【レポート】4月12日はパンの日 ご飯文化の日本で広がるパン食の新潮流

~朝ごパンから晩ごパンへ、「ディナーブレッド」が拓く未開拓市場~

株式会社ミンテルジャパンのプレスリリース

 市場調査会社「Mintel Group」の日本法人である株式会社ミンテルジャパン(東京都千代田区)は、ミンテルジャパンレポート「パンと焼き菓子のトレンド – 日本 – 2024年」にて、世界的には「体験」重視のベーカリーが人気を集める一方で、日本市場では市場縮小や倒産増加という厳しい状況に直面していることを明らかにしました。また、夕食時のパン消費という新たな成長領域の可能性も浮かび上がっています。

※ミンテルは、ロンドン本社を含め13か国にオフィスを構え、美容やライフスタイル、食品・飲料分野における消費者調査に強みを持つ市場調査会社。2021年より日本市場向けにミンテルジャパンレポートを発刊。

 インフレの影響でパン価格が高騰する中、世界では「体験」を重視するベーカリーが注目を集めています。日本でも朝食にパンを食べる人は59.7%で、ご飯を食べる人(45.5%)よりも多く*、パン食は日本人の中に定着していると言えます。しかし、パンの需要が高い反面、コロナ収束や物価高の影響による市場縮小や2023年には国内のパン屋の倒産数が過去最高を記録するという逆説的な状況に直面しています。

 こうした中で見えてきたのが、夕食にパンを提案するという未開拓の可能性です。ミンテルの調査では、夕食用のパン・焼き菓子を購入しない人が、女性では約半数を占め、特にスープやおかずと食べることが多いハード系パンは年齢を問わずあまり食されていません。この状況を打開する鍵として、和食との相性を高めた「出汁パン」など、新たなパン開発が進行中です。

 多様な種類のパンを好む日本人のニーズに応えながら、朝食だけでなく夕食も視野に入れた「晩ごパン」提案が、ベーカリー市場の新たな成長領域として注目されています。

* 食の窓口が実施した「朝食に関するアンケート調査」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000135770.html

※本リリースの調査結果をご利用いただく際には、必ず【ミンテルジャパンレポート『パンと焼き菓子のトレンド – 日本 – 2024年』より】とご明記ください。

ミンテルジャパンレポートについて詳しくはこちら:https://www.mintel.com/jp/jr-mar-2025-3

世界ではインフレの影響でパンの価格が高騰!
価格高騰に負けない、「体験」を重視するベーカリーの台頭

 消費者にとってもっとも身近で手頃な食品の代表がパンでしたが、自然災害や紛争による小麦などの原材料価格の上昇がパンの製造コストを引き上げ、消費者の元に届く最終価格に反映されています。また、世界中で物価高が顕著となっており、ドイツでは消費者はスーパーマーケットやディスカウントストアでより安価なパンを購入する傾向が見られ、フランスでは伝統的なベーカリーでなく包装済みパンが市場でシェアを伸ばすなど、世界的なインフレーションは消費者の購買行動に変化をもたらしています。

*アメリカは2020年まで、中国は2020年まで、フランスは2021年まで、イギリスは2022年まで、

 ドイツは2022年までは実績値。それ以降は見通し。パン製品にはペストリーとパイが含まれる。

出典: Mintel Market Size Bread & Bread products

Philippe Conticiniの巨大クロワッサン

 例えば、視覚的魅力と味わいを融合させた商品展開が世界的に加速しています。ドイツでは、菓子パン消費者の32%がドーナツの「見た目が魅力的」であることが選ぶ決め手と感じています。見た目のよさは、今やSNS時代における新しい価値基準として定着しつつあります。また、シェアリングを前提とした特大サイズの商品など、従来の個人消費の枠を超えた新しい喫食スタイルも生まれています。

 フランスの有名レストランであるPhillip Conticiniは、通常の約10倍となる長さ45cmのクロワッサンを発売しました。重さ約1.5kgで、一人当たりの1日の摂取量を遥かに超える約3,000kcal、値段は25ポンド。同店では28ポンドの巨大パン・オ・ショコラも売られています。このクロワッサンは発売すると同時に好評となり、パリに続きイギリスでも人気を博しています。

調査対象: 過去3か月以内にケーキ、ケーキバー、甘い焼き菓子を購入・飲食した16歳以上のインターネットユーザー1,657人

出典: Pinterest/The Sun

 また、異なる食文化を融合させたハイブリッド製品が、特に若年層の間で高い人気を集めています。新たな味の発見につながり、新鮮な体験をもたらすこのトレンドによって、市場が活性化。食品業界では、革新的なフレーバーや製品開発の可能性が広がっています。

調査対象: 米国:18歳以上のインターネットユーザー2,000人

出典: Kantar Profiles/Mintel、2023年4月(

 ベーカリー製品にも、世界の多様なフレーバーを取り入れたハイブリッド製品が登場しています。異文化の味を融合させたこれらの商品は、伝統的なベーカリーに新しい風を吹き込み、消費者に新鮮な体験を提供しています。
 Spicy Sriracha Chilli Pepper Sauce は、ピリッとした辛味と甘み、酸味が絶妙に調和したシラチャ―ソース。クロワッサンやサンドイッチのスプレッドとしても、パンのトッピングにも最適。パンに新しいアクセントを加える万能調味料です。Yellow Corn Taco Shells Taco Shellsは、メキシコの伝統的な風味を生かしながら、軽やかな食感が魅力。具材を詰めれば、手軽に異文化の味を楽しめる一品です。

画像出典:Mintel GNPD

【ご飯文化日本】過半数が朝はパンを食べる時代?
需要に反比例し、市場縮小と過去最高の倒産に直面する危機

 コロナ禍では持ち帰りのしやすさからパンの需要が高まり、それによって2020年の生産量は増加しましたが、2021年以降の世界的なインフレがこの市場に影を落としています。

 しかし、食の窓口が実施した「朝食に関するアンケート調査」によると、2024年5月の調査では朝食にパンを食べる人は59.7%で、ご飯を食べる人(45.5%)よりも多く、パン食は日本人の中に定着していると言えます。また、共働き世帯の増加など忙しい生活スタイルが一般化する中で、手軽に食べられ、アレンジの効くパンは日本の消費者にとってなくてはならないものであり、緩やかに回復していくのではないか、というのが市場関係者の大方の見方です。

出典:一般社団法人日本パン工業会のデータを元にミンテルで作成

 パンの需要は伸びているものの、その一方でパン屋(パン製造小売)の倒産も急増しています。コロナ禍ではテイクアウト需要が手伝って好調でしたが、2023年度のパン製造小売の倒産は前年度比85%増と1年で約2倍に増えており、過去最多を記録しています。物価高がパン屋の経営を直撃したことも要因の一つです。ロシアによるウクライナ侵攻によって、パンの原材料である小麦の価格が高騰し、またそのほかバターや牛乳なども軒並み価格が上昇。コスト上昇分を価格に転嫁しづらいこともあり、パン屋が健全な経営を続けていくには課題が山積みです。

出典: 東京商工リサーチ

 さらに、一般社団法人食品産業センターによるデータ(グラフ)を見ると、パン製造業は商品製造業全体の中でも年間の食品廃棄量が多いことがわかります。食品ロスは製造段階、流通段階、消費段階で生ずるため、それぞれの段階で対策が必要です。

 大手製パン企業の山崎製パンでは、製造工程の最適化(作りすぎないなど)やハーフサイズ・小型食パンの拡充、包装容器の改善による賞味期限の延長やチルド製品の導入など、食品ロス削減に向けて積極的に取り組んでいます。また製造過程で出るパンの耳などの副産物を食品原料や飼料として利用するなどの企業努力を通じて、2022年度の食品廃棄物発生量(125,761トン)に対し100%の再資源化率を達成しています。

出典: 一般社団法人食品産業センター「R4食品ロス調査事業報告書」をもとにミンテルで作成

課題山積みベーカリー市場の救世主?
パン新時代の幕開け!朝ごパンから晩ごパンへ

 日本の消費者の約2割が毎日食パンを食べており、2-3日に1回、週に1回までを入れると約半数を数えます。食パン以外に目を向けると、菓子パンやロールパン、調理パンなども毎日食べる人は少なくても、週に一度、月に数回は食べており、日本人はいろいろな種類のパンを食べていると言えます。それだけパンの選択肢が多いということでもあります。

調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人

出典: 楽天インサイト/Mintel、2024年9月

 月1回かそれ以下、あるいは食べていないパンの代表はハード系ブレッドです。ハード系ブレッドはスープやおかずと一緒に食べることが多いパンであるため、手軽さに欠けることや、硬めの食感であることもあまり食されない要因かも知れません。

調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人

出典: 楽天インサイト/Mintel、2024年9月(全体

調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人

出典: 楽天インサイト/Mintel、2024年9月(性年代別

 また、パンの購入頻度を問う質問で、「夕食用のパンを購入しない」と回答したのは男性が4割、女性では半数にも上ります。主菜、副菜を含め一日のうちもっともしっかりとした料理が食卓に上るのが夕食ですが、夕食用パンの購入率の低さは、その際、おかずに添えられるのは米(ご飯)であることが多い証左でしょう。ハード系パンがあまり購入されていないのも、朝食や昼食用にはそれひとつで済ませられるパンが好まれているからだと言えます。

 しかし逆に言えば、もっと夕食にパンを食べてもらうことができれば、マーケットは広がるということでもあります。米の独壇場を破るのはなかなか大変ではありますが、試みる価値があるのではないでしょうか。

 夕食用パン、ディナーブレッドなどの言葉をつくり、夕食にパンを食べることをスタンダードにする工夫もありでしょう。食べる人がそれほど多くないハード系パンを、スープやシチュー系料理で夕食に食べるイメージできるように消費者にアピールし、夕食用パンとしての認知度を上げるのも一つの手です。

調査対象: 過去6か月、月に2-3回以上パンや焼き菓子を食べた、18歳以上のインターネットユーザー1,761 人

出典: 楽天インサイト/Mintel、2024年9月

ビジネスチャンス

実店舗で、パンと合うおかずのレシピを訴求
 料理レシピサイトやアプリで検索すると「パンに合うおかず」の提案がたくさん出てきます。しかし自ら情報を取りに行かない人の目に、そうした提案が触れることが重要です。

 消費者の多くがスーパーや専門店のチラシやディスプレイでパンに関する情報を得ていることから、実店舗での広報はぜひ積極的に行いたい取り組みです。特にスーパーでは「何を作ろうかな」と考えながら商品を選んでいることが多いので、POPなどで直感的かつ分かりやすく、気軽にトライできるメニューの提案が有効でしょう。

 例えば、「ライ麦パンに合わせたい、クリームチーズ&ハム!」「全粒粉パンとチキンソテーでヘルシーな夕食を!」「このカンパーニュにはトマトスープがピッタリ!」などの宣伝文句と共に、イラストと簡単な作り方を紹介することが考えられます。また拡散を狙ったSNSでの発信やパッケージ上での提案も有効でしょう。

炊かなくていい主食として、和食と合う米粉パンを開発
 夕食用パンとしてハード系パンなどが洋風メニューと合うことは当然だが、和食と合うパンがあればさらに夕食用パンの用途は広がります。

 忙しい時に「炊かなくていい主食」として、おにぎり感覚で食べられる米粉パンを普及させるのはどうでしょうか。「もちもち米粉パンが肉じゃがのだしの旨みをしっかりキャッチ」とか「味噌汁と米粉パンでほっこり夕食を」などのコピーや、米粉パンにきんぴらを挟んだりした惣菜パンもよさそうです。またグルテンフリーの米粉パンならアレルギーの人や健康志向の人にも喜ばれそうです。

和食に合う、出汁と合わせた米粉の「出汁パン」
 すでに日本ならではの「出汁」を使用した「出汁パン」を商品化する試みも見られ、健康、和食、米粉などのキーワードとともに今後の市場の展開に期待されています。

 割烹料理を学んで得た和食の技術と、有名パン屋にて修行してきた技術とを合わせて作り上げた、港区で店を構える「こめいち」の米粉パン。

 厳選した素材から成る出汁をベースに作りあげた出汁食パンも惣菜パンも大人気です。

 駿河の国から”和”(なごみ)だしパンは、東海大学海洋学部の学生が、静岡県内のベーカリー「ピーターパン」と共同で、「和食に合うパン」をコンセプトとして開発した、かつお出汁を使った米粉パン。ピーターパンの店舗で販売されています。

出典: Instagram/komeichibakery東海大学

■ミンテル ジャパンレポートについて

新製品開発のヒントになるグローバルトレンドと日本におけるその意味について理解を促し、日本市場における商機を探るレポートシリーズ。「美容・化粧品」、「ライフスタイル」、「食品・飲料」分野のレポートをサブスクリプション方式でご提供しています。グローバルと日本、双方の視点でトレンドを捉えることが可能です。

■ミンテル 世界新商品データベース(Mintel GNPD)について

世界86ヵ国の日用消費財の新商品を、原料や訴求内容から検索することができるデータベースです。世界各国に配置されたミンテルの調査員が、日々新商品の収集を行うことで、毎月約4万点の商品パッケージ情報をデータベース化し、GNPDを構築しています。商品のあらゆる情報を掲載しているため、様々な視点から世界の製品トレンド分析を行うことが可能です。

■市場調査会社ミンテルの強み

ミンテルに在籍する各分野の専門家であるアナリストは、GNPDに蓄積されたデータや独自の消費者調査、外部データなどを組み合わせて、消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測を行い、レポートを執筆しています。ミンテルは常に「消費者」に焦点を当て各サービスを展開しており、「消費者が何をなぜ求めているかを探るエキスパート(Experts in what consumers want and why.)」をコーポレートスローガンとしています。

■株式会社Mintel Japan(ミンテルジャパン)

ミンテルジャパンは、ロンドンに本社を置く大手市場調査会社「Mintel Group」の日本法人です。専門分野のアナリストと新商品の調査員を世界各国に配置し、独自の消費者調査や新商品情報の収集を行っております。

その独自のデータを基にした消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測に強みがあります。日本では主に「美容・化粧品」「食品・飲料」「ライフスタイル」の3分野に注力し、サービスを展開しています。

≪ご利用条件≫

情報の出典元として【ミンテルジャパンレポート『ソルティ・スナックトレンド – 日本 – 2024年』より】の明記をお願いいたします。

■会社概要

企業名   :株式会社ミンテルジャパン

本社所在地 :東京都千代田区丸の内二丁目4番1号 

       丸の内ビルディング18階

代表    :リチャード・カー

設立日   :2008年03月

事業概要  :トレンドレポートの販売、市場調査、市場分析等

WEBサイト:https://japan.mintel.com/ 

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