尾西食品のプレスリリース
尾西食品株式会社(本社:東京都港区 代表取締役社長 市川伸介 ※以下、尾西食品)は、防災食・備蓄のリーディングカ ンパニーとして、”アルファ米”をはじめとする非常食を製造・販売。専門家のアドバイス、被災者の声を通して日常の防災意識を高める活動を進め、2021 年3月より、公式サイトにて防災コラムの発信をしております。
今回は、 2023 年 6 月にもご登壇いただいたミネルヴァベリタスの本田茂樹氏に、令和 6 年度介護報酬改定の影響を含めた介護 BCP 早期策定の必要性について再度お伺いしました。本田氏は、厚生労働省老健局が制定した「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」の検討委員会委員長を務められ、介護施設・事業所における BCP 策定に関するコンサルタントに携わっておられます。またその豊富なご経験から、 BCP 策定に関するご講演や研修会などにも多数ご登壇。著書には、 BCP 策定の手引書となる「介護施設・事業所のための BCP 策定・見直しガイド」 ( 出版:社会保険研究所 ) もあります。
ミネルヴァベリタス株式会社 顧問 本田 茂樹 様
〜BCPの策定について〜
――令和6年度介護報酬改定における減算について
昨年介護BCP策定義務化は、従うべき運営基準との位置づけでした。今回の令和6年度介護報酬改定においては業態と条件の掛け合わせにより様々な経過措置はあるものの、未策定の介護施設に対する介護報酬の減算が決定され、減算は、行政機関による運営指導等で不適切な取り扱いを発見した時点ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡及して適用することも明記されました。減算が目的ではないですが、しっかりやって欲しいという意向の表れだと思います。
――介護BCPを策定する意義について
前回お話しした通り、介護施設が提供しているサービスは、利用者やその家族の生活と直結しており、万一止まった場合でも、できるだけ短い時間で復旧し、影響を最小限に抑え、サービスを継続する必要があります。継続するためには、事前の想定で職員が3割、5割、8割欠けたらそれぞれここまでのサービスを提供することと、決めておくことが重要です。例えば1割の職員になっても、食事介助と排泄介助だけは行いますと決めておくことで、職員が後ろめたくなく決められたサービスが提供できるのです。平常時に決めておかないと、災害時「いつもやっているのだからできるはず、やりましょう」という意見が往々にして出てきます。一晩なら頑張れることもあるでしょう、しかしいつ終わるか解らない非常時に、サービスを提供し続けるのは難しいものです。職員が入所者に対して申し訳なく思うのは、気持ちとしては理解できますが、そこで職員が疲弊しては業務を続けられません。いたずらに職員に負担をかけるのではなく、緊急時だからこそ業務を削減し、カットして、必要業務だけに絞って確実に業務を継続することが求められているのです。
――能登半島地震での気づき
能登半島地震では、多くの介護従事者が被災者となりました。自身が被災しながら、家族が怪我をしていても献身的に業務を続ける職員の話も報道されましたが、災害が起きると現場にいる人しか稼働できません。能登半島特有の地形もあり、交通網が断絶された地域ではライフラインの復旧や支援が届くまで相当な時間がかかりました。そんな時、備蓄が有ると無いとでは全然違います。とにかく飲むものと食べるものがあれば、本格的な支援が届くまでの数日間、職員にその場に残り急場を凌いでもらうための活力や希望となります。輸送手段の確保が難しい場合に備え、水や食料は介護施設毎に備蓄するのが理想ですが、必ずといってよいほど場所が無いとのお悩みを耳にします。ただ高齢者は水や食料が無ければすぐに体調に影響が出ますので、せめて食事介助、排泄介助に必要な備蓄と、業務継続に必要な職員の人数分の備蓄については場所を工夫し、地域特性に合わせた最低限の量を確保しておく必要があると思いました。
〜BCP策定後の運用について〜
――食事提供に関する訓練について
BCPにおける訓練の実施は、今回の介護報酬減算の対象とはなっていませんが、訓練を実施している施設と実施していない施設では、被災時の動きが全く違いますので、積極的な訓練の実施をお勧めしています。食事提供に関する訓練では、食事提供が限られた人数の職員で提供可能かどうかを確認したり、ローリングストックで食べてみたりしていただきたいです。食べてみると良さがわかるし、実際に被災した段階でどういった調理をするのかということが事前に把握でき良い訓練になります。例えば水で良いのか、熱湯が必要なのか、水だと60分かかるので、もっと早く取り掛からなくてはいけないと初めて気づくなど、解らないことが洗い出せます。単に備蓄してあるのと、備蓄内容を理解しているのとでは違います。また、これからの高齢化社会での備蓄は、介護度も勘案する必要がでてくると思います。BCPを作る人は実際に食事提供をしている人とは限りませんので、自身の施設の入所者の介護度を把握していない場合もあります。備蓄の内容は、BCPで想定した被害状況を勘案し、管理栄養士などと連携し整えていくのが良いと思います。
――災害時における備蓄の重要性について
今回の能登半島地震でショックだったのは、個人で備蓄をしている人がとても少なかったことです。実際に被災しないと備蓄品を準備する行動にはなかなか移らないようですが、ひとたび災害が起これば備蓄の重要性は計り知れません。2013年12月に発表になった「首都直下地震の被害想定と対策について」の中で、備蓄は最低3日分、推奨1週間分となっています。これを元に3日分あれば良いという意見が強かったわけですが、能登半島地震とは環境が異なるとはいえ、首都圏の人口の多さや山手線外周部を中心に広範に分布する木密地域、そしてどこからも助けが来ない状況を想定すれば、少なくとも1週間は持ちこたえなければならないと思います。それは介護施設で働く職員の方に、自宅でも是非備蓄をしてくださいということでもあります。
介護報酬減算が決まったことで、早急にBCP策定の対応をする必要があります。もし未策定であれば、まず作り始めてください。ガイドラインやひな形(例示入り)があります。たいへん懇切丁寧な書き方になっていますので、是非活用してみてください。
本田茂樹(ほんだ しげき)氏経歴:三井住友海上火災保険株式会社入社後、MS&ADインターリスク総研株式会社を経て、ミネルヴァベリタス株式会社顧問 リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。
厚生労働省 介護施設のBCP策定 (厚生労働省公式ホームページへのリンク)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/douga_00002.html
本文はこちら https://www.onisifoods.co.jp/column/detail.html?no=22
今回は、 2023 年 6 月にもご登壇いただいたミネルヴァベリタスの本田茂樹氏に、令和 6 年度介護報酬改定の影響を含めた介護 BCP 早期策定の必要性について再度お伺いしました。本田氏は、厚生労働省老健局が制定した「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」の検討委員会委員長を務められ、介護施設・事業所における BCP 策定に関するコンサルタントに携わっておられます。またその豊富なご経験から、 BCP 策定に関するご講演や研修会などにも多数ご登壇。著書には、 BCP 策定の手引書となる「介護施設・事業所のための BCP 策定・見直しガイド」 ( 出版:社会保険研究所 ) もあります。
ミネルヴァベリタス株式会社 顧問 本田 茂樹 様
〜BCPの策定について〜
――令和6年度介護報酬改定における減算について
昨年介護BCP策定義務化は、従うべき運営基準との位置づけでした。今回の令和6年度介護報酬改定においては業態と条件の掛け合わせにより様々な経過措置はあるものの、未策定の介護施設に対する介護報酬の減算が決定され、減算は、行政機関による運営指導等で不適切な取り扱いを発見した時点ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡及して適用することも明記されました。減算が目的ではないですが、しっかりやって欲しいという意向の表れだと思います。
――介護BCPを策定する意義について
前回お話しした通り、介護施設が提供しているサービスは、利用者やその家族の生活と直結しており、万一止まった場合でも、できるだけ短い時間で復旧し、影響を最小限に抑え、サービスを継続する必要があります。継続するためには、事前の想定で職員が3割、5割、8割欠けたらそれぞれここまでのサービスを提供することと、決めておくことが重要です。例えば1割の職員になっても、食事介助と排泄介助だけは行いますと決めておくことで、職員が後ろめたくなく決められたサービスが提供できるのです。平常時に決めておかないと、災害時「いつもやっているのだからできるはず、やりましょう」という意見が往々にして出てきます。一晩なら頑張れることもあるでしょう、しかしいつ終わるか解らない非常時に、サービスを提供し続けるのは難しいものです。職員が入所者に対して申し訳なく思うのは、気持ちとしては理解できますが、そこで職員が疲弊しては業務を続けられません。いたずらに職員に負担をかけるのではなく、緊急時だからこそ業務を削減し、カットして、必要業務だけに絞って確実に業務を継続することが求められているのです。
――能登半島地震での気づき
能登半島地震では、多くの介護従事者が被災者となりました。自身が被災しながら、家族が怪我をしていても献身的に業務を続ける職員の話も報道されましたが、災害が起きると現場にいる人しか稼働できません。能登半島特有の地形もあり、交通網が断絶された地域ではライフラインの復旧や支援が届くまで相当な時間がかかりました。そんな時、備蓄が有ると無いとでは全然違います。とにかく飲むものと食べるものがあれば、本格的な支援が届くまでの数日間、職員にその場に残り急場を凌いでもらうための活力や希望となります。輸送手段の確保が難しい場合に備え、水や食料は介護施設毎に備蓄するのが理想ですが、必ずといってよいほど場所が無いとのお悩みを耳にします。ただ高齢者は水や食料が無ければすぐに体調に影響が出ますので、せめて食事介助、排泄介助に必要な備蓄と、業務継続に必要な職員の人数分の備蓄については場所を工夫し、地域特性に合わせた最低限の量を確保しておく必要があると思いました。
〜BCP策定後の運用について〜
――食事提供に関する訓練について
BCPにおける訓練の実施は、今回の介護報酬減算の対象とはなっていませんが、訓練を実施している施設と実施していない施設では、被災時の動きが全く違いますので、積極的な訓練の実施をお勧めしています。食事提供に関する訓練では、食事提供が限られた人数の職員で提供可能かどうかを確認したり、ローリングストックで食べてみたりしていただきたいです。食べてみると良さがわかるし、実際に被災した段階でどういった調理をするのかということが事前に把握でき良い訓練になります。例えば水で良いのか、熱湯が必要なのか、水だと60分かかるので、もっと早く取り掛からなくてはいけないと初めて気づくなど、解らないことが洗い出せます。単に備蓄してあるのと、備蓄内容を理解しているのとでは違います。また、これからの高齢化社会での備蓄は、介護度も勘案する必要がでてくると思います。BCPを作る人は実際に食事提供をしている人とは限りませんので、自身の施設の入所者の介護度を把握していない場合もあります。備蓄の内容は、BCPで想定した被害状況を勘案し、管理栄養士などと連携し整えていくのが良いと思います。
――災害時における備蓄の重要性について
今回の能登半島地震でショックだったのは、個人で備蓄をしている人がとても少なかったことです。実際に被災しないと備蓄品を準備する行動にはなかなか移らないようですが、ひとたび災害が起これば備蓄の重要性は計り知れません。2013年12月に発表になった「首都直下地震の被害想定と対策について」の中で、備蓄は最低3日分、推奨1週間分となっています。これを元に3日分あれば良いという意見が強かったわけですが、能登半島地震とは環境が異なるとはいえ、首都圏の人口の多さや山手線外周部を中心に広範に分布する木密地域、そしてどこからも助けが来ない状況を想定すれば、少なくとも1週間は持ちこたえなければならないと思います。それは介護施設で働く職員の方に、自宅でも是非備蓄をしてくださいということでもあります。
介護報酬減算が決まったことで、早急にBCP策定の対応をする必要があります。もし未策定であれば、まず作り始めてください。ガイドラインやひな形(例示入り)があります。たいへん懇切丁寧な書き方になっていますので、是非活用してみてください。
本田茂樹(ほんだ しげき)氏経歴:三井住友海上火災保険株式会社入社後、MS&ADインターリスク総研株式会社を経て、ミネルヴァベリタス株式会社顧問 リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。
厚生労働省 介護施設のBCP策定 (厚生労働省公式ホームページへのリンク)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/douga_00002.html
本文はこちら https://www.onisifoods.co.jp/column/detail.html?no=22