酪農におけるふん尿処理システム「MO(エムオー)-ラグーンfor Dairy」2023年春 森永乳業グループの牧場へ導入予定

森永乳業株式会社のプレスリリース

森永乳業株式会社は、生乳生産に伴う環境負荷の低減と生乳生産基盤の強化を目指し、畜産バイオマス発電施設と排水処理施設を兼ね備えた酪農・畜産におけるふん尿処理システム「MO-ラグーンfor Dairy」を関係会社の森永酪農販売株式会社が運営する那須岳麓(がくろく)農場に導入します。
※1当社調べ 那須岳麓農場で発生するメタンのうち、排せつ物由来のメタンを削減した場合
※2森永酪農販売 2020年 酪農家へのアンケート調査 n=421戸

1996年をピークに減産傾向が続いてきた国内の生乳生産量は、国や酪農乳業関係者による取り組みの結果、2019年から3年連続で増産になりました。一方で、酪農家の飼養規模拡大は進んでいるものの、戸数は毎年減少しており、生乳生産基盤を強化するためにはさらなる取り組みが必要です。

生乳生産基盤の強化には牧場の規模拡大は重要な要素ですが、規模拡大の際に課題となるのがふん尿の処理です。牧場の規模拡大により増加するふん尿の処理が、規模拡大するにあたり大きな障害になることがあります。現状でも酪農家の約3割がふん尿処理に悩みを抱えていることが明らかになっています(※2)。規模拡大には現状以上のふん尿の発生を伴う事から、ふん尿処理は多くの酪農家にとって規模拡大する際の大きな課題になります。

また、生乳生産基盤を強化していく上で、温室効果ガス(以下、GHG)削減も求められています。酪農から排出されるGHGの中ではメタンが多くを占めています。メタンは温暖化に対する影響が二酸化炭素に次いで大きいため、メタン削減は酪農業界にとって大きな課題となっています。

「MO-ラグーンfor Dairy」はバイオガスプラントと、森永乳業グループの独自技術である“微生物の力で排水を分解処理する「MO-ラグーン®(※3)」”を組み合わせたシステムです。「MO-ラグーン®(※3)」を酪農・畜産におけるふん尿の浄化に応用し、浄化後に放流を行います。また、バイオガスプラントを組み合わせた「MO-ラグーン for Dairy」を導入することで、牧場で排出されるメタンの排出量を最大30%と大幅に削減することを目指します(※1)。
さらに、「MO-ラグーンfor Dairy」によって那須岳麓農場では圃場(農作物を育てる場所)に散布するたい肥の量を現状の約75%削減することを目指しています(※4)。たい肥の散布量を大幅削減できれば、たい肥散布の人手や圃場確保に悩む酪農家の課題解決に役立つと考えています。
森永乳業はこれらの実証研究施設として「MO-ラグーンfor Dairy」を森永酪農販売(株)那須岳麓農場に導入いたします。そこでの効果検証にもとづく成果を活用して将来的にはこのシステムそのものを全国の酪農家へ販売することで、多くの酪農家が直面しているふん尿処理課題と環境負荷の低減に貢献したいと考えています。
「for Dairy」(=酪農のために)という名称は、将来、酪農家・畜産農家に向けた支援につながればという想いを込めました。
 サステナブルな酪農乳業界のために、生乳生産に伴う環境負荷の低減と酪農家の生乳生産基盤強化を目指します。
※3 MO-ラグーン®について
自然界の浄化作用に近い形をとり、大きな浄水処理を行う槽の中で、微生物の力でゆっくりと酪農排水の分解処理を行います。維持管理が容易かつ余剰汚泥(排水中の固形物)の発生が非常に少なく、環境に優しい浄化システムです。森永乳業が1969年に開発し、1972年以降は、関係会社の森永エンジニアリングを通して、外部への販売を開始しました。森永乳業グループの自社工場のみならず、食品メーカーを中心に約300社でご利用いただいています。
※4 システム導入前の那須岳麓農場のたい肥発生量を元に算出

◆メタン削減の重要性について
産業革命以降の温暖化に対するメタンの寄与度は20%程度と見積もられており、二酸化炭素の60%に次ぐ大きさです。一方でメタンは二酸化炭素の20倍以上の温室効果の影響があります。多くの温室効果ガスが、大気中で分解されずに存在できる期間は100~数千年であるのに対して、メタンの大気中での寿命は約12年 と比較的短く、メタンの排出量削減は短期の温暖化防止に重要とされています。そのため、2021年に英国グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)では、メタン排出量を2030年までに2020年比で30%を削減する目標を掲げ、日本を含む世界100以上の国と地域が賛同しました。酪農におけるメタンの発生源はふん尿処理中に発生するものと牛のげっぷとして知られる消化管内で発生するものがあります。森永乳業グループでは酪農を通じて発生するメタンの削減に取り組むべくふん尿処理由来のみならず、牛のゲップ由来のメタン削減にも注目しております。

1.「MO-ラグーン for Dairy」について、那須岳麓農場の例を用いた解説
那須岳麓農場の現状の方式では、ふん尿を醗酵させて製造したたい肥は、すべて圃場へ散布しているため、たい肥の生産量に見合った広い圃場と散布するための人手が必要になります。
また、従来のバイオガスプラントを活用してふん尿処理をする場合も、バイオマス醗酵によって生産された消化液(※5)をすべて散布する必要があるため、那須岳麓農場の現状の方式と同様、圃場の確保と散布するための人手が必要になります。
※5 消化液:ふん尿をメタン発酵させた後の残渣物。肥料成分が多く含まれており、一般的には液体肥料として使用されている。

<那須岳麓農場の現状のふん尿処理>

<従来のバイオガスプラントを活用したふん尿処理の例>
代表的な一例を示しておりますが、牧場によって様々な形態がございます。

 

<「MO-ラグーン for Dairy」によるふん尿処理>

 

2.「MO-ラグーンfor Dairy」の工程解説と目標
森永乳業独自技術である「MO-ラグーン®(※3)」を酪農・畜産におけるふん尿の浄化に応用するシステムです。
<工程解説>
①ふん尿投入以降、すべての工程を自動化します。自動化することで、人手不足対策のみならず、メタンが発生するふん尿の堆積期間を削減することが可能になります。
②ふん尿の醗酵により発生させ、回収したメタンを、すべてバイオ燃料として利用することで、ふん尿処理由来のメタン排出の大幅な削減を目指します。①と合わせて牧場全体から大気へ放出されるメタンの最大30%削減を目標に取り組みます(※1)。
③連続高温発酵の工程を経て脱水された固形分は短期間でたい肥化されるため、有害な細菌が少なく、牛舎の床材として再利用できるたい肥を製造します。ふん尿をたい肥化させるための水分調整用のおが屑やもみ殻などの副資材を使用しないことで、生産されるたい肥の量を減少させることができます。
従来であれば必要な堆積攪拌工程が削減できるので人手不足対策にもつながります。
④必要な量のみを圃場還元用の肥料として抽出することができるため、圃場への散布作業の低減、深刻な人手不足の対策、規模拡大の際に問題となる圃場不足対策につながることを目指します。那須岳麓農場においては圃場へのたい肥散布量を、従来の75%削減することが目標です(※6)。
⑤肥料として利用しない消化液(※5)は「MO-ラグーン®(※3)」を通し、窒素除去などを行った後、環境への負荷を軽減した浄化水として放流するため、土壌や水質の汚濁を防止する計画です。
⑥ふん尿から液体を除いた固形分は肥料や牛舎の床材として活用します。

<目標>
(1)「MO-ラグーンfor Dairy」は、酪農業界における環境負荷低減やふん尿の処理方法に悩みを抱えている酪農家のサポートにつなげます。
(2)発生したたい肥を散布するために必要な人手や圃場面積を確保できず、経営規模を拡大したくてもできなかった酪農家のサポートにつなげます。
(3)那須岳麓農場の設備は2021年5月に着工しており 2023年春稼働を目指しています。

※6 那須岳麓農場におけるたい肥発生量より算出。

 
3.森永酪農販売 那須岳麓農場
森永乳業50周年の記念事業のひとつとして1967年9月に開設。栃木県を中心とした酪農家から預かっている約500頭と、森永酪農販売が保有する300頭の牛を飼育。育成部門のアウトソーシングを請け負うことで酪農家の生産性向上をサポートしています。
所在地:栃木県那須郡那須町大字豊原乙1-159

■リリース内容詳細はこちら
https://prtimes.jp/a/?f=d21580-20220510-964175decd810665757a2462d781d501.pdf

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