腸内環境改善により骨密度低下が抑制される可能性を閉経後骨粗鬆症モデル動物において示唆

株式会社J-オイルミルズのプレスリリース

株式会社J-オイルミルズ(東京都中央区、代表取締役社長:八馬史尚)は、レジスタントスターチ(※)の摂取が腸内環境改善を促し、その結果骨密度低下の抑制に繋がる可能性を、閉経後骨粗鬆症モデル動物において示唆した研究論文を国際科学雑誌Nutrients誌に発表いたしました。

論文タイトル
Resistant Starch Attenuates Bone Loss in Ovariectomised Mice by Regulating the Intestinal Microbiota and Bone-Marrow Inflammation.

目的
健康な骨では、骨の形成と分解がバランスよく繰り返されていますが、加齢に伴いこのバランスが崩れると、骨粗鬆症を引き起こしやすくなります。特に、女性においては女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌低下により骨の中心部にある骨髄に炎症が生じ、それが骨の分解を速める原因のひとつであることが示唆されています。
また近年、腸内細菌叢と健康との関連が注目されています。腸管には多くの免疫細胞が存在し、それは腸管以外の臓器でも免疫機能に影響を与えることが分かってきました。最近では、骨においても腸管や腸内細菌叢を介した免疫・炎症調節の可能性が示唆されています。一方、レジスタントスターチは生体内で消化吸収されず大腸へ到達するでん粉であり、大腸の腸内細菌叢を健康的なバランスに改善するプレバイオティクス作用を持つことが報告されています。

そこで今回の論文においては、レジスタントスターチ含量の高いハイアミロースコーンを原料とした当社製品アミロファイバー®SHの給餌有無による、腸内細菌叢、腸管の免疫および骨髄の炎症関連遺伝子、並びに骨密度への影響を閉経後骨粗鬆症モデル動物において評価いたしました。

※:難消化性でん粉と称され、ヒトの小腸まででは消化されず、大腸に届くでんぷん類の総称。主に穀類や豆類に含まれる。

試験内容

<設定群>

  • レジスタントスターチを配合しない飼料を給餌した、偽手術マウス群(Sham)
  • レジスタントスターチを配合しない飼料を給餌した、閉経後骨粗鬆症モデルマウス群(OVX)
  • レジスタントスターチとしてハイアミロースコーンスターチを配合した飼料を給餌した、閉経後骨粗鬆症モデルマウス群(OVX+HAS)
  • レジスタントスターチとしてアミロファイバー®SHを配合した飼料を給餌した、閉経後骨粗鬆症モデルマウス群(OVX+AH-HAS)

<試験計画>
それぞれ2週間飼育および6週間飼育を行い、腸内細菌叢の組成、大腸および骨髄の炎症性遺伝子の発現量、骨密度を測定しました。

試験結果
レジスタントスターチとしてアミロファイバー®SHを配合した飼料を給餌した群では、腸内細菌叢のビフィズズ菌(Bifidobacterium)が増加するとともに(図1)、腸内の免疫指標のうち、抗炎症性サイトカインのひとつであるIL-10遺伝子発現量の増加傾向がみられました。骨髄ではアミロファイバー®SH摂取により、エストロゲン欠乏に起因する炎症関連IL-7R遺伝子発現量の増加が2週後に抑制され、骨の分解を誘導するRANKL遺伝子発現量の増加が6週後に抑制されました。6週後の大腿骨において(図2)、アミロファイバー®SH配合飼料を給餌した群はレジスタントスターチを配合しない飼料を給餌した群に比べ、骨密度の低下が有意に抑制されました。

【図1】 腸内細菌叢の組成【図1】 腸内細菌叢の組成

 

【図1】 腸内細菌叢の組成   a,b,c異なる符号間での有意差あり(p<0.05)

 

【図2】6週間飼育後の大腿骨骨密度【図2】6週間飼育後の大腿骨骨密度

 

【図2】6週間飼育後の大腿骨骨密度
(A)全骨骨密度、(B)近位部骨密度 a,b,c異なる符号間での有意差あり(p<0.05)

【発表論文】
Yuko Tousen, Yu Matsumoto, Yuya Nagahata, Isao Kobayashi, Masahiro Inoue and Yoshiko Ishimi, Resistant Starch Attenuates Bone Loss in Ovariectomised Mice by Regulating the Intestinal Microbiota and Bone-Marrow Inflammation, Nutrients 2019, 11(2), 297;
https://doi.org/10.3390/nu11020297

これら研究結果により、レジスタントスターチ摂取が腸内細菌叢を変化させるとともに骨髄中の炎症を抑えることで、エストロゲン欠乏に起因する骨密度の低下を防ぐ可能性が示唆されたことから、論文発表に至りました。一連の研究結果を基に、今後もさらに研究を進め、皆様に安心で安全、健康に寄与する製品開発に努めてまいります。

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