ワカメについての研究論文が国際科学雑誌「Genes」に掲載

理研ビタミン株式会社のプレスリリース

 理研ビタミン株式会社(本社:東京都新宿区、社長:山木一彦)のグループ会社である理研食品株式会社(本社:宮城県多賀城市、社⻑:渡辺博信)の佐藤陽一グループリーダーが福井県立大学の風間裕介准教授、株式会社SiM24の中裕之CTOらと行ったワカメ配偶体の研究について、国際的な科学雑誌「Genes」に論文が掲載されました。URL:https://doi.org/10.3390/genes11080944

【研究成果のポイント】

  • ワカメの配偶体は性別や生育場所によって環境に対する反応性が異なることを発見。その特性を活用した培養技術によって、理研食品 ゆりあげファクトリーでは安定したワカメの種苗生産が可能となりました。
  • 本研究で活用した、生育最適条件を明らかにする培養および解析手法は、他の種類での同様の研究や優良系統の選抜などの分野にも活用が期待できます。

【研究の背景】
・ワカメは、普段目にしている大きな葉っぱの「胞子体世代」(冬〜春)と、オスとメスの性別をもつ微小な「配偶体世代」(夏〜秋)を交互に繰り返すライフサイクルをもっています。(冒頭写真)
・ワカメ配偶体がどのように環境に適応して世代を繋いでいるのかは、これまで謎でした。これを解明するために海藻・植物・統計解析の共同研究チームを結成し、ワカメ配偶体世代の最適な生長および成熟条件を調査しました。

【研究の結果】
・ワカメの配偶体が好む環境は、オスとメス、生育場所によって異なっていた。
・メスよりもオスのほうが生育に最適な温度が高かった。これは温度が低下する秋にオスのほうが早く生長・成熟し、メスがそれに続くことによって受精の機会を逃さずに胞子体(葉っぱ)となるための、種を維持する特性である。
・生育に適した水温は岩手と徳島が低く、鹿児島は高いことから、ワカメが各地の環境に柔軟に適応していることが明らかとなった。
・光の色に対する反応は性別や生育場所での違いはなく、青色では生長+成熟促進、緑色では成熟せずに生長促進、赤色では生長が著しく低くなった。青色と緑色を使い分けることで、種苗生産における胞子体の発芽同調性を高めることができる。(下写真)

 

光の色別に培養したワカメのメスの配偶体。岩手、徳島、鹿児島の3つの生育場所で光の色に対する反応は共通していた。青色光では成熟が促進して多数の卵細胞が形成し、その一部ではオスとメスを別々に培養しているにも関わらず胞子体の発芽(矢印)が認められた。光の色別に培養したワカメのメスの配偶体。岩手、徳島、鹿児島の3つの生育場所で光の色に対する反応は共通していた。青色光では成熟が促進して多数の卵細胞が形成し、その一部ではオスとメスを別々に培養しているにも関わらず胞子体の発芽(矢印)が認められた。

【掲載論文】
Sexual Difference in the Optimum Environmental Conditions for Growth and Maturation of the Brown Alga Undaria pinnatifida in the Gametophyte Stage
(ワカメ配偶体の雌雄による生長および成熟に関する最適条件の違いに関する研究)
Genes 2020, 11(8), 944; https://doi.org/10.3390/genes11080944
本研究の一部はJST-OPERA (産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム, JPMJOP1832)の支援を受けています。

 

【理研食品 ゆりあげファクトリーについて】

 理研ビタミンのグループ会社である理研食品(株)が、2017年に宮城県名取市に開設したわかめ加工と種苗の生産、研究拠点。海藻養殖産業の活性化に向けて、研究開発の視点から多面的な提案をしています。

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