レモン果汁のマリネ調理が牛肉の肉質軟化と胃消化性に及ぼす影響を解明

サッポロホールディングスのプレスリリース

ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社(社長:時松浩、本社:愛知県名古屋市)と国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(理事長:久間和生、本部:茨城県つくば市、以下「農研機構」)の研究グループは、レモン果汁のマリネ調理が牛肉の物性と胃消化性に及ぼす効果について研究し、肉質の軟化と、消化試験装置を用いた実験にて胃消化性への影響を解明しました。その結果を、日本食品科学工学会第70回記念大会で発表しましたので、お知らせします。

研究背景と目的

 レモンには、クエン酸、ビタミンC、ポリフェノールが豊富に含まれており、これらの健康機能への注目が高まっています。近年、調理や飲用に使用される機会が増加し、レモンを日常的に摂られる方も増えています。

 しかし、レモン果汁を調理に用いた際の食材の変化に関する学術的な報告、および調理した食事を摂った際の栄養成分の消化・吸収に関する報告は少ないというのが現状です。そこで今回、牛モモ肉をモデルとし、レモン果汁でのマリネ調理による肉質の軟化について検討し、さらに、農研機構が有するヒト胃消化シミュレーター*1(以下GDS)を用いて胃消化性の向上について評価しました。

 

研究方法と結果

①   4mm厚にスライスした牛モモ肉を、レモン果汁100%液に1時間漬け込みました(Lem100)。

②  IH調理器を用いて未処理群(CTL)とLem100を同じ条件下で加熱調理しました。

<解析方法>

・構造的な変化:マッソントリクローム染色*2を用いて観察(肉汁の漏出などによる軟化の有無)

・物性の変化:テクスチャーアナライザー*3を用いて測定(圧縮の荷重などによる軟化の有無)

・胃消化性:GDSを用いて解析

<解析結果>

・構造的な変化:肉を加熱調理すると、タンパク質が収縮し、肉質が硬化することが知られています。

本研究の染色試験では、CTL群において加熱調理後に筋細胞の収縮および細胞外への肉汁漏出が認められ

ました(図1)。一方、Lem100群では、これらの現象が緩和されており(図1)、加熱調理時に起こる肉の

構造変化が抑制されていることを示しています。

・物性の変化:スライス肉サンプルを圧縮した際にかかる荷重は、CTL群と比べてLem100群の方が小さいため

(図2)、Lem100群はCTL群よりも小さな力で破断することが明らかとなり、軟化に影響があると認められま

した。

・胃消化性:各サンプル(60 g)を用いてGDSでの消化試験を行い、開始3時間後に胃消化物をふるい分け

しました。ヒトの体内では、胃消化物は十二指腸以降でさらに消化され、胃から十二指腸へ向かって次第に

細くなる管状の幽門部を通過する必要があります。そのため、幽門部を通過できない大きさの胃消化物は十二

指腸へ移行しにくく、消化が進まないもの(未消化と定義)ということになります。胃の出口である幽門より

も大きいふるいの網目(2.36 mm、3.35 mmを使用)を使用してCTL群と比較した際、Lem100群では未消化分

が約25%減少(乾燥重量ベース)していました(図3)。これは、Lem100群の方がより消化されたことを示し

ています。

 

 以上の結果より、レモン果汁への漬け込みにより、牛モモ肉の肉質が柔らかくなり、胃での消化性も向上す

ることが示唆されました。また、実際の調理での活用時を想定し、レモン果汁とオリーブオイルを2:1の

分量で作ったマリネ液での試験を実施したところ、同様の結果が得られました。

 

(*1)ヒト胃のぜん動運動を模擬した胃消化試験装置であり、農研機構が中心となって開発。酵素による消化に加え、ぜん動運動による物理的な消化を評価することも可能。

(*2)一般的に用いられる染色方法で、筋細胞を赤色に染色する。調理肉で青色を帯びて染まっているのは、加熱調理による肉の色調変化が影響していると考えられる。

(*3)硬さ、柔らかさ等の物性を測定することが可能な装置。

学会発表の概要

演題:レモン果汁のマリネが牛肉の軟化および in vitro胃消化性に及ぼす影響

1.発表者:1ポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)、

2国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

脇田義久1、高橋真弓2、田宮慎理1、小林 功2

2.発表日:日本食品科学工学会第70回記念大会(2023年8月25日)

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