【共同研究】信州大学×東洋ライス 米糠摂取により腸内の有用菌の増加や腸内細菌の多様性が高まることについて、動物実験で証明

東洋ライス株式会社のプレスリリース

国立大学法人信州大学農学部 食品免疫機能学研究室 田中 沙智 准教授、信州大学大学院 総合理工学研究科 山口 司恩らによる研究グループおよび東洋ライス株式会社(銀座本社:東京都中央区、代表取締役:雜賀慶二)は、玄米粒を糠層、亜糊粉層、デンプン層(胚乳)の3画分に分画し、各米糠画分摂取による腸内細菌への影響を解明するための共同研究を行いました。マウスを用いた動物実験において、玄米粒の糠層および亜糊粉層の摂取によるマウスの腸内環境に対する影響を明らかにしました。玄米食者の腸内細菌叢は多様性が高い傾向にあり、玄米食が腸内環境を整えることが知られていますが、特徴の異なるいくつかの層構造を有する玄米粒の米糠画分摂取による腸内細菌叢への影響は不明でした。本研究において、糠層摂取群や亜糊粉層摂取群で健康の維持増進に有用と報告されている各々異なる腸内細菌が増加し、亜糊粉層摂取群では一般的にヨーグルトで知られる乳酸菌の一種である「Lactobacillus gasseri(ガセリ菌)」が増加したとともに、糠層摂取群と比較し腸内細菌叢の多様性が高まることを初めて明らかにしました。これにより、主食である米食(ごはん)の選択肢として白米や玄米のみでなく、亜糊粉層が残っていることで玄米の栄養を残しつつ白米と同じ食味である米など、消費者の個々の嗜好に合わせた栄養と食味を両立する米の普及拡大や消費者の健康増進に新たな可能性が見出されました。

腸内細菌の多様性が高まることは、腸管バリア機能の向上や免疫応答の調節など、健康維持と密接に関連することが他の研究でも示唆されており、多様性が高いことのメリットとして、多様な腸内細菌の菌種、すなわち代謝系が混在している方が、その代謝物も多様になり、多様性が高まることで生体に有用な細菌の代謝産物が増加し、疾病や生活習慣病などの予防につながります。

本研究成果は、食品免疫機能学研究室 田中 沙智 准教授、信州大学大学院 総合理工学研究科 山口 司恩らによる研究グループが12月2・3日に開催された「日本食品免疫学会設立20周年記念学術大会(JAFI2024)」にて「米糠画分を摂取させたマウスの腸内細菌叢解析」という演題で発表を行いました。

【目的】

本研究は、玄米の組織である「糠層」「亜糊粉層」に含有される食物繊維やオリゴ糖が腸内の有益な細菌を増加させ、腸内環境を向上させるプレバイオティクスとして機能する可能性があると仮説を立て、マウスに米画分をそれぞれ摂取させ、糠層、亜糊粉層および胚乳の腸内細菌に対する影響を明らかにすることを目的としました(図1)。

図1.本研究の背景と目的

【方法】

C57BL/6マウスをコントロール群、糠層摂取群、亜糊粉層摂取群、胚乳摂取群の4群に分けた。長野県産コシヒカリの各米画分を90分浸漬した後に炊飯し、乾燥させたものを試料とした。コントロール群には通常飼料を、糠層、亜糊粉層および胚乳摂取群には、通常飼料にそれぞれの画分を5%配合した飼料を5 g/mouse/dayで摂取させた。摂取開始から8週間後にマウスから盲腸内容物を採取し、次世代シーケンサーによってα多様性および腸内細菌叢組成を解析した。

【結果】

腸内細菌のα多様性について解析したところ、亜糊粉層摂取群において、多様性を示す指標であるOTU、ACE、Chao1がコントロール群と比較して増加傾向を示し、糠層摂取群と比較して高値を示した(図2)。

図2.米画分を摂取させたマウスの腸内細菌叢のα多様性解析結果

また、腸内細菌叢の組成を解析した結果、科レベルでは糠層摂取群においてBacillaceaeの割合が、亜糊粉層摂取群でLactobacillaceaeの割合がコントロール群と比較して増加した。さらに、種レベルでは、糠層摂取群でBacillus licheniformis が、亜糊粉層摂取群ではLactobacillus gasseriが顕著に増加した(図3)。以上より、糠層および亜糊粉層で増加した菌種はプロバイオティクスとして用いられる菌種であることから、米糠画分はプレバイオティクスとして機能することが示唆された。

図3.米画分を摂取させたマウスの腸内細菌叢の組成の結果

東洋ライスは、独自の加工技術により亜糊粉層を含む糠成分をおいしく摂取できる「金芽米(米粒表面に亜糊粉層を残した白米)」「金芽ロウカット玄米(玄米粒表面の硬く防水性の高いロウ層を除去した玄米)」を開発、「医食同源米」の一つとして全国自治体をはじめ、小売店等でも展開をしています。これまで、これらのコメの継続摂取による「体調良好」「お通じが良くなった」等の主観的な感想が多く寄せられてきましたが、本研究の結果から、腸内細菌叢のアプローチからこれらを実証できる可能性があると考えています。

昨今の医療費増大、食料自給率低下、米生産者不足等の一助になるべく、今後も研究を通じ、日本のコメの価値向上に取り組んでまいります。

【国立大学法人信州大学農学部の概要】

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