ぐるなび・東京科学⼤学「ぐるなび⾷の価値創成共同研究」論⽂発表 京都の伝統発酵漬物から世界初の発見! 新規菌体外多糖(EPS)を作る「とろ~り」乳酸菌の単離に成功

― 発酵物に粘性を与える機能を持ち、こってり食感の植物性ヨーグルト開発に期待 ―

株式会社ぐるなびのプレスリリース

株式会社ぐるなび(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:杉原章郎)は、東京科学⼤学(旧・東京工業大学)と「ぐるなび⾷の価値創成共同研究」として、⽇本の⾷⽂化を⽀える発酵をテーマとした共同研究を2016年より⾏っています。この度、「しば漬け」から単離した乳酸菌Lactiplantibacillus plantarum KY5-ES5 が、特有の構造をもつEPSを産生することを世界で初めて発見し、2025年12⽉12⽇にScientific Reports誌へ論⽂が掲載されたことをお知らせいたします。

要点

○京都の伝統漬物「しば漬け」から、強い粘りを示す新規乳酸菌KY5-ES5を発見しました。この菌が作るネバネバ成分 (菌体外多糖<EPS>, 用語1) は、乳酸菌ではほとんど報告例のないグリセロールを含み、多様な糖結合や分岐構造をもつ世界初の構造であることを科学的に示しました。

○KY5-ES5の培養液はとろりと糸を引く性質が見られました。この性質を利用して、発酵という微生物の力だけで「濃厚なコク」と滑らかな食感を実現することができます(国際特許出願にて特許性ありの見解)。

○KY5-ES5が作るネバネバ成分を利用し、冷凍可能な豆乳ヨーグルトへの応用など、新たな食品開発が可能になりました。またネバネバ成分は整腸や抗酸化などの機能性を持つことが期待され、健康食品市場への応用が見込まれます。

【概要】

東京科学大学 生命理工学院 生命理工学系の山田拓司教授と株式会社ぐるなび との研究チームは、日本の伝統的な漬物である「しば漬け」から分離した乳酸菌Lactiplantibacillus plantarum KY5-ES5 が、グリセロールを含む新しいタイプの菌体外多糖 (EPS) を産生することを明らかにしました。

乳酸菌がつくるEPSは、食品の「とろみ」や「なめらかさ」に関わる重要な成分です。しかし、一般に乳酸菌培養に用いられる培地では天然物由来の多糖が混ざってしまいEPS本来の構造を特定するには不向きでした。そこで本研究では、天然物由来の成分が混ざらない合成培地(用語2)を用いることでKY5-ES5が産生するEPSのみを取り出し、分析を行いました。

構造解析の結果、このEPSは複数の糖が複雑に結びついた構造を持ち、さらに一部がグリセロールリン酸(用語3)によって修飾されていることが確認できました。このような構造は、乳酸菌のEPSとしては極めて珍しく、高い粘度や糸を引く性質に寄与していると考えられます。

今回発見されたEPSは、植物性ヨーグルトなどの発酵食品における自然なとろみづけや食感の改善に応用できる可能性があります。また、乳酸菌のEPSには腸内環境の改善など健康への良い働きが知られており、本EPSの機能性についても今後の研究による解明が期待されます。

本成果は、2025年12月12日付(現地時間)の「Scientific Reports」誌に掲載されました。

【株式会社ぐるなび 文化事業推進グループ 澤⽥和典よりコメント】

しば漬の乳酸菌を探索していた際、乳酸菌のコロニーをつまようじでつついたら、びっくりするくらい伸びたあの瞬間を今でも思い出します。糸を引く乳酸菌自体は他にもあるのですが、この乳酸菌が作る菌体外多糖を解析し、グリセロールが含まれているとわかった時はこれはちょっと新しいかもしれない、と心が躍りました。KY5-ES5を使った食品応用についてもこれまで様々に取り組んできていますが、この乳酸菌が新たな食文化を生み出すことに貢献できればいいなと願っています。

●背景

発酵食品は日本の食文化を支える重要な存在であり、そのおいしさや食感には微生物が作り出す成分が深く関わっています。本共同研究チームではより良い食品の開発のため、乳酸菌をターゲットとし優れた能力を持つ菌株の取得にチャレンジしました。そこで注目したのが、これまで研究を重ねてきた京都の伝統的な発酵漬物である「しば漬」からの発酵微生物です[参考文献1]。この研究の過程で極めて強い粘りを作り出すユニークな乳酸菌が存在することを発見したことから、この乳酸菌が持つ可能性を解明し、食品産業の発展や人々の健康に役立てたいとの思いから本研究がスタートしました。

●研究成果

本研究では、しば漬から単離した乳酸菌 Lactiplantibacillus plantarum KY5-ES5が極めて強く糸を引く性質を持つことを発見しました。この理由を探るため、天然物を含まない合成培地を用いてKY5-ES5を培養し、産生されたネバネバ成分(菌体外多糖, EPS)を取り出して構造分析を行いました。その結果、KY5-ES5が作り出すEPSにはこれまでほとんど報告のないグリセロールが含まれていることがわかりました。さらに詳細な解析を進めると、多様な糖結合や分岐構造、そしてグリセロールリン酸による修飾が確認されました。これにより、EPSは高い粘性やなめらかな食感を生み出す可能性が示されました。

●社会的インパクト

本研究の成果は次のようなインパクトがあると考えられます。

1. 添加物によらない「クリーンラベル」食品の実現

発酵によって濃厚なとろみや滑らかさを与えることができるため、近年関心が高まっている「クリーンラベル」食品の開発に貢献できます。植物性ヨーグルトや発酵飲料などの食感を発酵によって向上させることができ、発酵食品の品質改善に寄与します。

2. 「冷凍可能な豆乳ヨーグルト」の開発

本乳酸菌株は「食品に曳糸性を付与する乳酸菌」として、KY5-ES5株で発酵させた培地や食品原料が高い粘性や曳糸性を示し、独特の食感を与えることについて国内および国際特許出願を行っています[参考文献 2, 3]。さらに、令和5年度補正予算の農林水産省フードテック実証事業において、本菌を使った冷凍可能な豆乳ヨーグルトの開発に取り組みました。通常の豆乳ヨーグルトは凍結解凍すると液状化してしまいますが、本乳酸菌を使った豆乳ヨーグルトは凍結解凍しても滑らかな状態を維持できます。消費期限の延長や冷凍輸送による海外輸出が可能になり [参考文献4]、フードロス削減や日本食のグローバル展開に向けた大きな一歩となります。

●今後の展開

今後は、この新しく発見されたEPSの機能をさらに深掘りし、ヒトへの健康への効果(腸内環境の改善、抗酸化作用など)を検証していくほか、KY5-ES5の機能増強に向けた育種 (用語4) にも取り組んで参ります。次世代のプラントベースフードや高齢者向けの介護食など、幅広い分野への産業応用を目指してまいります。植物性の発酵飲料や代替乳製品への産業応用も目指します。

●付記

本研究は「ぐるなび食の価値創成共同研究」として実施されました。

【参考文献】

[1]Kazunori Sawada and Takuji Yamada, Influence of the initial microbiota on eggplant

 shibazuke pickle and eggplant juice fermentation. Microbiology Spectrum 2024

 e00464-24. doi: 10.1128/spectrum.00464-24

[2]特開2025-089946, 食品に曵糸性を付与する乳酸菌

[3]WO/2025/121281, LACTIC ACID BACTERIUM CAPABLE OF IMPARTING STRINGINESS TO FOOD

[4]令和5年度フードテックビジネス実証事業【農林水産省補助事業】令和6年度フードテックビジネス実証事業【農林水産省補助事業】フードテックビジネスの実証事例

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sosyutu/attach/pdf/index-120.pdf

【用語説明】

(1)菌体外多糖(Exopolysaccharide; EPS):細菌が外部に作り出す多糖。食品のとろみや食感に影響する。

(2)合成培地:成分が明確に定義された培地。EPSの純粋な構成を正確に評価できる。

(3)グリセロールリン酸:グリセロールにリン酸が結合した分子。EPSにグリセロールリン酸が含まれている報告は極めて少ない

(4)育種:微生物の品種改良のこと。突然変異を誘発して、微生物の能力を高めることができる。

【論文情報】

論文タイトル:A novel glycerol-containing exopolysaccharide from the ropy strain

 Lactiplantibacillus plantarum KY5-ES5 and its impact on medium viscosity

著者:Kazunori Sawada, Takuji Yamada

掲載誌:Scientific Reports

出版日:2025年12月12日

DOI:10.1038/s41598-025-29706-8

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