【研究報告】生タマネギの辛味成分を低減させる新製法。超高圧処理による生タマネギの辛味低減とシャキシャキ食感の両立

キユーピー株式会社のプレスリリース

キユーピー(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:長南 収、以下キユーピー)は、惣菜の製造を手がけるグループ会社のデリア食品株式会社(本社:東京都調布市、代表取締役社長:柴崎 健)とともに惣菜のおいしさ研究を進めています。このたび、超高圧処理※を応用して、生タマネギ特有の辛味を低減しながら、生の食感を維持する方法を発見しました。この内容を9月7日~9月8日に開催の一般社団法人日本食品工学会第22回(2021年度)年次大会(オンライン形式)で発表します。
※ 超高圧処理を用いた独自の最新技術である静菌処理方法「冷圧フレッシュ製法®」により、素材本来の食感や色味を残し、味わいを維持した、冷蔵で20日間日持ちする袋詰めポテトサラダなどを製造・販売している。

【研究の要点】
演題「超高圧処理による生タマネギの辛味低減、及び最適な脱気条件による食感の維持」について

生タマネギは、シャキシャキとした食感と、辛味をはじめとした刺激のある風味が特徴の素材です。しかし品種や産地によっては、特有の辛味が強く、水さらしを行うことがありますが、辛みが十分に低減できなかったり、有用な風味成分や栄養成分まで流出したりすることが、調理・加工上の課題でした。また、多量の水を必要とすることから水資源保全の観点からも改善を望まれていました。

これまでの知見から、超高圧処理をすることで辛味が低減できることは分かっていましたが、同時に生タマネギらしいシャキシャキとした食感が失われる可能性もありました。今回、超高圧処理の過程において、ある一定以上の空気を残すことで、シャキシャキとした好ましい食感を維持しながら、特有の辛味を軽減した、生食に適した状態を実現することができました。また圧力の調節により、必要に応じて辛味を調整できることも分かりました。

生タマネギはポテトサラダやマリネなどの材料としてだけでなく、ドレッシングなどの原材料としても活用できる素材です。今後、この技術を幅広い商品に応用することで、さらなるおいしさを追求していきます。

■研究概要
[背景・目的]
生タマネギには特有の辛味があるため、苦手な人が少なくありません。この辛味は加熱すると消失しますが、生食では水さらしにより低減させる手法が工業的にも一般的でした。この手法は辛味を十分に低減できないことや、多量の水を使用すること、有用な風味成分や栄養成分が流出することなどが課題でした。
一方、超高圧処理を施すことで、辛味は低減できますが、生タマネギらしいシャキシャキとした食感は失われてしまいました。
辛味を抑制しつつも、生タマネギの食感が維持される加工方法を目指し、超高圧処理条件を検討しました。

試験1:容器内の脱気条件による生タマネギの食感維持効果
<方法>
通常、超高圧処理は加圧効率を上げるために、真空脱気包装をすることが推奨されているが、スライスした生タマネギを空気と共に容器に密封し、600MPa(装置の上限圧力)で処理し、処理後の破断応力(噛み応えを示す数値)と離水量を調べた。また、官能試験で処理後の食感と辛味についても評価した。

<結果(資料1、グラフ1)>

一定量以上の空気と共に密封した生タマネギは、破断応力が高く、シャキシャキとした食感が保たれていた。また、残存気体量が多いほど、超高圧処理後に発生する離水量が減少した。空気量に関わらず生タマネギの辛味は抑制されていた。

試験2:圧力の大きさと生タマネギの辛味低減効果
<方法>スライスした生タマネギを約30mLの空気と共に容器に密封し、圧力条件を変えて超高圧処理をした。処理したタマネギについて、ガスクロマトグラフィーで辛味成分の一つであるPropanethial-S-oxideの量を未処理と比較した。また官能試験で処理後の食感と辛味についても評価した。

 

*官能評価と相関があり、操作が簡便であることからPropanethial-S-oxideをタマネギの辛味の指標とした。

<結果(資料2)>
処理圧力が高まるほど辛味が減少した。試食評価では600MPa以上で加熱処理品と同等まで辛味が感じられなかった。超高圧処理品は生タマネギらしいフレッシュな風味を呈した。一方、加熱処理品は生タマネギらしい風味を呈さなかった。また未処理品と超高圧処理品は、シャキシャキとした生タマネギの食感を呈したが、加熱処理品では失われていた。

以上の結果から、一定以上の空気と共に生タマネギを超高圧処理することで、特有の辛味を軽減し、生食に適した食感を維持することが分かりました。また、圧力を変更することで、辛味の程度が調整可能なことも分かりました。

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