食品スーパー 3割が「赤字」 値上げラッシュで「特売」「安売り」負担に

TDBのプレスリリース

株式会社帝国データバンクは、食品スーパーの現状と今後の展望について調査・分析を行った。

<調査結果(要旨)>

  1. 食品スーパー、3割が「赤字」 業績悪化は過去最高 「特売」「値下げ」の負担重く

  2. 地方を中心に業績悪化が目立つ 「赤字」割合、最高は鳥取県の71.4%

調査対象:全国のスーパーストア業(GMSを含む)及び食品スーパーを対象に調査・分析を行った

調査期間:2023年9月末時点

調査機関:株式会社帝国データバンク

食品スーパー、3割が「赤字」 業績悪化は過去最高 「特売」「値下げ」の負担重

年間3万品目を超える値上げラッシュのなか、地場の中小食品スーパーが苦境に立たされている。国内で食品スーパー事業(GMSを含む)を展開する企業を調査した結果、2022年度の損益状況が判明した約1100社のうち、31.3%にあたる349社が「赤字」だった。前年度から「減益」(37.5%)となったケースを合わせた「業績悪化」の割合は食品スーパー全体の約7割に達し、コロナ禍前後の水準を上回って過去最高を更新した。

食品スーパーでは、外食から自炊への回帰など節約志向の高まりでスーパーなどを利用する顧客層の拡大が追い風となっている。また、帝国データバンクが今年7月に「価格転嫁の動向」について調査した結果、食品スーパーの4割超が食品などの仕入れ値上昇に対して「50%以上」の価格転嫁ができていると回答した。価格転嫁率の平均も47.0%と全業種平均(43.6%)に比べて相対的に高いほか、2022年度の売上高では4社に1社が前年度から増収を確保していた。

一方で、電気・ガス代など水道光熱費、人手不足や最低賃金の上昇によるパート・アルバイトの人件費など「インフラ」コストの増加分は、顧客の理解を得られにくいことから価格転嫁していない食品スーパーも多く、収益を押し下げる要因となっている。また、ディスカウントストアやドラッグストアなど他業態の進出、大手スーパー・量販店を中心とした割安なPB商品の集客力に対抗するため、「特売」など値下げ戦略を取らざるをえなかった地場食品スーパーもあり、値上げによる増収効果を十分に享受できず、利益面で大きく悪化したケースが目立った。

 地方を中心に業績悪化が目立つ 「赤字」割合、最高は鳥取県の71.4%

「赤字」となった食品スーパーの割合を都道府県別(本社所在地)にみると、最も赤字割合が高いのは「鳥取県」で唯一70%を超えた。人口減少で来店が見込める商圏が縮小し、地場スーパーの撤退や閉店といった事態も発生するなか、当地のスーパーのほとんどが赤字経営と厳しい状態だった。「徳島県」(60.0%)や「滋賀県」「岐阜県」(各50.0%)など、地方を拠点とする食品スーパーで利益確保が難しくなっている。

セルフレジ導入などのコスト削減、総菜の充実で粗利確保の動きも目立つ

食品スーパー業界では近年、人口密集地の都市部でも大手同士の経営統合や、地方への新規出店も相次ぐなど寡占化が進んでいる。一方で、地域に密着して営業を続けてきた地場の中小スーパーでは、スケールメリットによる低価格化や店舗設備の新しさ、割安なPB品の充実ぶりに対抗できず、人口減少などによる限られた商圏で集客力を維持するための「値下げ」など、単純な価格競争に陥りやすい。仕入れ値の価格転嫁以上に増加する電気・ガス代など、経営努力ではコントロールできないコスト高も追い打ちとなり、赤字や減益、閉店が相次ぐ要因となっている。

一方で、客足好調な地場スーパーでは、扉付きの冷凍・冷蔵庫の導入による節電で光熱費を圧縮するほか、セミセルフレジの導入や商品の自動発注などデジタル化による省力化といったコスト削減で粗利の確保を目指すケースが多くみられる。独自性を打ち出しやすい惣菜で粗利を確保し、低価格戦略の原資にするスーパーもあり、単純な価格競争以外の訴求力が必要となっている。

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