
最初に決めるべきは「損失をどこまで許せるか」という自分のメンタルの限界です。
仮想通貨は株式や債券とは異なり、価格が一夜で二桁動くことも珍しくありません。
それでも近年は現物ビットコインETFの登場や機関投資家の参入で、乱高下の幅がゆるやかになりつつあります。
値動きがほかの資産と連動しにくい点は分散効果につながり、リターンの源泉にもなりますが、配分を誤れば損失を与えてくる存在にもなりかねません。
本稿では専門家の調査やシミュレーションを踏まえ、初心者が安心して始められる比率の決め方を解説します。
まずは仮想通貨の2つの種類を解説していきます。
ビットコインやイーサリアムなどのメジャーな通貨は、時価総額が数兆ドル規模で流動性と規制対応が進み、ETF上場や機関保有によって相対的に安定感があります。
一方で、ドージコインや柴犬コインなどのミームコインは、供給上限がなかったりコミュニティ手動で急騰・急落しやすく、SNSの投稿1つで2桁変動するほど、投機色が強いのが特徴です。
メジャー通貨については情報が豊富ですが、ミームコインを初めて知った方は詳細はこちらをご覧ください。
それでは本題に入りましょう、まず初心者が押さえておきたい基本として、多くの仮想通貨投資のアドバイザーは上限を5%以内に設定しています。
米国の最新アンケートによると、金融アドバイザーの約8割は仮想通貨の推奨比率を「1%から5%」の範囲に収めている状況です。
特に2%を選ぶ回答が最も多く、5%を選ぶ割合がこれに続きました。
ビットコインをはじめとするデジタル資産の期待値を考慮しつつ、急落時でも家計の安全域を脅かさないバランスがこのゾーンだというわけです。
はじめて購入する場合は、まず総資産の1%だけを投入し値動きに慣れる方法が推奨されます。
そして、まだ余裕があれば毎月定額を積み立て、価格の上下を平均化するドルコスト平均法を併用するとさらに安定しやすいでしょう。
現役リタイアまで10年以上の余裕があり、毎月の積立でリスクを平準化できるなら、上限を10%近くまで高める考え方も有力と言えるでしょう。
著名資本家のリック・エデルマン氏は「伝統的な60対40の時代は終わり、仮想通貨を10%から40%の範囲で組み込むべき」と強調しています。
ただし彼自身も「この枠は高リスク部分の中での話で、生活防衛資金や短期資金とは切り離すべきだ」と補足しており、万人向けの数字ではありません。
年齢が高くなるほど取り戻す時間が短いため、退職が近い人は2%前後に抑えておくほうが無難です。
次に、たった3%でもまるっと変わるポートフォリオの挙動に振り回されないように、期待リターンと損失幅をシミュレーションしてみましょう。
フィデリティの分析では、株式6割と債券4割の伝統的ポートフォリオにビットコインを3%加えると、期待リターンを維持するために年平均19%超の実質利回りが必要になると試算されています。
過去にはそれを上回る上昇局面もありましたが、逆に半値になる年も存在しました。
もっとも、2023年以降のビットコインは30日間ボラティリティが過去10年で最低水準に沈み、NetflixやTeslaより静かな動きを示すこともあります。
こうした変化は魅力的ですが、安定が永続する保証はない点を忘れてはいけません。
たとえば3%の比率であっても、仮にビットコインが70%下落するとポートフォリオ全体で2%以上値下がりします。
株式市場が同時に下落している場合は合計損失がさらに拡大するため、数字だけでなく同時シナリオを想定しておくと安心です。
仮想通貨が急騰すると、もともと3%だった比率が半年で10%を超えるケースも珍しくありません。
増えた分を売却して株式や債券へ振り分けるリバランスを怠れば、気付かぬうちに許容度を超えたハイリスク型になりかねません。
さらに日本では譲渡益が雑所得として総合課税されるため、所得税率が高い人ほど税負担が重くなります。
逆に大手運用会社バンガードは今も自社プラットフォームでビットコインETFを扱わず、顧客に対し慎重姿勢を崩していません。
こうした保守派の見解にも耳を傾けつつ、毎年の確定申告で損益を整理し、翌年へ繰り越すかどうかを判断することが長期保有のリスク管理となります。
また、国内取引所をまたいで移動した際の取得価格の記録やハードフォークで付与されたコインの扱いなど、実務上の論点も多数あるのが現実です。
取引履歴のCSVをダウンロードし、帳簿ソフトに早めに取り込む習慣を付ければ確定申告期に慌てずに済みます。
最終的には、数字よりも自分が市場と向き合える姿勢そのものが、長期投資の成果を左右するでしょう。

