~シニアの調理実態を食MAP®にて調査(ジェネレーション分析)~
株式会社ライフスケープマーケティングのプレスリリース
簡便意識が強まる昨今。
この20年間で、生活者の意識は大きく変化しました。そうした意識の変化に応えるかたちで、調理の手間を省ける便利な食品も数多く登場しました。みなさんも、昔と比べて“手軽さ”や“時短”を重視することが増えてきたと感じているのではないでしょうか?

【図1】は、食生活に関する意識アンケートの回答率の推移を20年前の2005年度(4月~翌年3月)との差分で示したものです。
「調理がおっくう」「下処理がおっくう」など、食事にまつわるすべてを“おっくう”と感じる人が増えている、つまり簡便志向が強くなっていることが分かります。その傾向は20年前から継続しており、コロナ禍を経てさらに強まっています。
今回は、この簡便志向の高まりが食卓にどのような影響を与えているのか、またその裏側にある意識を紐解いていきます。
手作り率が低下するBaby boomers世代
【図2】は、世代別の妻(主家事)の夕食の手作り率(主食・汁物・おかず)の推移です。
どの世代においても、昨今の相次ぐ食品価格の高騰を背景に節約意識が高まり、直近では手作り率が上昇傾向にあります。しかし長期的な視点(ロングトレンド)で見ると、全体的に手作り率は低下傾向であること分かります。特にその動きが顕著に見られるのが、戦後、出生数が急増した時代に生まれた世代、いわゆるBaby boomers世代(現61歳~72歳※)です。
この世代の手作り率は、2011年度から2024年度の14年間で6.5pt低下しています。さらに、過去14年間で最も手作り率の高かった2011年度と、最も低かった2022年度を比較すると、その差はなんと8.6ptもあります。これは他の世代と比べても最も大きな下げ幅です。
※Baby boomers世代の年齢は、食MAPデータで在籍しているモニタ年齢を記載。以後も同様

かつては「最も手作りをしている」というイメージが強かったBaby boomers世代ですが、2018年度以降は「最も手作りをしていない世帯」へと逆転し、他世代との差も年々拡大しています。
この背景には、同居していた子どもの独立をきっかけにした、夫婦二人暮らしへの移行という生活環境の変化があると見られます。子どもと同居していた時期には手作りを重視していたものの、子どものいない高齢夫婦二人の生活となったことで、日々の食事は手間をかけすぎず、既製品も活用して手軽に済ませたいという意識が高まったのではないでしょうか。
このような変化は、現在子育て中のX世代、Y世代においても、将来的に同様のプロセスをたどる可能性が高く、今後の調理行動の長期的な傾向を読み解くうえでも注目すべき点といえるでしょう。
以上の分析より、世代ごとの「調理行動の変容」とは、単なる物価動向や一時的なトレンドだけではなく、ロングトレンドとしての生活意識の変化や、家族構成・ライフスタイルといった社会構造の変化など、複合的な要因の結果として生じるものであると考えることができます。
簡便意識は“味付け”にも波及
生活者の簡便意識は、調理のプロセスやメニュー・食材選びだけでなく、“味付け”にも表れています。これまで家庭内で行っていた味付けの手間を省くような商品や調理スタイルの広がりは、単なる嗜好の変化ではなく、“いかにおいしく・効率よく”調理を済ませるかという意識の高まりを反映していると考えられます。
ここからは、Baby boomers世代に注目して、味付け方法がこの20年間でどのように変化してきているかを見ていきたいと思います。
【図3】は、Baby boomers世代の手作りした夕食メニューの味付け方法構成比を2005年度との差分で表したものです。
「基礎調味料のみでの味付け」は20年間で8.9pt減少しています。これに代わり、「汎用調味料のみで味付け」や「専用調味料のみで味付け」、さらには「調味料なし」での味付けが増加傾向にあります。中でも特に増加が顕著なのは「汎用調味料のみで味付け」で、20年間で5.5pt上昇しています。加えて、「調味料なし」(調味料以外の食材で味付け)も3.0ptの増加を示しており、Baby boomers世代の「調理の手間を減らしたい」という意識が、「どのように味付けするか」という選択にも反映されていることが見てとれます。

味付けが“基礎”から“汎用”へ変化したメニューは?
では、Baby boomers世代の食生活のうち、具体的にどのようなメニューの味付けが基礎調味料から汎用調味料に変化したのでしょうか。
【図4】は、20年前と直近の夕食での「基礎調味料のみで味付け」と「汎用調味料のみで味付け」の構成比の差分を表しています。左上の象限にあるメニューが、「基礎調味料のみでの味付けが減少し、汎用調味料のみでの味付けが増加したメニュー」ということになります。
「おひたし」「野菜ソテー」「焼き野菜」「野菜の和え物」「ゆで野菜・蒸し野菜」「冷奴」など、もともと調味料を多く使わないシンプルな味付けの副菜料理や、「野菜の煮物・炊き合わせ」「肉じゃが」など基礎調味料での味付けが難しいメニューにおいて基礎調味料から汎用調味料化が進んでいます。
調味のバランスが難しいメニューだけでなく、シンプルな味付けのメニューにおいても汎用調味料の活用が進んでいるのは、単なる簡便化だけではなく、別のニーズも背景にあるためだと考えられます。

味付けの変化、その背景にあるのは“簡便”だけじゃない
次に、基礎調味料から汎用調味料化が特に顕著だったおひたし、野菜のソテー、焼き野菜について、基礎→汎用に限らずどのような調味料の移行があったのかを細かく見ていきましょう。
【図5】はBaby boomers世代のメニューの味付け用食材使用率を05年度→24年度の変化を差分にしたものです。まず、共通して見られるのは、「濃口醤油から減塩醤油」「サラダ油からオリーブオイル」への移行です。この流れは、近年高まっている健康意識が調味料選びにも反映されていることを示しており、特に健康に気を遣わざるを得なくなる年齢になったBaby boomers世代では、この傾向が強く出ると言えます。

それぞれのメニューを詳しく見ると、
■おひたし
「醤油、削り節、煮干し・いりこ、みりん」といった昔ながらの味付けから、「だし醤油」「めんつゆ」「ポン酢」など、“だし”のうまみを含んだ汎用調味料へ移行。さらに、「ゴマ」から「ゴマ油」「アーモンド」への移行のように、手間をかけずに風味や香ばしさ、食感をより楽しめる素材や調味料を選択する傾向が見られます。
■野菜のソテー
「塩、黒こしょう」から、「塩こしょう」「スパイス入り調味塩」など一体型の汎用調味料へ移行。また、「ゴマ油」「焼き肉のたれ」「ポン酢」など、多様な風味の調味料も取り入れられるようになってきました。
■焼き野菜
「生鮮のしょうが」から「チューブしょうが」へと手軽な調味料へ移行。さらに、「ポン酢」「ゆず・からし味噌」「チーズ」のような、味・風味のバリエーションを広げる食材も使われるようになってきました。
このようにBaby boomers世代では、“手作り”や“基礎調味料の使用”に対するこだわりが薄れ、健康・手軽さ・おいしさ・味の多様性といった複数の価値観に食生活の重心がシフトしています。また「醤油、だし素材、みりん」から「めんつゆ」や「だし醤油」へ、「生のしょうが」から「チューブしょうが」へ移行しているように、昔の味付けを簡単に再現できる汎用・簡便調味料を選択する傾向が強いのは、だしや薬味を活用する文化・習慣に慣れ親しんだBaby boomers世代ならではの特徴かもしれません。単なる時短ではなく、“慣れ親しんだ味や文化”を大切にしたいという意識が感じられます。
~Generation(ジェネレーション)分析について~
今回は「Generation分析」を用いて、Baby boomers世代における調味料の使用の変化を考察してきました。
よく使用される「年代別分析」は、ある時点における年齢層(たとえば20代・40代・60代)の比較を行い、年齢の違いによる行動や意識の差を捉える手法です。経年変化として年代別に比較する場合、たとえば「今の60代」と「10年前の60代」を比べる時には、単なる加齢の影響だけでなく、その人たちが生きてきた時代背景や価値観=“世代の違い”が影響していることに注意が必要です。つまり、「60代」という年齢だけではなく、どの世代に属する60代なのかによって、意識や行動に大きな違いが生じる可能性があるのです。
一方、「Generation分析」は同じ時代を生きてきた人々が共有する価値観や経験などに着目し、加齢による変化はもちろん、時間が経っても変化しにくい世代固有の特徴なども明らかにする手法です。
「Generation分析」にご興味をお持ちいただけましたら、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。


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出典:株式会社ライフスケープマーケティング「食MAP®」
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