腸内細菌同士の協力関係を利用した新たな腸内細菌叢の改善方法を示唆

meijiのプレスリリース

腸内細菌同士の協力関係を利用した新たな腸内細菌叢の改善方法を示唆 マルトビオン酸が、健康維持に重要な役割を果たすフェカリバクテリウム属細菌を腸内で 効率的に増やすことを明らかにし、そのメカニズムを解明 ~2月12日 国際学術誌The ISME Journalに掲載~
 
 明治ホールディングス株式会社(代表取締役社長CEO:川村 和夫)と株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)は、グルコン酸を構成要素とするマルトビオン酸※1が、健康維持に重要な役割を果たすフェカリバクテリウム属細菌※2を腸内で効率的に増やすことを明らかにし、そのメカニズムを解明しました。
本研究成果は2月12日に微生物生態学のトップジャーナルである国際学術誌The ISME Journalのオンライン版にて公開されました。
https://doi.org/10.1093/ismejo/wraf027
 
【研究成果の概要】
マルトビオン酸が、腸内細菌※3の中でも特に健康維持に重要なフェカリバクテリウム属細菌を増やすことを明らかにしました(図1)。
フェカリバクテリウム属細菌が、他の腸内細菌との協力関係を利用して増殖していることが明らかとなり、複雑な腸内細菌同士の協力関係の一端を明らかにしました(図2)。
 

図1 マルトビオン酸摂取前後のフェカリバクテリウム属細菌の割合
 
 

 
図2 パラバクテロイデス属細菌とフェカリバクテリウム属細菌の協力関係のイメージ図
 
【研究の目的】
フェカリバクテリウム属細菌は、腸内で抗炎症作用を持つ酪酸の産生や腸内環境の改善など、人々の健康維持に重要な役割を果たしています。しかし、この細菌は酸素に弱く、生きた菌として摂取することが難しいため、腸内で効率的に増やす方法の開発が求められていました。
 
【研究概要】
試験管内での培養実験により、マルトビオン酸やラクトビオン酸といったグルコン酸を構成要素とするオリゴ糖がフェカリバクテリウム属細菌を増やすことを発見しました。
健康な成人を対象とした試験で、2週間のマルトビオン酸の摂取により、腸内のフェカリバクテリウム属細菌が有意に増加することを確認しました。
腸内細菌の一種であるパラバクテロイデス属細菌が、マルトビオン酸を代謝してフェカリバクテリウム属細菌の増殖を促進する物質を作り出すことを明らかにしました。
 
【研究成果の活用】
本研究では、マルトビオン酸が健康維持に重要なフェカリバクテリウム属細菌を増やすことを見出しました。また、複雑な腸内細菌同士のネットワークを明らかにすることで、腸内細菌叢の新たな制御方法が示されました。この知見を活かし、腸内細菌叢の改善を介した健康増進に向けた研究開発を進めてまいります。
 
※1 マルトビオン酸は、グルコースにグルコン酸が結合した構造を持つ難消化性のオリゴ糖で、はちみつに含まれる食経験豊富な成分です。
※2 フェカリバクテリウム属細菌は、健康維持に重要な働きをする細菌の一つです。抗炎症作用を持つ酪酸を産生することで知られており、その減少はさまざまな疾患との関連が報告されています。
※3 腸内細菌は、私たちの腸に生息している微生物でその数はヒトの細胞数に匹敵するといわれています。食物の消化、免疫機能の調節、病原菌の増殖抑制など、健康維持に重要な役割を果たしています。
 
■論文内容
 
【タイトル】
腸内細菌の相互作用を介したグルコン酸含有オリゴ糖の標的プレバイオティクス作用によるフェカリバクテリウム属の増殖促進
(Targeted prebiotic application of gluconic acid-containing oligosaccharides promotes Faecalibacterium growth through microbial cross-feeding networks)
【方法】
試験管内での腸内細菌培養実験により、さまざまな糖の中からフェカリバクテリウム属細菌を増やす候補物質を探索しました。
健康な成人を対象に、マルトビオン酸を2週間(1日あたり3グラム相当)摂取する試験を実施しました。
遺伝子解析と代謝物質分析により、腸内細菌の変化と作用メカニズムを詳細に調べました。
【結果】
マルトビオン酸やラクトビオン酸といったグルコン酸を構成要素とするオリゴ糖が、試験管内での培養実験においてフェカリバクテリウム属細菌を増やすことを発見しました。
ヒト対象研究において、マルトビオン酸の摂取により腸内のフェカリバクテリウム属細菌が有意に増加することを確認しました。
パラバクテロイデス属細菌がマルトビオン酸などの物質を代謝して、フェカリバクテリウム属細菌の増殖を促進する物質(グルクロン酸)を作り出すことを明らかにしました。
【考察】
本研究は、腸内細菌同士の相互作用を利用した新しい腸内細菌叢制御の可能性を示すもので、今後フェカリバクテリウム属細菌を増やすことによる健康増進に新たな可能性を開くものと考えられます。
 
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