂冠総合研究所)。1905年に月桂冠を商標登録。日本初の四季醸造システムを備えた酒蔵や新規醸造法により高品質の酒造りを実現。輸出と米国月桂冠との両輪で世界に酒を広めている。地元では月桂冠大倉記念館を開設、歴史的風土を生かし、酒文化を発信しています。

創業:1637年(寛永14年)、設立:1927(昭和2)年5月

所在地:京都市伏見区南浜町247番地

資本金:4億9,680 万円

従業員数:351名 ※2023年4月1日現在

代表者:代表取締役社長・大倉治彦

主力事業:日本酒、リキュール等の製造販売

ウェブサイト: https://www.gekkeikan.co.jp/

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