研究者から、「咀嚼」に関する「脳の反応時間の短縮など、脳の活性化への効果」ついて解説
カルビー株式会社のプレスリリース
朝食欠食による健康リスクは様々な研究でも明らかになっており、朝食習慣の見直しが課題となっています。
今回の調査の結果、朝食を毎日食べている「朝食習慣」がある人の過半数が、体調に問題が無い(目覚めがすっきりする/頭がすっきりする/快調である/気分が良い/身体が軽い/特に自覚することはない)と回答※2しました。朝食を噛んで食べている人は起床後1時間未満で脳が働き始める自覚があり、仕事やアルバイトで設定している目標を達成できている傾向があることがわかりました。また、朝食を食べる頻度についての設問で、同居人がいる人のうち、約7割が朝食を毎日食べていると回答した一方で、同居人なし(一人暮らし)の人は、約6割に下がり、「朝食習慣」を持っている人が少ないことが判明しました。
以上のことから、朝食を毎日食べる人のほうが、食べない人よりも朝の起床時の体調に問題が無いということがわかりました。また、朝食を噛んで食べる人のほうが、噛まない人に比べて起床後の脳の働きを早める傾向があることもわかりました。
春は新生活が始まるタイミングのため、朝食欠食をはじめとした生活習慣が乱れやすくなる可能性があります。正しい「朝食習慣」のニーズは、今後高まっていくと考えられます。
今回の調査に際し、自然科学研究機構 共創戦略統括本部 特任准教授 坂本 貴和子先生からは、「咀嚼は、外界から入力された刺激を脳が認知、判断、処理する過程へ影響を与え、結果的に脳の活性化や反応時間の短縮など、さまざまな効果をもたらすことがわかっています。よく噛む必要のある朝食のほうが、脳をより迅速に覚醒させることにつながると考えます。自分の体や生活そのものに負荷をかけない範囲で、まずは朝食をとる生活を意識しましょう。」とコメントが寄せられました。
【調査結果サマリー】
朝食を毎日食べている人のうち、約6割(57.4%)が「朝の起床時に体調への問題が無い」と回答
朝食を噛んで食べると回答した人の約8割(81.1%)は「起床後1時間未満で脳が働き始める」と回答
朝食を噛んで食べると回答した人の3人に1人(37.3%)は「仕事の目標を達成している」と回答
同居人がいる人は約7割(74.1%)が「朝食を毎日食べている」と回答
同居人のいない(一人暮らし)人は約6割(57.6%)が「朝食を毎日食べている」と回答
※1 朝食:朝に摂る食事のほか、コーヒーやスムージーなどの飲み物も含む
※2 「最近、朝の起床時に自覚する症状はありますか。当てはあるものをいくつでもお知らせください。」について、回答選択肢【目覚めがすっきりする/頭がすっきりする/快調である/気分が良い/身体が軽い/特に自覚することはない】を『体調に問題が無い』と定義し、SA分析をした結果
【調査結果の詳細】
-
毎日の朝食習慣が、起床時の健康をつくる!毎日朝食を食べている人の約6割が、朝の起床時の体調について問題が無いと回答
最近の朝の起床時に自覚する症状について、毎日朝食を食べている人(70.8%)のうち57.4%が、朝の起床時の体調について「問題が無い(目覚めがすっきりする/頭がすっきりする/快調である/気分が良い/身体が軽い/特に自覚することはない )」と回答しました。この結果から、朝食を毎日食べることが1日をスムーズに始められる要因の一つであることが推測されます。
-
朝食を噛んで食べる人の約8割が起床後1時間未満で脳が働き始めると回答
-
朝食を噛んで食べる人のほうが脳の目覚めが良い傾向
起床後の行動時間について、朝起きてからどのくらいで脳が働き始めるかという設問に対し、朝食を噛んで食べる、咀嚼派 (よくかんでいる、まあまあかんでいる、以下咀嚼派)(75.9%)の人のうち81.1%が「起床後1時間未満で脳が働き始める」と回答しました。朝食に咀嚼して食べている人の方が、脳が活性化され、より早くに脳が目覚めることができるという傾向にあるようです。
-
朝食を噛んで食べると答えた人の3人に1人は、仕事での目標を達成したと回答
朝食を噛んで食べる咀嚼派(75.9%)の人のうち、37.3%が仕事上の目標に対して「常に達成できる/おおむね達成できる」と回答しました。朝食をよく噛んで食べることが、仕事の良好なパフォーマンスに繋がる可能性があるということがわかりました。
-
同居人がいる人は約7割が毎日朝食を食べているのに比べ、一人暮らしは6割以下
-
一人暮らしの人は朝食摂食頻度が少ない傾向
一人暮らしをしている人(19.8%)のうち、朝食を毎日食べていると回答した人は57.6%ととなり、同居人がいる層の74.1%に比べて朝食習慣を持っている人が少ないことが判明しました。一人暮らしが始まる春の新生活のタイミングでは、朝食欠食に陥りやすい傾向にあるため、注意が必要です。
【カルビー 朝食に関する意識調査】
定量調査
・調査期間 : 2024年2月16日(金)~ 2月18日(日)
・調査方法 : インターネット調査
・調査対象 : 18歳~69歳の男女
・対象エリア : 全国47都道府県
・有効回答数 : 1,880名
-
坂本 貴和子 先生 (自然科学研究機構 共創戦略統括本部 特任准教授)~調査結果 および 咀嚼と脳の目覚めについて~
● 朝食と体調に関する調査結果について
朝食をきちんととることが習慣づけられている人は、日々ご自身の体調に気を遣っていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。朝の寝起きの時は、からだが一番栄養を欲しているタイミングです。その時にきちんとエネルギーを摂ることは、からだをその日1日きちんと機能させる上でとても大切なことだと思います。
● 咀嚼と脳の目覚めに関する調査結果について
私たちが行った研究によると、咀嚼は、外界から入力された刺激を脳が認知、判断、処理する過程へ影響を与え、結果的に脳の活性化や反応時間の短縮など、さまざまな効果をもたらすことがわかっています。朝食をしっかり噛んで食べた人の多くが覚醒を実感できたという回答は、上記の研究成果からも不思議ではないと思います。
● 咀嚼をすることの意味 -咀嚼によって脳の活動を賦活化(ふかつか)-
噛み切ることに適した切歯とすり潰すことに適した臼歯を併せ持つ人間は、咀嚼することで食物を細かく分解し、胃や腸での消化と吸収を助けます。しっかりよく噛むことは、食べ物をより消化・吸収しやすくすることで、迅速に栄養を全身に巡らせることにつながります。さらに最近の研究では、咀嚼によって脳の活動を賦活化することがわかってきました。
● 咀嚼によって脳が活性化する(脳が目覚める)理由 -リズム運動は脳の覚醒を促す効果-
たとえば歩行や自転車漕ぎなどのリズム運動(無意識で続けることができる運動)には、脳の覚醒を促す効果があることが知られています。咀嚼は、体勢や場所を選ばない、静止状態でもできるミニマムなリズム運動ですので、歩行などと同じく脳の覚醒を促すことにつながっているのではないかと考えられます。
● 朝食をよく噛んで食べることのメリット -寝起きは脳もまだきちんと覚醒していない状況-
朝寝起きの時は、からだも低血糖状態で栄養を必要としていますし、脳もまだきちんと覚醒していない状況です。朝によく噛んで食べることで、胃や腸の負担を軽減しながらいち早くからだ全体へ栄養を行き渡らせることにつながります。加えて咀嚼には脳の覚醒効果があることから、ドリンクなどで朝食を済ませてしまうより、よく噛む必要のある食事のほうが、脳をより迅速に覚醒させることにつながると考えます。
● 脳を目覚めさせる、おすすめ朝食メニュー
-さまざまな感覚を刺激する食材が、脳もより刺激されやすい可能性-
歯ごたえがある食材が好ましいのは当然なのですが、朝はどうしてもきちんと朝食を準備する時間がない人も多いのではないでしょうか。となると、噛みごたえのある食材でできた栄養バーやシリアルなどが選びやすいかもしれません。その中でも、味覚や嗅覚、食感など、さまざまな感覚を刺激する食材が一口の中に含まれていれば、脳もより刺激されやすいのではないかと思います。なにより食べていて楽しいですしね。
● 新生活のシーズンにおける、朝食習慣のアドバイス
-自分の体や生活そのものに負荷をかけない範囲で、まずは朝食をとる生活を意識-
咀嚼による脳の活性を促す上で大切なのは、無理に固いものを食べよう、たくさん噛もう、と意識し過ぎないことです。お口や顎の状態は人それぞれ違いますし、体調も日によって違うため、食材の硬さや噛む回数の最適解は、人それぞれ、日によって異なります。脳を覚醒させるリズム運動のポイントは、無意識で続けられる運動であることです。自分の体や生活そのものに負荷をかけない範囲で、まずは朝食をとる生活を意識しましょう。そしてその中に、できる範囲で良いので、よく噛む食品を選ぶことから始めてみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
1.Kiwako Sakamoto et al., The effect of mastication on human cognitive processing: A study using event-related potentials. Clinical Neurophysiology, 2009, 120, 41-50. DOI: 10.1016/j.clinph.2008.10.001
2. Kiwako Sakamoto et al., The effect of mastication on human motor preparation processing: A study with CNV and MRCP. Neuroscience Research, 2009, 64, 259-266. DOI: 10.1016/j.neures.2009.03.008
3. Kiwako Sakamoto et al., Mastication accelerates Go/No-go decisional processing: An event-related potential study. Clinical Neurophysiology, 2015, 126, 2099-2107. DOI: 10.1016/j.clinph.2014.12.04
【参考データ】
朝食に関する調査:
■朝食は約7割(70.8%)が「毎日食べている」食べていると回答。朝食を食べる理由の1位は「習慣であり、毎日食べるものだから」(60.6%)。
■朝食を食べるタイミングは、朝起きてから15~30分未満が約35%。起床後30分未満に朝食を食べるのは全体の半数を超える結果に。
■食パンや白米・おかゆやの次によく摂っているものは、コーヒー・卵類・乳製品。日本全国で見ると、東日本は白米・おかゆで西日本は食パンが主流な傾向に
■1回の朝食にかける費用は、300円未満が全体の8割を超える結果に。
睡眠と目覚めに関する調査:
■朝の起床時に自覚する症状として、目覚めが悪いと回答した人が28.0%。起きても頭がぼーっとしている/重く感じると回答した人は17.3%という結果に。
■朝食を毎日よく噛んで食べることが快眠に繋がることが判明!快眠であると回答した人(16.8%)のうち、77.1%が「朝食を毎日食べている」と回答。