―脳の健康維持に貢献する、キリングループの新たな研究成果―「シチコリン」※1が、健康な高齢者の記憶力向上をサポートすることを発見!

キリンホールディングス株式会社のプレスリリース

 キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典)のキリン中央研究所(所長 吉田有人)は、臨床試験でシチコリンが記憶力全般を改善し、特にエピソード記憶を改善する可能性があることを発表しました。この研究成果は、2021年5月12日(水)に発行されたOxford AcademicsのThe Journal of Nutritionに掲載されました。

 シチコリンは、脳や神経細胞にある細胞膜を維持する体内成分です。本臨床試験は、キリンホールディングス株式会社の子会社である協和発酵バイオ株式会社(社長 南方健志)が製造したシチコリンを使用して実施しました。
 ※1 本臨床試験で使われたシチコリンは、米国で食品用途として許可を受けたものです。これらの記述は、米国食品医薬品局および日本の厚生労働省による評価を受けたものではありません。日本では、シチコリンは食品や飲料への使用が認められていません。本成分は、いかなる疾病の診断、治療、治癒または予防を目的としたものではありません。

● 本研究の概要
 本研究は、加齢による記憶力の低下(Age Associated Memory Impairment: AAMI)を持つ健常高齢者を対象に、シチコリンの記憶力に対する効果を調べることを目的としています。本研究では、ランダム化二重盲検プラセボ比較臨床試験※2により、50歳から85歳までの健康な男女100名を対象に実施し、12週間の介入期間を設け評価しました。参加者は、シチコリンを500 mg/日の用量で摂取する群とプラセボ摂取群に無作為に分けられ、介入開始時点と介入終了時点に、脳研究で一般的に用いられているコンピューターテストにより記憶力を評価しました。
 本研究では、食品用途としてシチコリンの使用が許可されている米国にて臨床試験を実施しました。その結果、シチコリン群では、記憶力全般の指標であるComposite Memoryのスコアが、プラセボ摂取群と比較して統計学的に有意に向上しました。また、シチコリン群では、エピソード記憶の評価項目であるPaired Associatesのスコアが、プラセボ摂取群と比較して統計学的に有意に向上しました。また、試験期間中にシチコリンを12週間毎日摂取した結果、重篤な有害事象は確認されませんでした。
 ※2 参加者を無作為に偽薬と実薬の群に分け、試験完了までいずれの群かわからない、治験で用いられる試験方法。

 

 

● 結論
 本研究では、シチコリンを12週間摂取することで、AAMIである健常高齢者男女の記憶力全般、特にエピソード記憶が向上しました。この結果は、シチコリンを定期的に摂取することは安全であり、加齢による記憶力低下に対して有益である可能性を示唆しています。

 

● 研究者のコメント
研究者のコメントキリン中央研究所研究員 中﨑瑛里(Ph.D.)
「シチコリンは、脳の機能をサポートするホスファチジルコリンと呼ばれる脳内の重要な物質を増加させる働きを持ち、脳の健康維持に欠かせないものです。今回の分析では、1日500mgのシチコリンを定期的に摂取することで、安全かつ加齢による記憶力の低下を防ぐことができる可能性があるという非常に有望なデータが得られました。」

● 今後の展開
 シチコリンは、協和発酵バイオが2003年に米国で販売を開始し、現在では世界中で200以上の飲料・健康食品の素材や、医薬品の成分として用いられています※3。特に欧米では、記憶力の向上をサポートするサプリメントなどに使われています。
 当社と協和発酵バイオは、将来的に、シチコリンを通じて「脳の健康」サポートが可能な社会を実現し、世界の人々の健康に関する社会課題の解決に貢献します。
 ※3 素材の用途は各国の法令により定められており、シチコリンが医薬品用・食品用のいずれで使用されるかは、国・地域により異なります。

 

● 「キリン脳研究」について
 日本の平均寿命は伸び続けており、4人に1人が高齢者※4の超高齢社会となっています。2025年には高齢者のうち5人に1人が認知症になる※5と推計され、健康寿命の延伸は社会課題となっています。
 キリングループでは、日々の明るい気持ちや悩みは脳の働きと密接に結びついていることに着目し、ヘルスサイエンス領域を中心に「脳の健康」を守り新たなよろこびを生み出す、「キリン脳研究」を進めています。
 「キリン脳研究」は、キリンならではの発想と技術で脳の健康を守ることを通じ、社会課題の解決に貢献するとともに、一人ひとりが社会の中で、
自信や希望、そして気持ちのゆとりを感じながら暮らせるこころ豊かな社会の実現を目指します。
 ※4 内閣府 令和2年版高齢社会白書
 ※5 厚生労働科学研究費補助金 厚生労働科学特別研究事業.
   日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究. 平成26年度総括・分担研究報告書. 2015.

 キリングループは長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027(以下KV2027)」を策定し、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV※6先進企業になる」ことを目指しています。その実現に向けて、既存事業の「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループが長年培ってきた高度な「発酵・バイオ」の技術をベースにして、人々の健康に貢献する「ヘルスサイエンス領域」(ヘルスサイエンス事業)の立ち上げ、育成を進めています。
 ※6 Creating Shared Valueの略。お客様や社会と共有できる価値の創造。

-記-
1.論文名  「Citicoline and Memory Function in Healthy Older Adults: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controled Clinical Trial」
2.研究者 Eri Nakazaki, Eunice Mah, Kristen Sanoshy, Danielle Citrolo, Fumiko Watanabe

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