「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査」調査結果を報告

日本コカ・コーラ株式会社のプレスリリース

 日本財団(東京都港区、会長:笹川 陽平)と日本コカ・コーラ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:ホルヘ・ガルドゥニョ、以下 日本コカ・コーラ)は、海洋ごみ対策とプラスチック資源の適切な回収及び循環利用促進を目指した「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査(以下、本共同調査)」について報告しました。

 海洋ごみの7~8割は陸由来であり、多くは河川を伝ってくるとされます。本共同調査は海洋ごみの発生メカニズムを解明し、企業や自治体による効果的な施策の策定とペットボトルをはじめとするプラスチック資源の循環利用促進等を目的としています。そこで本共同調査では、従来用いられてきた「ごみの総量把握(どこに・どんな・どれくらいごみがあるか)」よりも「ごみの発生源把握(どこから・なぜごみが発生しているか)」を重視した調査・分析手法を開発し、実践しました。

調査サマリー
発生原因は大きく「投棄・ぽい捨て系」「漏洩系」の2つに大別されました(※1)。さらに細分化してパターンごとに分け、考えうる対応施策をまとめました。
※1 調査実施エリアのうち、境川流域については「投棄・ぽい捨て系」「漏洩系」の割合が約10:1。

<投棄・ぽい捨て系>
従来は“モラルの問題”と一括りにされることが多かった投棄・ぽい捨て行為ですが、社会的な問題や産業構造等が要因でごみを投棄・ぽい捨てせざるを得ない状況も発生していることが明らかになりました。外部からの支援や回収方法の工夫・改善等が必要と考えられます。

<漏洩系>
ごみを集積している地点からの漏洩、災害時の応急処置で使用され経年劣化した製品や農業資材の流出が確認されました。事業所・河川・道路等の適切な管理や、製品の代替素材開発と利用促進等の対策が必要であると考えられます。

上記のとおり、市民のモラルに訴えるだけでは対策として不十分であることから、自治体や企業、NPO等、流域のステークホルダーが連携し、実態を把握した上で適切に問題解決にあたることが必要です。そこで日本財団と日本コカ·コーラは、今後のアクションプランを策定しました。なお、発生要因は河川によって様々であることから、流域のステークホルダーが連携した取り組みが促進されるよう、本共同調査の手法は自治体やNPO等に広く公開します。

河川流域におけるごみの分類

注記:ごみの分類は、今回の調査で主だったものを抽出。調査対象となるごみのサイズは2.5cm以上。

A. 投棄・ぽい捨て系

B. 漏洩系

 

共同調査概要

期間: 2019年4月~12月

実施:(公財)日本財団、日本コカ・コーラ株式会社
調査・分析:(公財)笹川平和財団 海洋政策研究所、株式会社ピリカ

 

<調査・分析手法におけるポイント>

・「ごみの総量把握(どこに・どんな・どれくらいごみがあるか)」よりも「ごみの発生源把握(どこから・なぜごみが発生しているか)」を重視
・河川本流だけでなく、繁華街・住宅地・農地など人の生活により近い細い河川や水路を含む流域全体を調査
・調査対象エリアは河川規模、土地利用特性、人口密集度合い等をもとに選定
・実態に近いデータを得るため、時期や降雨量、チーム体制(なるべく同メンバー)等にも留意

なお、当初最大で8地域での調査を予定していましたが、より詳細な調査を実施するため、4河川での調査となりましたことを申し添えます。

実施背景
 海洋プラスチックごみ問題に関する社会の関心は、2018年頃から急速に高まり、自治体や企業がプラスチック製ストローやレジ袋の利用を減らす「脱プラスチック」を宣言する等の動きも見られる。
 海洋ごみの約8割が陸域起源で、陸で発生したものが河川を伝って海に流出していることがわかってきた。また、プラスチックのライフサイクル全体を見渡すと、商品企画、製造・流通、消費、処分、再利用・廃棄等からなる一連のマテリアルフローの中で、企業・行政・消費者の様々な関係者が関わっていることがわかる。よって、海洋プラスチックごみ問題の対策を実施する上では、陸域からの流出メカニズムを見出すことが重要であるが、その実態はこれまでほとんど明らかになっていなかった。
 私たちはこれまでプラスチック素材の機能面だけでなく、関連産業の雇用創出等、さまざまな側面で恩恵を受けながら今日の社会を作り上げてきた。これらのことから、私たちはプラスチックの全廃を闇雲に訴えるだけではなく、使うリスク・使わないリスクをエビデンスに基づいて議論していくことが重要である。そして、プラスチックごみ問題への対処に付随して生じる社会の各方面での影響について、行政・企業・地域社会が対話を通じてお互いの立場を理解し、合意を形成しながら、削減と流出防止を実現する体制を整えていく必要があると考えられる。
 そこで日本財団と日本コカ・コーラは、2019年、海洋プラスチックごみ問題の抜本的な対策を見出すため、「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査」に着手した。

日本財団の今後の取り組み

1.現行制度に対する問題提起と提言
・リサイクルを目的とした使用済みペットボトルの収集・運搬や事業用自動車内で発生したごみの引き取り等について、廃棄物処理法との関係から、自治体との調整に時間を要したり、企業が表立って環境戦略を打ち出しにくい状況があります。海洋ごみ対策と資源循環システム構築を実施するため、現行制度に対する問題提起と提言をしていきます。

2.広域エリアでの調査・施策策定
・県や市といった行政単位の枠組みを越えた海洋ごみの流出抑制施策を展開します。自分たちが排出するごみが多数を占める閉鎖性海域を有するエリアを想定し、川の上下流に位置する自治体の、海ごみ対策における連携を促進します。
・地域の実態を正確に把握し、各種施策を策定する前段階として、今回の調査で用いた「ごみの発生源把握(どこから・なぜごみが発生しているか)」を重視した調査・分析手法を当該エリアで集中的に実施。関係ステークホルダーを明らかにし、自治体と連携した施策作りに取り組みます。

3.サーキュラーエコノミーを目指したバリューチェーンのモデル構築
・本調査で、多数のプラスチック製品投棄(ポイ捨て)や経年劣化した資材の流出が確認されました。また生活協同組合と日本財団が2019年に共同で実施した生協利用者への意識調査では、「消費者は海洋プラスチックごみ問題の存在を認知しており、問題解決への意欲も高いが、削減アクションの実行は十分でなく、企業側による有効で付加価値のある選択肢(商品や仕組み)の提供を求めている」という状況がわかりました。
・上記を受け、サーキュラーエコノミー実現を目指し、メーカーや小売等バリューチェーンを構成する一連の企業と連携した製品・販売手法の開発を促進します。

4. 海と日本プロジェクトを通じた啓発活動
2015年に開始し、年間47都道府県で1,500以上のイベントが実施され、200万人以上がプログラムに参加し、企業・団体、8,000以上が推進パートナーとして活動する本プロジェクトを通じて、海洋ごみが発生するプロセスを周知・啓発し、国民一人ひとりの”これ以上、海にごみを出さない”という、意識を向上させていきます。

日本コカ・コーラ株式会社の取り組み

飲料空容器の「漏洩」が発生していることが確認された自動販売機横の空容器回収ボックスからの漏洩対策については、コカ·コーラシステムとしても最優先で取り組みます。日本コカ·コーラは、独自開発した調査アプリを活用し、定常的に漏洩の発生している空容器回収ボックスを特定のうえ、河川に近い(目安として10m圏内)回収ボックスより優先的に、増設や回収頻度の向上などの対策を講じます。すでに北陸エリアにおいて、北陸コカ·コーラボトリング株式会社の協力のもと、富山県内の一部区域における調査を開始しました(以下写真)。

調査対象の自動販売機はコカ·コーラシステムのものに限らず、今後必要に応じて他社へのデータ提供や、対策の呼びかけを検討します。また一方で、今回の調査では自動販売機脇の空容器回収ボックスの漏洩と、河川で見つかる飲料空容器との相関を見出すまでには至らなかったため、今後さらなる調査を実施していきます。

■日本財団について
日本財団は、1962年の設立以来、福祉、教育、国際貢献、海洋・船舶、災害復興支援等の分野で、人々のよりよい暮らしを支える活動を推進してきました。市民、企業、NPO、政府、国際機関、世界中のあらゆるネットワークに働きかけ、社会を変えるソーシャルイノベーションの輪をひろげ、「みんなが、みんなを支える社会」をつくることを目指し、活動しています。

■コカ・コーラシステムについて
コカ・コーラシステムは、ザ コカ・コーラ カンパニーの日本法人で、原液の供給と製品の企画開発をおこなう日本コカ・コーラと、全国5社のボトリング会社(コカ・コーラ ボトラーズジャパン、北海道コカ・コーラボトリング、みちのくコカ・コーラボトリング、北陸コカ・コーラボトリング、沖縄コカ・コーラボトリング)で構成されています。コカ・コーラシステムが国内で取り扱う製品は50以上の炭酸飲料および非炭酸飲料ブランドにおよび、世界で最も高い評価を得ているブランドである「コカ・コーラ」をはじめ、「コカ・コーラ ゼロ」「コカ・コーラ ゼロカフェイン」「ファンタ」「スプライト」などのグローバル・ブランドのほか、「ジョージア」「アクエリアス」「い・ろ・は・す」「綾鷹」など、日本市場のために開発されたブランドが含まれます。コカ・コーラシステムは、持続可能な地域社会の構築を目指してたゆまぬ努力を重ねており、事業活動による環境負荷の削減、社員のための安全で開かれた職場環境の構築、事業を展開する地域社会における経済発展の促進といった取り組みに力を注いでいます。

 

 

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