ヒトにすむ種類のビフィズス菌が、尿毒症毒素の前駆体であるインドールを体に有益なインドール-3-乳酸(ILA)へ変換することを確認~科学雑誌『Gut Microbes』掲載~

ヒトにすむビフィズス菌論文数世界No.1(※1)の森永乳業

森永乳業株式会社のプレスリリース

森永乳業は長年にわたり、ヒトの腸内にすみ、様々な健康効果をもたらしていると考えられているビフィズス菌の基礎研究を行っています。また、京都大学と産学共同講座「ヒト常在性ビフィズス菌(HRB)研究講座」※2を開設し、その成果を皆さまの健康づくりや当社素材の開発に活かしています。このたび、本産学共同講座で実施した研究において、ヒトにすむ種類のビフィズス菌が、有害物質の前駆体を有益な物質へ変換することが明らかになりましたので、ご報告いたします。なお、本研究成果は、科学雑誌「Gut Microbes」に2024年5月5日に掲載されました※3。

1.研究背景

 腸内細菌が産生するインドールは、肝臓で代謝されインドキシル硫酸という代表的な尿毒素に変換されます。インドールは腎機能が正常に機能している際は尿とともに体外へ排出されますが、腎機能の低下により排尿量が減少すると血中に蓄積されてしまうため、このインドールおよびインドキシル硫酸が腎不全の進行促進に関与していることが明らかにされています。今回、当社のビフィズス菌を含むヒトにすむ種類のビフィズス菌(HRB)が腸内環境へ与える影響を調べる一環として、腸内のインドール濃度を低下させることができるか、またそのメカニズムについて検証を行いました。

2.研究内容と結果

①大腸菌が産生したインドールの濃度をヒトにすむ種類のビフィズス菌が低下させる

 インドールを産生することが知られている大腸菌を培養し、この培養上清と様々なヒトにすむ種類のビフィズス菌を混ぜて培養したところ、大腸菌が産生したインドールの濃度を大幅に低下させるビフィズス菌が存在することが明らかとなりました(図1)。

           【図1 ヒトにすむ種類のビフィズス菌によるインドール濃度低下作用】

②ヒトにすむ種類のビフィズス菌はインドールをトリプトファン(Trp)やインドール-3-乳酸(ILA)に変換する

 次にビフィズス菌がインドールをどのように減少させているかを調べるために、安定同位体でラベル化したインドールを培地に添加し、ヒトにすむ種類のビフィズス菌を培養したところ、アミノ酸の1種であるトリプトファン(Trp)や、脳機能の改善や免疫システムの強化をすると考えられているインドール-3-乳酸(ILA)に変換されていることが明らかとなりました(図2)。

          【図2 ラベル化したインドールからビフィズス菌により変換された物質】

③インドールからトリプトファン(Trp)を経由し、インドール-3-乳酸(ILA)に変換する代謝経路を解明

 インドールが変換された物質からインドールの代謝経路を予測し、代謝に関与する遺伝子を推定しました。インドールからトリプトファン(Trp)に変換する酵素tryptophan synthase β subunit (TrpB)、トリプトファン(Trp)からインドール-3-乳酸(ILA)に変換する酵素aromatic lactate dehydrogenases (ALDH)をそれぞれコードする遺伝子(trpB, aldh)を欠損させたヒトにすむ種類のビフィズス菌を作製して、図2と同様の実験を行いました。その結果、trpB欠損株ではトリプトファン(Trp)やインドール-3-乳酸(ILA)がほとんど産生されず、aldh欠損株ではトリプトファン(Trp)が蓄積していたことから、二つの遺伝子がこの代謝に重要であることが明らかとなりました(図3)。

        【図3 インドールからインドール-3-乳酸(ILA)への代謝経路と関与遺伝子】

④重要な遺伝子2つを保有している腸内細菌はビフィズス菌のみ

 最後に、インドールを変換させる重要な遺伝子2つをどのような腸内細菌が保有しているかを調べるため、アメリカ国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のデータベースに登録されている品質の高い960種11,943株ヒト腸内細菌株のゲノムを対象に解析を行いました。その結果、trpBとaldh両方の遺伝子を保有している菌株はわずか95株のみで、そのすべてはビフィズス菌(Bifidobacterium属)でした。

 以上の結果から、当社商用株を含むヒトにすむ種類のビフィズス菌は、有害物質の前駆体となるインドールを体内で有用な物質であるインドール-3-乳酸(ILA)に変換させることで、我々の健康を守っている可能性が示されました(図4)。森永乳業ではこれからも、人々の健康に貢献できる正しい情報と優れた素材を発信できるよう、努めてまいります。

                 【図4 本研究のまとめ】

※1 ナレッジワイヤ社調べ、2024年1月時点(PubMed・医中誌WEBにて企業による研究論文数で世界一)

※2 2020年10月1日より、ヒトの腸内に棲息するビフィズス菌(Human residential Bifidobacterium; HRB)と宿主であるヒトとの共生メカニズムを解明し、我々の健康に密接な関りを持つプロバイオティクス素材が有する保健効果の分子機序(作用機序)解明に向けた取り組みを加速すべく、京都大学と産学共同講座「ヒト常在性ビフィズス菌(HRB)研究講座」を開設、様々な研究発表をおこなっております。

URL: https://www.morinagamilk.co.jp/release/newsentry-3489.html

※3 「Human gut-associated Bifidobacterium species salvage exogenous indole, a uremic toxin precursor, to synthesize indole-3-lactic acid via tryptophan」 Cheng Chung Yong, Takuma Sakurai, Hiroki Kaneko, Ayako Horigome, Eri Mitsuyama, Aruto Nakajima, Toshihiko Katoh, Mikiyasu Sakanaka, Takaaki Abe, Jin-Zhong Xiao, Miyuki Tanaka, Toshitaka Odamaki and Takane Katayama

Gut Microbes 05 May 2024

URL:http://dx.doi.org/10.1080/19490976.2024.2347728 

◆PDF版はこちら

https://prtimes.jp/a/?f=d21580-1108-9e336686cf01d043ac788277ecc0c215.pdf

Follow Twitter Facebook Feedly
SHARE
このページのURLとタイトルをコピー
お使いの端末ではこの機能に対応していません。
下のテキストボックスからコピーしてください。