「薬理と治療(2024 年 52 巻 6 号)」に論文が掲載されました
森永製菓株式会社のプレスリリース
森永製菓株式会社(東京都港区芝浦、代表取締役社長・太田栄二郎)では、ぶどう糖含有ラムネ菓子(以下、ラムネと記述)の認知機能への影響について研究を進めています。この度、自治医科大学医学部の間藤卓教授監修、芝浦工業大学システム理工学部生命科学科の佐藤大樹教授との共同研究により、ラムネを摂取することによって、ポジティブな気分で認知テストに取組み、一部の脳活動が活性化し、選択的注意*力が向上することが示されました。
*選択的注意︓様々な刺激の中である特定の刺激に注意をむけること。必要な情報のみを選択し,それ以外の情報はノイズとして捨てること。
■研究の背景と内容
ラムネ摂取により、ワーキングメモリや持続的注意力などの認知テストスコアが向上すること 1)、e-スポーツ中の脳波が集中状態にあることを示し、それに続く認知テストにおいて情報処理速度や持続的注意力が向上すること 2)が明らかにされてきました。しかし、認知スコア上昇時の脳活動や心理状態については十分に解明されていませんでした。今回、ラムネ摂取によって認知テストに集中して取組み、脳活動や認知テストスコアが向上するかについて、ヒト試験を行いました。
■研究方法
健常な若年成人男女 22 名が、ラムネを摂取した時の認知機能、脳活動、自律神経活動、心理状態へ与える影響をクロスオーバー試験法にて評価しました。認知機能はワーキングメモリとフランカー課題、脳活動は fNIRS(機能的近赤外分光法)による脳血流測定、自律神経活動は心電図の心拍変動解析、心理状態は EACL(感情・覚醒チェックリスト)、POMS2 短縮版、VAS アンケートにて測定しました。これら一連の測定を試験食品摂取前および摂取 30 分後に行い、その変化量を求めました。試験食品には、ラムネ(含水結晶ぶどう糖 90%含有)およびラムネ風味のプラセボ(ぶどう糖不含)29g を用い、参加者は日を変えて両方の試験食品について測定を行いました。
計画通りに試験を実行できた 17 名(平均年齢 23.4 士 2.1 歳)について、ラムネ摂取時とプラセボ摂取時の結果を比較しました。
■研究結果・考察
ラムネ摂取時はプラセボ摂取時と比較して、選択的注意力の指標であるフランカー課題の正答率が有意に上昇(図1)し、その時の脳血流(オキシヘモグロビン信号)が有意に増大(図2)しました。また、EACLの「エネルギー覚醒+」スコア(図3)とPOMS2短縮版の「活気‐活力」スコア(図4)が有意に上昇し、反対にネガティブ気分尺度である「怒り‐敵意」とTMDスコアが有意に低下しました。
この結果から、ラムネを摂取することによって認知テストにポジティブな気分で集中して取り組み、脳の一部の機能の活動が活性化することが示唆されました。本研究では集中して認知テストに取組んでいる時に脳の一部の活動が活性化していることを現象として捉えることができましたが、それらの関連性やメカニズムについては未解明な点も多く、今後の更なる研究が望まれます。
なお、本研究成果は、査読付き学術誌「薬理と治療(2024年52巻6号)」(2024年6月27日発行)に、「ぶどう糖含有ラムネ菓子摂取が健康な若年成人の認知テストに伴う脳活動および心理生理状態に与える影響 ―ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験―」として論文掲載されました。
この結果は健康な成人における研究です。ラムネに限らず、食事やおやつは栄養のバランスを考慮して食べることが大切です。特に血糖値に問題がある方はご注意ください。
森永製菓では、今後もラムネ並びにぶどう糖に関する研究に継続的に取り組んでまいりますので、ご期待ください。
【参考文献】
1)稲垣宏之ら. 薬理と治療JPT. 48(4), 599(2020)
2)Furukado R. et al. J. Digital Life. 2, 11(2022)
■研究概要
【実施時期】2023年9月~11月
【対象者】18~29歳の健常な男女22名(最終解析対象者17名)
【試験食品】含水結晶ぶどう糖90%含有ラムネ菓子、ラムネ風味プラセボ菓子(ぶどう糖不含)
【摂取期間】単回摂取
【試験方法】ランダム化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験
【検査項目】認知テスト、脳活動(fNIRS)、自律神経(心電図)、心理質問紙