「製茶業」の倒産・休廃業解散動向(2025年)
株式会社帝国データバンクのプレスリリース

株式会社帝国データバンクは「製茶業」の倒産・休廃業解散動向について調査・分析を行った。
SUMMARY
2025年に発生した「製茶業」の休廃業・解散は13件で、通年では前年(8件)を上回り過去最多を更新した。倒産を含めると年間で14の製茶業者が市場から退出した。抹茶ブームで茶葉の需要が急増し、仕入れ価格やコストが上昇。2024年度業績は「増益」企業が4割を超えたが、「業績悪化」の割合も半数超と二極化が鮮明となった。コストアップに対応した値上げができない中小の製茶業者で苦境が鮮明になっている。
集計期間:2000年1月1日~2025年12月31日まで
集計対象:倒産は負債1000万円以上、法的整理によるもの
製茶業の廃業13件、過去最多 「抹茶人気」逆風に
「抹茶スイーツ」や「抹茶ラテ」など、空前の「抹茶ブーム」が中小製茶業者の経営を揺さぶっている。2025年に発生した「製茶業」の休廃業・解散(以下「廃業」)は累計13件判明し、前年(8件)を大きく上回り過去最多を更新した。倒産(1件)を含めると、年間で14の製茶業者が市場から退場した。抹茶ブームで日本茶に注目が集まる一方、煎茶原料の「価格高騰」と抹茶以外の「需要低迷」から経営が不安定化し、事業継続を諦める製茶現場が増えつつある。


2024年度における製茶業約300社の損益動向をみると、1月時点で前年度から「増益」となった企業は42.7%と4割を超えた。他方で、「減益」(25.4%)や「赤字」(29.4%)を合わせた「業績悪化」の割合は半数超を占めており、製茶業者で収益力の二極化が鮮明となった。
茶葉収穫から生産加工まで手がける製茶業者では、抹茶のほか、抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)生産へシフトしたことが奏功し、大幅な売り上げ増となった。ただ、国内では近年、茶農家の担い手不足と高齢化が進み、茶畑の面積は縮小が続く。そのため、世界的に需要が急増している飲料・加工用抹茶向けの原料(碾茶)へ出荷量のシフトが続く半面、緑茶原料となる煎茶の供給量では減少傾向が続き、煎茶原料となる生葉の確保がより困難となっている。煎茶生産が減少するなか、飲料メーカー大手各社も主力商品のペットボトル緑茶向け原料の確保に動いていることもあり、中小の製茶業者が予算に合った品質の原料調達に苦心するケースは少なくない。
他方で、家族葬の増加など葬儀形態の変化により、かつての安定収益源であった「香典返し(ギフト)」需要など冠婚葬祭向けも減少している。急須で淹れる茶製品の販売が低迷したことで、製茶業者の販売先だった町の「茶小売店」の廃業も相次いだ。その結果、原料調達・加工と販売先の双方が縮小し、「仕入れられない」「売る場所がない」というサプライチェーンの縮小に直面している。生産現場の人手不足や最低賃金の上昇、エネルギー価格の高騰など生産コスト増加も重なり、製品価格の値上げができるブランド力や付加価値を持たない中小製茶業者の利益が大きく削られる要因となっている。
足元では、生き残りをかけて機械化や省人化が容易なティーバッグ・加工茶に注力する製茶業者や、「初音ミク」など人気キャラクターとのコラボによる若年層向けの販促、ワイングラスで楽しむ高級日本茶の提案など、飲料体験そのものをブランド化することで付加価値の高い煎茶需要を掘り起こす取り組みも始まっている。抹茶ブームの陰で、伝統的なお茶ビジネスをどう定義するかが問われている。
