【第2部 後編】味の素(株)、「食と健康の未来フォーラム」開催レポート

味の素株式会社(GC部)のプレスリリース

​味の素株式会社は、食に対する風評や不十分な情報により起こる社会課題に対し、企業として正確な情報を伝え、生活者の疑問にもっと答え理解を得るための具体的な取り組みとして、「食と健康の未来フォーラム」を2020年8月31日(月)に開催しました。
第1回の今回は、『食品添加物のこと、考えてみませんか?~私たちはどうして「無添加」が気になるのだろう~』と題し、長年誤解や不安感が解けない食品添加物について取り上げました。タレントのスザンヌさんをはじめ、有識者や業界の代表者にもご参加いただき、当日は同時視聴者数1300人(のべ視聴者数:2600人)を超える生活者を交え、食品添加物の安全性や安心できる食の選択について議論を行いました。その様子をレポートします。

  • 第2部 後編

反食品添加物派の3つの類型
「儲け型」 「科学型」 「思想・主義型」

下村:少し乱暴かもしれませんが、反食品添加物派の人たちにも、主に3 つの類型があるのかなと思いました。情報を煽って自分の利益に誘導する「儲け型」。科学的に食品添加物は安全ではないと主張しているんだけれど、根拠データに取捨選択がある「科学型」。そして最後に、自分の主義として天然を選択する「思想・主義型」。
「儲け型」については、その人たちの情報に煽られて、「なんちゃって無添加」に乗っからないように注意する《眼力》が要る。「科学型」は反対派そして肯定派、それぞれお互いの拠って立つデータを突き合わせ、相手の意見を聞きながら《議論》していくことが大事。「思想・主義型」の方の意見は、《尊重》して良いと思います。ただ、この方たちが自分の主張に従えと周囲に要求してきたら、「食品添加物は必要な時は使うべき」という反対の考え方を伝えることも大事なのではないかと思います。

 

食事や健康はフェイクニュースが発生しやすい話題。
安全性のアプローチには工夫も必要

小木曽:健康、食事、育児、教育分野はリスクに対する注目度も高いため、非常にフェイクニュースが作られやすい分野です。誰が、どんな目的で言っているのか、その情報で誰が得をするのか、どんな情報にも必ず「発信者」「目的」「利害」が存在するので、そこに注目しましょう。「儲け型」の人たちは、ビジネス視点をもっているはず。「思想・主義型」の人たちは、仲間を増やしたいのかもしれません。そして、「科学型」の人たちは、食品添加物が存在する理由やその安全性について、なぜもっと詳しく教えてくれないのとかと、もやもやしているかもしれません。食品メーカーの立場からみれば危険なものをわざわざ使うわけがない、当たり前のことなのかもしれませんが、そこからしっかりと説明する必要性があるのかなと。私みたいに「どっちでも良い」と考えている人も、しっかり説明されれば、どっちでも良いわけではない、と考えを変えるのではないかと思いましたね。

西井:メーカーに情報発信の責務があると思うと同様に、情報共有ができる場が無いと会話ができないと思い、本フォーラムを開催しました。日本は世界的にも安全性の基準が厳しく、直近20 年間の食品添加物の安全性は信用していただきたいと思いますが、一方、ご家庭で代々受け継がれている価値観もあることも理解しています。だからこそ、対話の場がより必要になってくると思っています。

下村:今の西井社長のご発言の中だけでも、「信用していただいて良い」といった部分に、「え、それはなぜ?」という反問への答えが充分に出きっていない。というのが、小木曽さんのご指摘なわけですよね?

小木曽正攻法だけでは足りないのかもしれません。例えば、うま味調味料という名前も秀逸だと思いますが、もっと攻めた名前を募集するとか。安全性に自信がある以上、もっとみんなに愛され、気を許せる名前を付けても良いと思います。実は自分の周囲で、うま味調味料を使い始めたきっかけが、「パッケージがパンダに変わった時だった」と答えた人が多くいました。安全性がしっかりしているものなら、正攻法以外のアプローチでにっこり笑ってもらう戦略でも良いはず。人間は笑うと相手を嫌いになれなくなります。あのパッケージは、笑顔でうま味調味料のファンを増やしましたね。

避けるべき食品添加物など存在しない

下村:会場の皆さんから質問が寄せられています。「使って良い食品添加物と絶対避けるべき食品添加物は、あるのでしょうか?」。

唐木すべての食品添加物は、一生の間毎日食べ続けても体に何の影響もない微量しか使われていません。また、発がん性あるいは体に蓄積性があるものも使われていません。アレルギーの試験も非常に厳しい。そのため使って良い食品添加物と悪い食品添加物ということはあり得ません。しかし、そういうイメージがあることも事実です。なぜそのようなイメージが作られてしまったのかというと、非常に多量の食品添加物を実験動物に食べさせたときに起こる症状と同じことが、ごく微量しか食べない人間でも起こるような間違った科学を持ち込んできたことが一番大きいのではないかと思います。現実にはあり得ない飛躍した論理で危険性を訴えるニセ科学者がいるということですね。

西井:食品添加物に安全でないものは存在しません。科学者、そして国が安全性を証明したものでなければ、食品添加物として認められません。日本だけではなく国際的にもWHO がそう決めているものがあります。
プロである我々はその基準を守って、食品添加物を使っていますが、生活者の皆さんとのコミュニケーションにはだいぶ乖離があると認識しました。

スザンヌ:最後に確認させてください。会のはじめに伺おうと思った質問なのですが、息子はウインナーが大好きです。毎日食べさせたら良くないという話は本当ですか?

唐木:ドイツの子どもは毎日ウインナーを食べていると思います。というのは冗談ですが、一年中毎日納豆を食べる人、ヨーグルトを食べる人など、同じものを食べ続ける人がいます。でも問題にする人はいませんよね。バランスが良い食事の中に、毎日食べたい一品を加えることには何の問題もありません。ウインナーだけが問題にされるのは食品添加物に対する懸念だと思いますが、すべての食品添加物は国の専門機関が厳しく規制しているのですから、心配はないと思いますよ。
(※当日の発言に加筆)

スザンヌ:先生が仰るなら安心だなと思いました。ありがとうございます。

下村:《情報の受け取り方をみんなでトレーニングしていくこと》も、すごく必要ですね。例えばスザンヌさん、今の質問に対して唐木さんに「ドイツの子どもたちも毎日食べている」から平気だと思うと回答をいただいたら、それでおしまいにせず、次に、「実際ウインナーを食べ過ぎてこうなった子どもがいるんだよ」という証言がどこかにないかなと探しに行く。で、もしそういう情報(真偽はわからないけど)があったら、また唐木先生に「こんな声がありましたよ」と伝えて、「それはね」とまた説明を求める…と。そういうことを繰り返していくと、もっと(どこまで納得で何が疑問か)腹落ちしてくるでしょうね、きっと。

豊かで幸せな食生活のためには、豊かな情報交換を

スザンヌ:そうだと思います。保存料や防腐剤、また発がん性があるものが入っているのではないかといった内容をインターネットやテレビでも見たことがあるので、子どもが小さい時は敏感になったこともありました。今は何を食事の中で大事にしているかというと、味だったり、楽しさだったり、彩りだったり。その家庭によって必要なものをチョイスして、「無添加じゃなくても良い日」「無添加の日」とかあっても良いし、家庭で話し合ってそうしていくともっと食卓が楽しくなるんじゃないかなと思いました。

唐木:巷に流れる危険情報をそのまま受け取ってしまう一つの理由は学校教育です。子どもに食品添加物は使わない方が良いと教えているのです。その子どもが親になって、また子どもに教える。ですから、正しい情報を伝えることはとても重要です。情報を受け取る子どもたちの教育も変えなければいけません。

二村:食品添加物をはじめ、食の安全に関心を持つという事はとても大切なこと、だからこそ食品を作る側も努力しますし、コミュニケーションが生まれると思っています。ただ、むやみに心配したり不安になるのはちょっと違います。また、皆さんには、2003年にできた食品安全基本法を知っていただきたいです。この法律の前後では、日本の食品添加物や残留農薬の管理の仕組みは大きく変わったと思っています。この法律を作る際に、生協を含め様々な消費者団体が3年ほどかけて1400 万筆の署名を集め、国会に請願しました。この法律に基づいて食品安全委員会や厚生労働省における安全管理の仕組みができています。この仕組みがあまり知られていないため、食品添加物が昔のイメージのままなのが残念だと思います。皆さんに関心を持っていただき、質問したり、調べてみたり、いろいろな人と話してみることも大事だと思います。食品添加物に関心を持たれている方は、食べる事を大事に思っている方だと思いますので、ぜひその気持ちはお互い大切にしたいと思いました。

下村:豊かな食生活を目標に掲げるのであれば、豊かな情報交換がまずそのベースになければなりません。情報が行ったり来たりしていなくて、お互い一方通行になっていることもよくあります。豊かな情報交換に向けてこれから実践していかなければなりませんね。

二村生協には、食品メーカーのような作り手と生活者のような使い手との間に橋をかける役割があると思っています。生活者の人たちが不安や疑問に思っていることが食品メーカーに伝わることも大事だと思っており、その間に橋をかけるような役割を少しでも果たせれば良いと思っています。

斉藤:人工、合成の表示文言をどうするか、必要以上に不使用を訴求しないということなど、社内的にも議論を始めたところです。そういったことを客観的に捉えるにはメーカーさんや、様々な関係各位の方々とコミュニケーションをとっていかないと独りよがりな判断はできないと思っています。そういったことを見直すために本日参加させていただきました。

情報を選ぶ基準は自分が「幸せ」になるかどうか。
情報をしっかり受け取るための4 つの疑問「ソウカナ」

下村:情報の受け止め方について、アドバイスはありますか?

小木曽:嘘や間違い、デマを排除する技術は必要です。でも、そうやって整理したあとにも、単なる好み、趣味の違いに起因する様々な情報が残ります。もしどの情報を選んだら良いか分からない場合は、「どれを選べば、自分が幸せになれるか」という基準で選択して良いのでは?情報リテラシーとは、最終的に自分が幸せになるための技術。絶対無添加主義の方も、健康でかつ、ご自身の主義を他人に強要しなければ、納得感やこだわりを優先して構わないはずです。私は、嘘やデマで物事が変わってしまうのが何より嫌なので、それらを除外する技術を社会全体で共有できればと。後は自分が幸せになれるかどうかで決めれば良いのです。

下村:その「嘘やデマを除く技術」として、私が小学校の教科書からシルバー向け講習会まで説いて回っている、「情報をしっかり受け取るための4つの疑問」をご紹介させて下さい。「ソク断するな」、「ウ呑みにするな」、「カタよるな」、そして「ナカだけ見るな」。新しい情報に触れるときは、これらの頭文字をとって「ソウカナ」とつぶやきましょう。これだけで、ずいぶん情報に振り回されなくなりますから。今回は1回目の開催でしたが、味の素さん、しんどくても第2 回では食品添加物にネガティブな意見を持っている方も交えて議論も実施して、違う意見を持っているグループとの間の橋渡しができたら良いですね。豊かな食生活を目標に掲げるのであれば、豊かな情報交換がまずそのベースになければならないと話しましたが、本日初めの方でも申しました通り、本フォーラムがその入口になれば良いと思っております。

※ライブ配信のため、内容には一部個人の見解や曖昧な表現も含まれております。
※発言は要約です。一部、短い補足説明の追記や、論旨の流れを整えるための順序の並べ替えを
しております。

「食と健康の未来フォーラム」は2 時間にわたり活発な議論が交わされ、視聴者アンケートでも、
約80% が満足という高い評価をいただきました。

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