血管内皮機能の改善効果を有するヨーグルトをヒト試験で確認

協同乳業株式会社のプレスリリース

メイトーブランドの協同乳業株式会社(本社:東京・中央区/社長:尾﨑 玲)の松本光晴主幹研究員らは、京都府立医科大学の内藤裕二准教授との共同研究で、 BMIが高めの健常成人を対象に、ビフィズス菌LKM512とアルギニンを含むヨーグルトを摂取することにより、腸内細菌による生理活性物質ポリアミン産生を誘導し、血管内皮機能を改善することを明らかにしました。この研究成果は、国際学術誌Nutrientsに公開されました(Nutrients 2019, 11: 1188, doi:10.3390/ nu11051188)。

≪ポイント≫

  • 動脈硬化が引き起こす心筋梗塞や脳卒中は日本人の4人に1人が亡くなる病気である。動脈硬化発症プロセスにおいて、血管内皮機能(血管のしなやかさ等)の低下は最初に生じるため、この機能の維持・改善は動脈硬化およびこれらの疾患の予防に繋がる。
  • ポリアミンは、抗炎症作用やオートファジー誘導作用等により、動脈硬化および心血管系疾患への有効性が期待されている物質である。当研究所では、腸内細菌を利用してポリアミンを産生し、生体に供給する独自技術を開発済みで、その技術を応用したヨーグルトを作製し、BMIが高めの健常成人を対象に無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施した。
  • 本ヨーグルトの1日1カップ(100g)、12週間の摂取で、血管内皮機能がプラセボ群と比較し有意に改善された。また、それと連動して本ヨーグルト摂取群の血圧がプラセボ群より低い傾向を示した。
  • 中性脂肪や悪玉コレステロール等、動脈硬化の増悪因子を軽減する食品は多数報告されているが、ヒト試験で血管組織に直接的に作用し、改善効果を示した食品は世界初と考えられる。

≪研究概要≫
生理活性物質ポリアミン(プトレッシン、スペルミジン、スペルミン等の総称)は、抗炎症作用やオートファジー誘導作用等が報告されており、動脈硬化および心血管疾患予防への有効性が期待されています。生体のポリアミン合成力は加齢に伴い減少することから、中高年者は体外から補充するのが好ましいと考えられています。
当社では、腸内細菌の産生するポリアミンに着目し、腸内細菌を利用してポリアミンを増やし生体に供給する技術として、ビフィズス菌(LKM512菌株)とアミノ酸の1種であるアルギニンの併用摂取法を開発済みで、その作用機序は「ハイブリッド・ポリアミン生合成機構」として遺伝子レベルで解明しました。
本研究では、ビフィズス菌LKM512とアルギニンを含むヨーグルト(LKM512+Argヨーグルト)と、これらを含まない通常ヨーグルト(プラセボ)を作製し、動脈硬化発症初期段階で低下する血管内皮機能への効果を無作為化二重盲検並行群間比較試験で評価しました。
BMIが高めの健常成人を2グループに分け、LKM512+Argヨーグルトあるいはプラセボを1日1回(100g)、12週間摂取してもらい、血管内皮機能等を測定しました。
その結果、LKM512+Argヨーグルト群ではプラセボ群と比較して、血管内皮機能の有意な改善効果が認められました。また、この効果を裏付けるように、LKM512+Argヨーグルト群ではプラセボ群と比較し、摂取12週目に血圧が低い傾向を示し、血小板数が有意に改善されていました。
さらに、LKM512+Argヨーグルト群ではプラセボ群と比較し、糞便中プトレッシン(スペルミジンの前駆体)が有意に高濃度となり、同時に血清スペルミジンが有意に高濃度になりました。
これらの結果は、LKM512+Argヨーグルトの摂取により大腸内でプトレッシンが増加し生体に吸収され、その後、生体内でプトレッシンより生成されたスペルミジンの作用により血管内皮機能が向上したことを示唆しています。
動脈硬化予防のための中性脂肪や悪玉コレステロールを低下させる食品(食成分)は多数報告されていますが、ヒト試験で、血管内皮機能に直接的に作用し、動脈硬化予防への可能性を示した食品は世界初と考えられます。
また、腸内環境研究分野においては、個体差の大きい腸内細菌に特定の有用物質を産生させ、その血中移行を確認し、保健効果を得ることに成功した重要な知見となります。

 

Follow Twitter Facebook Feedly
SHARE
このページのURLとタイトルをコピー
お使いの端末ではこの機能に対応していません。
下のテキストボックスからコピーしてください。